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魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
プロローグ
6/14

予兆

ランクEへ昇格した。


魔導書も買った。


パーティでの経験を積むうちに、戦闘で何が必要かも少しずつわかってきた。


《ヒール》のような回復魔法。


初級魔法を応用した初級応用魔法。


冒険者としての生活は順調だった。


……だからこそ、油断していた。


魔法創造の存在すら忘れかけていた頃。


事件は起きた。


「アインさんが死んだ……!?」


信じられなかった。


Cランクへ昇格したアインさんが、討伐任務で命を落とした。


原因は、本来そのダンジョンにいるはずのない上級魔物。


仲間を逃がすため、一人で足止めをして――そのまま。


頭が真っ白になる。


あんなに強かったアインさんが?


あんなに頼りになった人が?


ようやく“兄貴”と呼べる存在ができたばかりだったのに。


だが、落ち込んでいる暇はなかった。


上級魔物が現れた以上、被害が町へ広がる可能性がある。


ギルドには冒険者たちが集められ、緊急の情報共有会議が始まっていた。


「アンジェさん、俺にできることはないかな」


無力でもいい。


少しでも役に立ちたかった。


自分を受け入れてくれた場所を守りたい。


アインさんが命を懸けて守ったものを。


「……Eランクの方は地下五階までの支援です」


上級魔物が確認されたのは地下八階。


上位ランク冒険者が本命へ挑むため、低階層は低ランク冒険者で掃討し、消耗を抑える作戦らしい。


もちろん危険を感じた時点で即撤退。


それでも十分だった。


少しでも力になれるなら。


準備を整え、俺たちはダンジョンへ向かった。


低層階に異常はなかった。


出現するのは雑魚魔物ばかり。


俺は新しく覚えた初級応用魔法の《大火球(ハイフレア)》を試した。


火球へさらに魔力を注ぎ込み、破壊力を高めた応用魔法。


無限の魔力を持つ俺が使えば、その威力は凄まじかった。


「おい、本当にEランクか……?」


上位ランクの冒険者すら驚くほどに。


そして地下六階へ続く階段前。


上位ランク冒険者たちが足を止めた。


「ここから先は俺たちだけで行く」


「下位ランクは撤退しろ。足手まといになる」


悔しかった。


だが、それが現実だった。


俺たちはギルドへ戻り、帰還を待った。


数時間後。


冒険者たちが帰ってきた。


全員が重傷だった。


「大丈夫ですか!?」


俺は慌てて《ヒール》をかける。


その中で、Bランク剣士のマークさんが苦々しく呟いた。


「……ありゃ、俺たちの手に負える相手じゃねえ」


敵は変異種ヒドラ。


本来なら複数のAランクパーティを編成してようやく討伐できるような怪物らしい。


そんな存在が、なぜこのダンジョンに現れたのか。


「国軍へ救援を要請するしかありませんね……」


アンジェさんが険しい顔で言った。


国軍。


Aランク冒険者級の戦力を持つ、国直属の部隊。


だが要請には莫大な費用がかかる。


この町の財政にも大打撃になるはずだ。


それでも、背に腹は代えられない。


救援は三日以内に到着予定。


皆がそう信じていた。


――この判断が、後に訪れる惨劇の始まりになるとも知らずに。

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