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魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第六章 人間国王位継承戦
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開戦の引き金

各陣営の思惑が交錯する中、状況は緊迫する。


綺麗に現体制派の部隊と、反国王派の部隊に二分している訳ではない。

中立の立場の部隊もあれば、身内同士で党派が分かれていたり、

部隊の党派と個人の党派が異なる場合も存在している。


つまり、状況がかなり複雑になってしまっている。


そして両陣営の方針として、一般国民へ影響を出さないことを掲げているため、

国内での交戦ができず、場所が限られてしまっている。


「殿下、軍の準備は完了しましたが、動かせる状況ではございません」

「だろうな……」


側近が報告に来た。


反国王派を表明した部隊の軍備は揃っている。


水面下で動きつつも、表向きは睨み合うしかない。


「何か一つきっかけさえあれば」


元々は魔人国に仲介を頼む予定だったが、密偵からの報告で、それができない状態であることを認識している。


あちら側もそれを知っている上で時間稼ぎをしている。


父上としては動かなければ実質的に王座に居座ることができるからだ。


「彼らに頼むしかないか」


奇襲を仕掛けてもらうことを考えた。


今現体制派の軍はソルヌで編成と訓練を行っている。


ソルヌの地であれば周辺に住宅地は無い。


そして、その軍の中に、少年の両親らしき魔術師が所属する部隊もいる。


「彼らに悪いが、こちらに都合よく動いてもらわないとな」


角が立たないよう、相手側に攻撃をさせるように仕向ける方針を決める。


男側の魔術師は長距離にも届くほどの高精度の魔法を扱える。


そして女側の魔術師は感知に長けている。


彼らに偵察を指示すれば、おそらく発見される。


確実ではないが、今考えうる最善の策だと思った。


「私が森に出向く。

 今のうちに開戦後に備えた作戦の立案を頼む」

「承知いたしました」


フードを被り、月光の森へ向かった。




月光の森。


俺は魔術の本を読んでいた。


ある程度新しい手札を増やしておくためだ。


実戦で使えるかはまだ未知数だが、いくつか魔法を覚えることができた。


「魔法を試しに行くか」


覚えた魔法の試し撃ちに行こうと思った矢先に。


「やあ、殿下からの指示を持ってきたさ」


フードの商人がやってきた。


王子からの指示は商人を経由して来ることになっている。


「ああ、聞かせてくれ」


内容によっては断ってもいいという話になっている。


そのため、内容は無難なものになるだろう。


「ソルヌで現体制派の部隊が編成と訓練をしているさ。

 そこでお前さん方には偵察に行って欲しいさ」


――またソルヌか。


心の中で呟く。


国軍は獣人国との戦争準備もあの場所で行っていた。


その時、墓標の扱いに憤慨し、作戦を変えるに至った経緯がある。


「わかった」


二つ返事で了承した。


危険性もそれほど高くはない。


そしてソルヌのことで気が気じゃない。


指示が無ければこちらから名乗りを上げていただろう。


「助かるさ。

 ちなみに何かあった時の交戦は問題ないさ」


それも好都合だった。


「商人、いくつか売って欲しい物があるが、大丈夫か」

「聞かせて欲しいさ」


いくつかの物資を購入した。


偵察及び交戦があった時に備えるために。




六人でソルヌの全貌が見える丘の上に来ていた。


「一、十、百……大体三百人くらいか」


俺は双眼鏡を片手に人数を数える。


「たくさんいるね、現体制派ってそんなにいるんだ」


レウィシアさんが意外そうにしている。


あの国王に人望があることが信じられないようだった。


「変化を嫌う人間は結構いるからな。

 それに若い奴に従うのが嫌な奴もいるだろうし」


ネモが経験から来る持論を語る。


俺も同意した。


「ん?なんかあそこの男、ロイに似てるな……

 それに隣の女も」


カトレアが意味深なことを呟く。


「カトレアちゃん見せて、見せて」


ルナがカトレアから双眼鏡を受け取る。


「あ、本当だお兄ちゃんに似てる」


ルナも同様の印象を抱いたようだった。


「どういうことだ?」


カトレアとルナが指さす方を見た。


カトレアやルナより目が良くないため、うまく見えない。


「うまく見えないな……」


目を凝らしてみていたその時。


ぼやけた何かがこちらを向いたように見えた。


その後、何か赤いものが少しずつ近づいてくる。


「まずい、見つかった!全員伏せろ!」


赤いものは《火球(フレア)》だった。


全員回避の姿勢を取る。


幸い火球は俺たちから大きく離れた場所に被弾した。


「危なかったデス」

「あんな遠くからでも見つかるんだね」


アーティとルナも無事そうだ。


それ以降、魔法は飛んでこなかった。


ソルヌを見ると軍が撤退を始めていた。


「撤退するみたいだな、まあ国軍のマニュアル通りの動きだな」


隊長経験があるネモが教えてくれた。


深追いしてくることは無いだろう。


「俺に似た人物、俺も見えた」


伏せた時、一瞬ピントが合ったようにくっきり顔が見えた。


「あの男は俺の実の父親だ」


昔より老けてはいるが間違えようがない。


愛されることなく、名前すらもらえず、幼い俺を捨てた男だ。


「あれが、ロイを捨てたって言う……」


カトレアが真っ先に反応した。


「あの人がそうなの!?」


姿を見たルナも続く。


「あたしは顔見れてないけど、そいつがあの部隊にいるのか!」


ネモにも話はしていた。


憤慨してくれている。


「えっ?どういうこと?捨てたって?」

「初耳デス」


レウィシアさんとアーティには言っていなかった。


「すまん伝えてなかったか。

 実は俺は幼少の頃、親に捨てられた」


俺は簡単に過去を説明した。


魔法の適性が無かったこと。


名前も与えられず、両親に捨てられたこと。


「そんな酷いことが……」

「その人間に感情は無いのデスカ?」


レウィシアさんとアーティが驚いている。


レウィシアさんには「君たち姉妹だって」と言いかけて踏みとどまった。


ネモはレウィシアさんに伝えていないようだった。


それならば言うべきではない。


「おそらく近いうちに両親とは戦うことにはなるだろう」


親の姿を見たが、何も感情は無かった。


過去の自分なら殺したいほど憎んでいただろう。


だが、ソルヌでアンジェさんが実の家族のように接してくれた。


今いるみんなを家族のように思っている。


だから今は他人としか思えなかった。


「俺たちは商人にまんまと乗せられたのか」


両親なら俺たちを見つけて攻撃してくることも容易い。


開戦のためのきっかけに利用されたのだろう。


実際に相手が攻撃を仕掛けてきた。


おそらくそれを引き金に反国王軍も仕掛けるだろう。


そして、これがまさに開戦の引き金になるのだった。

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