手紙
朝からアネモネさんとレウィシアさんが訪ねてきた。
何やら話した後、お姉ちゃんが慌ただしく出かけていった。
「お姉ちゃんも友達がたくさんできて良かったね」
私の姉、カトレアはこの前まで友達がいなかった。
母の病気もあり、遅くまで仕事。
休みは家事と鍛錬。
とても遊んでいる余裕なんて無かった。
「それでもあのお姉ちゃんがねぇ」
最近はいろんな子と一緒にいることが多い。
そして好きな男の子ができるなんて。
今は村の復旧の手続きのために役所に来ている。
すると見覚えのある姿を見かけた。
「あれ?アーティさん。どうされたんですか?」
魔法傀儡の子が立ち尽くしていた。
最近新しくできたお姉ちゃんの友達。
「あ、シランサマ。実はデスネ……」
話を聞くと、急な事情で遠くへ行かないといけなくなり、
お別れの挨拶もできなかったので、せめて手紙だけでもと役所に持っていったが
お金が無くて送れなかったとのことだった。
「急ぎの用事なの?」
「ハイ。遠くへ行くことになりマシタ」
「そういうことなら私が渡してあげるよ」
「助かりマス。お願いしマス」
アーティさんから手紙を受け取った。
「お世話にナリマシタ。お元気でお過ごしクダサイ」
アーティさんは港の方へ歩いて行った。
「久しぶりにルナちゃんに会いたいな」
この後予定はないので、月光の森へ行こうと思った。
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俺は途方に暮れていた。
ソルヌにもトピアにもヴァントにもいなかった。
城下町付近の聞き込みも行ったが手がかりは無かった。
人間国にいる分には最悪のパターンは回避できる。
一旦森に戻った後、獣人国の捜索に合流すべきだ。
「本当にどこに行ったんだよ……」
息を整えた後、再び走り出す。
「ルナ!」
森に着くと真っ先に確認する。
「戻ってきてないよ……」
泣きはらした目を拭うと首を横に振る。
「じゃあ獣人国側に合流してくる」
今は時間が惜しい、獣人国へ向かおうとしたその時。
「あ、ロイさん、ルナちゃんこんにちは」
カトレアの妹のシランが訪ねてきた。
「シランちゃん、こんにちは!」
空元気なところは否めないものの、ルナはいつも通りに振る舞う。
「こんにちは。珍しいね、シランさんが訪ねてくるなんて」
森に訪ねてくる人は多くない。
ということは重要な用事だろう。
「実はアーティさんから手紙を預かってまして、届けに来たんです」
シランさんは手紙をルナに渡した。
「アーティちゃん!?」
ルナが目を見開いた。
「シランさん、アーティをどこで見かけたか教えてくれないか」
俺も食い気味に尋ねた。
「え、えーと、役所だよ。そのまま港の方に歩いていったけど」
喉から手が出るほど欲しかった手がかりだった。
「ありがとうシランさん!助かる」
「ありがとう!シランちゃん!」
「ど、どういたしまして……」
あまりの反応にシランさんがたじろいでしまった。
「すぐにでも向かいたいところだけど」
わざわざ俺たちに残そうとした手紙。
何か今回の行動についての手がかりになるに違いない。
まずは読もうと思った。
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『マスター、ルナサマ、レウィシアサマ、アネモネサマ、カトレアサマ。
勝手にいなくなってしまい申し訳アリマセン。
ワタシの核には最初から命令が刻まれていたようデス。
内容はマスターたちの元へ潜り込み、獣人国で核の魔導回路を暴走させることデス。
計算では国一つが消滅する規模の爆発になるようデス。
獣人国への脅威という言葉を聞いた時、封じられていた命令が解放されマシタ。
恐らくギルドで説明を受けた時だと思いマス。
ワタシは本日の正午に暴走しマス。
命令に背くことは不可能デス。
爆発を止めることもデキマセン。
ですが、命令には獣人国としか指定されていないデス。
ワタシは海へ向かいマス。
海の深くに沈み、皆サマを巻き込むことなく、そこで爆発シマス。
そうすれば被害は最小限に抑えられると判断しマシタ。
皆サマには大変お世話になりマシタ。
素性も分からないワタシと仲良くして頂いたことに感謝してマス。
皆サマを巻き込まない方法が見つかって良かったデス。
これで安心できマス。
ですが――
もう少しだけ、皆サマと一緒にいたかったデス。
さようならデス』
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手紙を持ったまま、膝から崩れ落ちる。
アーティは一人で抱え込み、これから死のうとしている。
ルナは嗚咽を漏らし、言葉が出ない。
一緒にいたシランさんも顔を手で覆っている。
時刻は正午まで一時間も無い。
ここから海へ向かっても間に合わない。
それでも。
「俺はアーティの元へ向かう」
手紙を握り締めたまま外へ駆け出す。
「シランさん、ルナを頼みます……」
シランさんが小さく頷き、ルナの肩を抱き寄せた。
アーティにはまだ言いたいことがたくさんある。
みんなにも直接謝罪をしてもらわないと。
そのためには生きて連れ戻さなければならない。
身体強化を使い、全速力で海の方へ向かった。




