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魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第六章 人間国王位継承戦
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報酬

月光の森へ向かっている。


元々深淵の森と呼ばれていたところだ。


既に瘴気は無い。


表向きは瘴気が満ちた場所ということになっているが。


瘴気はこの森に住む少年が浄化した。


どんな方法を取ったのかはわからない。


私は少年を高く買っている。


この世に存在していない特殊な魔法を使う魔術師。


突如現れて頭角を現しており、行く先々で活躍を見せている。


今回の王位継承戦で是非とも力を借りたい存在だ。


そうこうしているとお目当ての少年を見かけた。


「やあ、依頼の件は助かったよ、これが報酬さ」


少年に金貨の入った袋を手渡す。


「どうも」


彼は中身も確認せず懐へ仕舞った。


「ところで、獣人国との戦争で敗戦した責任を取らされる形で、

 五大国会議で人間国王が王座を追われたのは知ってるさ?」

「獣人国王から聞いているよ、人間国の秘策が不発だった場合、

 王座を降りてもらう約束をしたって」


知っていたようだ、これならば話は早そうだ。


「御前会議で王子が人間国の国王として承認されたようだよ」

「王子?あの王に息子なんていたのか」


私のことは認知されていないようだ。


仕方がない。


現国王の権限が強すぎて、息子である私にまったく自由が無かった。


だからこうして商人に扮して裏で動かざるを得なかった。


「まあでも、現国王も王座を譲る気は無いみたいで、近々内戦が起こるみたいさ」

「あの王がそう簡単に退くとは思えないからな」

「そこで内戦で反国王派について戦って欲しいさ。

 今回その依頼を持ってきたさ」


まずは実直に頼んでみる。

これで受けてもらえれば楽ではあるが。


「断る」

「それはどうしてさ?」

「受ける理由が無い。

 以前は金銭面に不自由していたり、情報を求めていたり、何かしら受ける理由があった。

 そして獣人国の件はたまたま目的と一致していたから受けたが、今回は何も無い」


彼らは私の僕でも無ければ駒でも無い。


利が無ければ動かない。


特に彼らは人間国に対して良い感情を持っていない。


国民のためと言っても動かないだろう。


「今の国王に辛酸を舐めさせられていたんじゃなかったかな。

 それであれば王子に変われば国はまともになると思わないかな?」

「そうとは思わないね。

 まず俺は王子のことを知らない。

 そして現国王に抵抗していたとも、国をより良くするために動いていたとも聞いたことがない。

 正直信用ができない」


手厳しい言われようだが否定できない。


「そもそも今までは立ち位置が明確ではない依頼だったから受けていたが、

 王子に肩入れするような依頼を受けるつもりはないね」


あくまで彼らは第三者としての立ち位置に拘るつもりだ。


「まあお前さんの言う通りさ。

 それでは逆に聞かせて欲しいのだけども、何があれば手伝ってくれるさ?」


逆に質問をする。


「特に無い」


一蹴されてしまった。


取り付く島もない。


「それならさ、お前さんの中に封印されている変異種ヒドラ。

 それをどうにかできる方法があると言ったらどうさ」


私の中の貴重な手札を一枚切った。


本当はここで使いたくなかったが、背に腹は代えられない。


「何故そのことを知っている」

「ソルヌで変異種ヒドラと戦っていた時の話を耳にしたさ。

 身体から飛び出した魔力の鎖で拘束されて、お前さんの身体の中に取り込まれていったという話を」

「……話を聞かせて欲しい」


反応が変わった。


手ごたえはあった。


「元々人間国が変異種ヒドラの封印を解くのに使った魔道具さ。

 その魔道具を報酬に出そうと思う。

 お前さん方が変異種ヒドラに勝てる力を付けるか、別の依り代を見つけて再封印すれば良いさ」


彼は悩んでいる。


封印の代償は分からないが、あの規模の魔物を封印するためにはそれ相応に何かは払っているはず。


それから解放されるのであれば、悪い話では無いだろう。


「一度持ち帰らせてもらえないか?

 俺の一存では決められない」

「もちろん良いさ。

 来週の正午にソルヌで回答を聞かせてもらうよ」

「ああ、わかった」


今日のところは保留となったが、おそらくうまくいくだろう。


封印で何かあれば、他のお仲間も協力してくれるはず。


「さて、内戦の準備をするか……」


隠蔽魔術の効力を強くし、存在感をかき消した。




商人と話した後、俺はみんなを集めた。


「実は変異種ヒドラをどうにかできる方法が見つかった」


そう言うと、みんなは声を上げた。


「やっと解放されるんだねー!」


ルナは新月の夜、俺が一人で苦しみ耐え忍んでいることを知っている。


だからこそ一番喜んでくれた。


「鎮痛薬使っても辛そうでしたからね」


レウィシアさんも安堵してくれた。


「それは良かったな」

「話には聞いていたが、良いことだと思う」

「良かったデス」


ネモ、カトレア、アーティの三人も祝福してくれる。


「ただ、そのための条件として、人間国の内戦に参戦する必要がある」


商人から聞いた話を伝える。


現国王が王座を追われ、王子が新国王に就任すること。


それに抵抗する現体制派と、反国王派で内戦が起こること。


封印を解く魔道具を報酬として、内戦に反国王派として参戦して欲しいということ。


「俺自身の問題のため、参戦しようと思う。

 みんなには無理強いしたくはない。

 だからもし現国王に個人的な恨みがあるなら力を貸して欲しい」


俺の我儘のためにみんなを巻き込むことになる。


過去に巻き込まないよう、一人で解決しようとしてみんなを傷つけたことがある。


だからこそ、言い方を変えた。


みんなに委ねつつ、参戦しない自由も保障できるように。


「あたしは参加するぜ、奴に使い捨てにされそうになった恨みがあるし」


ネモは乗り気だった。実際に現国王には思うところがあることは知っている。


「私も瘴気の件で、いろいろありましたからねぇ」


レウィシアさんも同様に、瘴気の件がある。


「ルナも森を奪おうとした人たちを許せないよ!」


ルナの故郷であるこの森に侵攻してきた国軍のことがある。


ネモはばつが悪そうにしている。


「王子に対しても思うところはあるが、私も獣人国……いや、村のみんなの命を奪われた。

 それに奴隷にもされたしな」


カトレアも人間国に対して散々な目に遭わされてきている。


特に戦争に関しては現国王主導である。


「ワタシも戦うデス!」


アーティもあの計画の被害者だ。


みんな戦う動機はある。


「みんなありがとう。

 でも無理はしないでくれ。

 みんなが無事であることが最優先事項だからな」


王子に体制が変わることで人間国が良い方向に進むかは分からない。


正直、内戦には興味が無い。


だが、手の甲の蛇の紋章。


新月の苦痛を取り除けるのであれば。


こうして内戦に参戦することが決まった。

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