↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第五章 魔法傀儡の少女
59/149

手紙

 朝からアネモネさんとレウィシアさんが訪ねてきた。

 何やら話した後、お姉ちゃんが慌ただしく出かけていった。


「お姉ちゃんも友達がたくさんできて良かったね」


 私の姉、カトレアはこの前まで友達がいなかった。

 母の病気もあり、遅くまで仕事。

 休みは家事と鍛錬。

 とても遊んでいる余裕なんて無かった。


「それでもあのお姉ちゃんがねぇ」


 最近はいろんな子と一緒にいることが多い。

 そして好きな男の子ができるなんて。

 今は村の復旧の手続きのために役所に来ている。

 すると見覚えのある姿を見かけた。


「あれ?アーティさん。どうされたんですか?」


 魔法傀儡の子が立ち尽くしていた。

 最近新しくできたお姉ちゃんの友達。


「あ、シランサマ。実はデスネ……」


 話を聞くと、急な事情で遠くへ行かないといけなくなり、

 お別れの挨拶もできなかったので、せめて手紙だけでもと役所に持っていったが

 お金が無くて送れなかったとのことだった。


「急ぎの用事なの?」

「ハイ。遠くへ行くことになりマシタ」

「そういうことなら私が渡してあげるよ」

「助かりマス。お願いしマス」


 アーティさんから手紙を受け取った。


「お世話にナリマシタ。お元気でお過ごしクダサイ」


 アーティさんは港の方へ歩いて行った。


「久しぶりにルナちゃんに会いたいな」


 この後予定はないので、月光の森へ行こうと思った。


-----------------------------------------------------------


 俺は途方に暮れていた。

 ソルヌにもトピアにもヴァントにもいなかった。

 城下町付近の聞き込みも行ったが手がかりは無かった。

 人間国にいる分には最悪のパターンは回避できる。

 一旦森に戻った後、獣人国の捜索に合流すべきだ。


「本当にどこに行ったんだよ……」


 息を整えた後、再び走り出す。


「ルナ!」


 森に着くと真っ先に確認する。


「戻ってきてないよ……」


 泣きはらした目を拭うと首を横に振る。


「じゃあ獣人国側に合流してくる」


 今は時間が惜しい、獣人国へ向かおうとしたその時。


「あ、ロイさん、ルナちゃんこんにちは」


 カトレアの妹のシランが訪ねてきた。


「シランちゃん、こんにちは!」


 空元気なところは否めないものの、ルナはいつも通りに振る舞う。


「こんにちは。珍しいね、シランさんが訪ねてくるなんて」


 森に訪ねてくる人は多くない。

 ということは重要な用事だろう。


「実はアーティさんから手紙を預かってまして、届けに来たんです」


 シランさんは手紙をルナに渡した。


「アーティちゃん!?」


 ルナが目を見開いた。


「シランさん、アーティをどこで見かけたか教えてくれないか」


 俺も食い気味に尋ねた。


「え、えーと、役所だよ。そのまま港の方に歩いていったけど」


 喉から手が出るほど欲しかった手がかりだった。


「ありがとうシランさん!助かる」

「ありがとう!シランちゃん!」

「ど、どういたしまして……」


 あまりの反応にシランさんがたじろいでしまった。


「すぐにでも向かいたいところだけど」


 わざわざ俺たちに残そうとした手紙。

 何か今回の行動についての手がかりになるに違いない。

 まずは読もうと思った。


-----------------------------------------------------------


『マスター、ルナサマ、レウィシアサマ、アネモネサマ、カトレアサマ。

 勝手にいなくなってしまい申し訳アリマセン。


 ワタシの核には最初から命令が刻まれていたようデス。

 内容はマスターたちの元へ潜り込み、獣人国で核の魔導回路を暴走させることデス。

 計算では国一つが消滅する規模の爆発になるようデス。


 獣人国への脅威という言葉を聞いた時、封じられていた命令が解放されマシタ。

 恐らくギルドで説明を受けた時だと思いマス。


 ワタシは本日の正午に暴走しマス。

 命令に背くことは不可能デス。

 爆発を止めることもデキマセン。


 ですが、命令には獣人国としか指定されていないデス。

 ワタシは海へ向かいマス。

 海の深くに沈み、皆サマを巻き込むことなく、そこで爆発シマス。

 そうすれば被害は最小限に抑えられると判断しマシタ。


 皆サマには大変お世話になりマシタ。

 素性も分からないワタシと仲良くして頂いたことに感謝してマス。

 皆サマを巻き込まない方法が見つかって良かったデス。

 これで安心できマス。


 ですが――

 もう少しだけ、皆サマと一緒にいたかったデス。


 さようならデス』


-----------------------------------------------------------


 手紙を持ったまま、膝から崩れ落ちる。

 アーティは一人で抱え込み、これから死のうとしている。

 ルナは嗚咽を漏らし、言葉が出ない。

 一緒にいたシランさんも顔を手で覆っている。


 時刻は正午まで一時間も無い。

 ここから海へ向かっても間に合わない。

 それでも。


「俺はアーティの元へ向かう」


 手紙を握り締めたまま外へ駆け出す。


「シランさん、ルナを頼みます……」


 シランさんが小さく頷き、ルナの肩を抱き寄せた。

 アーティにはまだ言いたいことがたくさんある。

 みんなにも直接謝罪をしてもらわないと。

 そのためには生きて連れ戻さなければならない。

 身体強化を使い、全速力で海の方へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。