父の壁
魔法陣が光り、俺たちは魔法陣に降り立った。
転送の魔道具で月光の森から転移してきた。
「すごい!一瞬で違う場所についた!」
ルナが驚いている。
「こんな便利なものがあるんだな……」
「身体も何ともない、どうなってるんだろうね」
「手軽に使えるようになったら色々と大変そうだ」
「どういう技術か気になりマス」
全員それぞれ異なる感想を口にしていた。
「確かに俺も気になるが、今はそれどころじゃなさそうだ」
周囲を見やると、圧倒的に反国王軍は苦戦を強いられていた。
「なんだなんだ増援か?」
「どうせ大したことないだろ、やってしまえ!」
敵兵に見つかり襲い掛かってくる。
「《大火球》!」
「《豪炎球》!」
ルナとネモが詠唱する。
敵兵に火球と豪炎の球が降り注ぐ。
「回避できるものは回避、できないものは防御!」
号令とともに兵士が飛び上がる。
また、他の兵士たちは盾を構えて防御態勢を取る。
地面で弾けて衝撃波が生まれる。
一部の兵が回避しきれず、また防御しきれずに吹き飛ぶ。
「やった!」
「いや、想定より回避された、相手も只者じゃないな」
ルナもネモも良い魔法だったが、一筋縄ではいかなそうだ。
「隙あり!」
詠唱で隙ができたルナとネモに向かい、兵士が斬り込んでくる。
「そうはさせない!」
「そうはさせないデス」
カトレアとアーティが間合いに飛び込み、攻撃をいなす。
カトレアは短剣で刃を受け止め、その勢いで斬りつける。
アーティは盾で受け止め、兵の腕をつかみ投げ飛ばす。
「ありがとう!」
「助かる」
前衛のカトレアとアーティ、後衛のネモとルナで互いを補完しつつ、遊撃として俺とレウィシアさんがいる。
レウィシアさんは前衛のフォローと回復を行い、俺は後衛のフォローと魔法攻撃を行う。
息の合った連携で兵士をどんどん倒していく。
形勢が立て直されたことで自軍の兵士の士気も上がる。
だが、それを黙って見ているはずもなく。
「《氷柱》」
魔術師の男が詠唱すると、空気が冷えていく。
そして大きな氷の柱となり、こちらへ降り注ぐ。
「氷の魔法だと!?」
ネモが驚く。
氷の魔法は水と風属性の複合魔法。
使えるものは片手で数えるほどしかいない。
「《大火球》!」
俺が詠唱すると氷柱に向けて放つ。
そのまま氷柱とぶつかると激しく爆発した。
「防御!」
俺が叫ぶと、各々で防御する。
砕けた氷の欠片が刃のように降り注ぐ。
ルナはアーティの盾で、ネモはカトレアの短剣で、俺はレウィシアさんの魔力のメスで守られる。
近くにいた兵士は防御が間に合わず、氷で貫かれる。
「氷魔法、初めて見たが厄介すぎないか?」
カトレアが困惑する。
防御が困難であると同時に迎撃すると砕けて破片を飛ばす。
この上なく厄介な魔法だ。
そして遠距離の攻撃だけではない。
反国王軍の兵士の間を斬りつけながら駆け抜けてくる男の影があった。
そして俺たちの元にたどり着く。
「ヒャッヒャッヒャ、貴様もしかして俺の師匠を殺した獣人の小娘か?」
現体制派の隊長がカトレアを見て、立ち止まった。
「知らないな、お前の師匠なんて」
「ヴァントの山で任務を請け負ってた司令官の男だ、知らねえとは言わせねえよ」
「ああ、あの男か」
カトレアとともに倒したあの司令官の弟子にあたる男らしい。
「師匠の仇取らせてもらうからな!ヒャッヒャッヒャ」
そう言ってカトレアに向かって斬り込んでくる。
「くっ!」
一撃が重い。
ヴァントの司令官ほどではないものの、かなりの斬撃だ。
それでもカトレアは受け流すように受けきる。
「どうした、攻めてこないのか?」
「やれるならやってる!」
カトレアもあれから腕を上げている。
しかし、それでも反撃に転じることができずにいた。
攻めようものなら、その上から押し切られる。
その時。
「お前の敵は一人ではないぞ」
ネモが後衛から一気に上がってくると隊長に斬りかかる。
「ああん?ざけんな」
隊長は苛立ちながら、回避し、距離を取る。
「カトレア、因縁の相手か知らないがあたしを忘れてもらっちゃ困るな」
「すまない、私もまだまだ未熟だ」
ネモとカトレアが隊長と対峙する。
「お姉ちゃんたちが相手してくれてるね」
レウィシアさんが、ルナとアーティに耳打ちする。
フォーメーションを崩す形となったが、これも作戦の上である。
実力のある前衛が攻めてきた時、守り切れずに後衛が狙われる可能性がある。
そうなった時に後衛のネモを前衛に送る。
「ルナたちはどうすればいいの?」
「マスター、ご指示をクダサイ」
「あの男は二人に任せて、俺たちは魔術師側を相手にしよう」
「私も賛成だね」
二人の援護をする選択肢もあるが、今回は後衛にも実力者が控える。
二人が狙われないように、敵後衛の矛先をこちらへ向けるのが良いだろう。
レウィシアさんも賛同してくれている。
「《豪炎球》!」
俺が豪炎の球を放つ。
「《瀑布水壁》」
魔術師の男が詠唱すると滝のような水の壁が現れて、豪炎球を受けきる。
爆発も起こらず、完全に防がれた。
「そんなのありか……」
俺の最も威力の高い魔法が、簡単に無力化される。
俺の父が宮廷魔術師だったことを、朧げながら思い出した。
この実力の高さも頷ける。
正攻法ではまず勝てないだろう。
このまま高威力の魔法を撃たれ続ければ、こちらが先に耐えきれなくなる。
「どう立ち回れば良い……」
こちらの攻撃はいなされ、あちらの攻撃は徐々に凌ぎきれなくなってきている。
立ちふさがる父親という存在がとても大きく感じられた。




