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魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第六章 人間国王位継承戦
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開戦目前

「殿下、ソルヌで現体制派の軍の攻撃があったようです」


 側近から報告を受けて、私はほくそ笑んだ。


「思い通りの結果になったな」


 それを口実にすれば向こうも動かざるを得ないだろう。


「現体制派に宣戦布告の親書を送ってくれ」

「かしこまりました」


 これで現体制派も時間稼ぎはできないだろう。

 現体制派をおびき出さなければならない。

 国に損害を出せば魔人国に出し抜かれるため、

 ソルヌのような周辺に被害が出ない場所で戦わなければならない。

 ただ、それでも動かないようであれば、相手の主要拠点へ攻撃する。


「内戦というのはめんどくさいものだ……」


 主要拠点への攻撃は暗黙の了解で忌避されている。

 実施すれば周囲を敵に回すことになりかねない。

 ただし、相手が先に手を出しておきながら、拠点から動かない場合など、

 ある程度例外は認められる。

 愚かな王と呼ばれた父上と言えど、そのことは理解しているだろう。

 そこをついて脅しをかける。


「母上、私はあなたの望んだ国を実現して見せます」


 母の遺影に誓った。


-----------------------------------------------------------


 その頃、現体制派。


「陛下、宣戦布告が届いております」


 あのガキが煩わしいことを。


「そんなもの無視しろ、時間を稼ぐのだ」


 こちらが動かなければ、相手も動けない。

 魔人国に支援の打診をしているが、まだ返事が無い。

 とにかく時間を稼いで、優位に立ち回れるようにする必要がある。


「陛下、それは難しいかと。

 ソルヌで偵察と交戦したようでして、こちらから手を出してしまっております」


 頭を抱えた、どいつもこいつも頭が悪い。


「バカが……。

 ちっ、そうなれば相手はここに攻め入ってくるか。

 受けるしかあるまい」


 奴らは実戦の経験が乏しい。

 経験値ではこちらに分がある。

 ただ、獣人国との戦争で支持を大きく失ってしまっている。

 人数で不利を取っている。


「魔人国もあてにはできんな」


 力に拘った先代の国王とは異なり、現代の国王は姑息な手を打つ小物だ。

 おそらくどちらにつくか品定めでもしているのだろう。


「こちらも最終手段を取らざるを得ん」


 王座の間の肖像画に魔力を注ぐと、扉へと変貌した。

 その扉を開けて中に入る。

 そこら中に魔石や魔道具が並べられている。

 それらに目も向けず、真っ直ぐに見据える先には、

 青い培養液が満たされたカプセル。

 その中には眠る異様な人影。


「オレ様に歯向かうとどうなるか、大人の怖さを教えてやらねばな……」


 手元にあった羽筆を握りつぶした。


-----------------------------------------------------------


 その頃、月光の森では。


「戦が始まったようだな」


 見回りから帰ってきたネモが報告をくれた。

 反国王軍の進軍を確認したそうだ。


「ありがとう、まあそうなるだろうな」


 偵察時に相手から攻撃を受けた。

 それを機に王子側が仕掛けたのだろう。


「私たちも行かなくていいんです?」

「ああ、一旦待機だな」


 レウィシアさんの問いに答える。

 商人からは指示が出るまで待機と言われている。


「おっ、やってるな」


 ネモが目を向けた先では、ルナとアーティとカトレアが鍛錬をしている。


「《火球(フレア)》!」

「遅い!」


 ルナの火球をカトレアが軽々躱す。

 そのままルナへ攻め込む。


「ルナサマを守りマス!」


 盾を持ったアーティがルナの前に立ちはだかり、カトレアの攻撃を受け止める。


「くっ!」


 カトレアが距離を一度置く。

 実戦を想定した訓練を行っている。

 ルナとアーティでペアを組み、前衛と後衛に分けて動く。

 カトレアは前衛と後衛がいる相手を想定した戦闘。

 戦争に参戦する以上、必要なことだ。


「それにしても良い感じだな」

「ネモもそう思うか?」


 ルナはエルフということもあって魔法の才能は飛び抜けている。

 ただ、フィジカルや精神面にはまだ不安がある。


 アーティは魔力を動力として動く都合上、あまり魔力を使えない。

 代わりに魔法傀儡としての戦闘能力がある。


 この二人を組ませることで、ルナの安全性を確保しつつ、

 遠距離に対応できないアーティの弱点を補強している。


「ふぅ……疲れた」


 カトレアは戦闘経験は申し分ない。

 しかし、どうしても前衛後衛の両方を相手取る戦いは不得手だ。


「お兄ちゃん!ルナたちどうだった?」

「マスター、どうデスカ?」


 二人から質問を受ける。


「息ピッタリでとても良かった」


 仲が良いということもあるが、戦闘での相性の良さを感じた。


「そうだな、二人ともなかなかだったぞ」

「私も戦ってて結構苦戦したな」


 ネモやカトレアも同様の感想だった。


「はい、みんな回復するよー」


 レウィシアさんが三人にヒールをかける。


「ありがとう、シアちゃん」

「ありがとうございマス、レウィシアサマ」

「助かる」


 こうしてみると俺たちもなかなかの戦力だ。

 それぞれが自分を守る力と誰かを守る力を持っている。

 それを互いのために使うことができる。

 頑張りが少しずつ実を結ぶのを実感した。


「いろいろな魔法を覚えられそうだな」


 今まではみんなを守ったり、周囲に合わせる魔法を主体としてきた。

 これからはもっと幅広い魔法を覚えられそうだ。


「それに、俺ももっと鍛錬しなきゃな……」


 足手まといにならないよう、もっと強くならなければ。

 改めて気を引き締めるのだった。

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