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魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第六章 人間国王位継承戦
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それぞれの思惑

少年と会ってから一週間後。


時刻はまもなく正午となろうとしている。


私はソルヌ跡地に来ている。


少年の回答を聞くためだ。


ここは元々町があった。


ダンジョン素材や魔石の貿易で栄えており、身寄りの無い冒険者が流れ着く場所だった。


少年もこの町のギルドの冒険者だった。


「しかし、彼は一体何者なのだろうねぇ」


あそこまで凄腕の魔術師であれば名前くらいは知られていてもおかしくはない。


しかし、変異種ヒドラ事件以前に彼の名前を耳にしたことは無い。


「あと一歩のところまでは調べられているのだけれど」


部下に色々と調べさせていた中には興味深い情報があった。


現体制派の部隊の副隊長を務める男が彼に少し似ているというのだ。


その男とその妻は宮廷魔術師のエリートである。


この二人には子供が二人いる。


だが、その前に一度だけ記録の空白がある。


身ごもっていたはずの子供。


死産として処理された子供だ。


「それにしても不可解だ」


彼がヴァントで司令官を倒した後、国中で聞き込みが行われた。


その夫婦にも当然確認された。


だが二人とも口を揃えて知らないと答えた。


嘘検知魔法もあったため、二人が嘘をついている訳ではない。


あれだけは未だに説明がつかない。


それ以降真相に近づけないでいた。


そうこうしているうちに彼が現れた。


私は商人の顔に切り替わった。


「やあ来てくれたんだね」


わざとらしい演技で声をかける。


「依頼の件で話に来た」

「結論から教えて欲しいさ」

「依頼の件は受ける」


内心受けてくれることはわかっていた。


そして、おそらく条件をつけてくることも。


「ただ、条件がある、それを飲んで欲しい」

「言ってみて欲しいさ。

 無理な内容では無ければ譲歩するよう働きかけてみるさ」


彼は仲間思いだ。

おそらく条件も仲間に関するものだろう。


「一つ目は俺たちは六人で動く。だから部隊の指揮下には入らない」

「それは問題ないさ」


元よりそのつもりだ。

部隊に入れてしまっては彼らの強みが薄れてしまう。


「二つ目は命は張れない。

 身の危険が迫れば、たとえ敗戦濃厚でも離脱する。

 俺たちには国のために戦う意義は無いからな」

「その結果報酬がもらえなくなってもかい?」

「ああ、みんなの命が最優先だからな」

「わかったさ」


彼らを戦力として取り込めるだけでも御の字だ。


手駒にできるならそれに越したことは無いが。


「条件は以上だ」

「ご協力、感謝するさ」


こうして彼らの参戦が決まった。


だが、まだ安心はできない。


魔人国が軍を編成しているという情報が入ってきている。


内戦に乗じて攻め込んでくるつもりだろう。


復興に動いている獣人国や平和主義な人魚国、そして正々堂々を掲げる竜人国は動かない。


だが、魔人国は別だ。


卑怯な手でも使ってくる。


それに人間国には長年振り回されてきた歴史がある。


「軍師が行方不明なのが辛いところだ」


こういう時何度も乗り切ってきた我が国の軍師は行方知れずとなっている。


おそらくは戦争での敗北による父上からの粛清を恐れた亡命だろう。


「頭痛の種が尽きないな……」


悔やんでも仕方がない。


今できる限りのことをするしかない。




その頃、魔人国。


人間国についての御前会議が開かれていた。


「国王陛下ついにこの時が来ましたな」

「ああ」


人間国は戦争で多くの犠牲を出した上、王の失脚。


その王は徹底抗戦の構えを取るようだ。


確実に人間国は内戦が起こる。


そこを攻め込みあわよくば人間国を支配する。


それが難しくとも、どちらかについて借りを作ることで今後の政治が優位に進められる。


どちらに転んでも我が国には利しかない。


「悲願の人間国の占領も見えてきましたね」

「難しくとも、我々には有利な条件しかないからな」


資金面も獣人国に攻め入った時に人間国から通行料としてせしめたために潤沢にある。


「後は参戦するタイミングのみだ」


時期が早ければ我が国にも犠牲が出る。


時期が遅ければ何も得られないだろう。


「出撃のタイミングや作戦はそなたに任せる」

「はっ!」


王より指名を受け、敬礼した人物とは――


「再び重大な役目を任されるとは、なんてついているのだろう」


人間国の元軍師だった。




魔人国ではもう一人、動きを見せるものがいた。


「こいつは人間国の軍師だったやつ……」


王子へ報告せねば。


給仕を行いながら、御前会議の会話を盗み聞きしている少女がいた。


見た目は魔人であるサキュバスのメイド。


その実は人間国のスパイだ。


王子の握る情報は彼女がもたらしている。


見つからないよう細心の注意を払い、メッセージを残す魔法を施した分身体の蝙蝠を窓から飛ばす。


彼女の能力は周囲の認識をほんの少しだけ歪める。


それにより周囲からは彼女は窓から外を眺めているように見える。


分身体の蝙蝠は、そのまま人間国の方向へ飛んで行った。


「王子、この機会を乗り越えられることを祈っております」


彼女は王子を思い、祈るのだった。

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