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魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第五章 魔法傀儡の少女
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手紙

朝からアネモネさんとレウィシアさんが訪ねてきた。


何やら話した後、お姉ちゃんが慌ただしく出かけていった。


「お姉ちゃんも友達がたくさんできて良かったね」


私の姉、カトレアはこの前まで友達がいなかった。


母の病気もあり、遅くまで仕事。


休みは家事と鍛錬。


とても遊んでいる余裕なんて無かった。


「それでもあのお姉ちゃんがねぇ」


最近はいろんな子と一緒にいることが多い。


そして好きな男の子ができるなんて。


今は村の復旧の手続きのために役所に来ている。


すると見覚えのある姿を見かけた。


「あれ?アーティさん。どうされたんですか?」


魔法傀儡の子が立ち尽くしていた。


最近新しくできたお姉ちゃんの友達。


「あ、シランサマ。実はデスネ……」


話を聞くと、急な事情で遠くへ行かないといけなくなり、

お別れの挨拶もできなかったので、せめて手紙だけでもと役所に持っていったが

お金が無くて送れなかったとのことだった。


「急ぎの用事なの?」

「ハイ。遠くへ行くことになりマシタ」

「そういうことなら私が渡してあげるよ」

「助かりマス。お願いしマス」


アーティさんから手紙を受け取った。


「お世話にナリマシタ。お元気でお過ごしクダサイ」


アーティさんは港の方へ歩いて行った。


「久しぶりにルナちゃんに会いたいな」


この後予定はないので、月光の森へ行こうと思った。




俺は途方に暮れていた。


ソルヌにもトピアにもヴァントにもいなかった。


城下町付近の聞き込みも行ったが手がかりは無かった。


人間国にいる分には最悪のパターンは回避できる。


一旦森に戻った後、獣人国の捜索に合流すべきだ。


「本当にどこに行ったんだよ……」


息を整えた後、再び走り出す。


「ルナ!」


森に着くと真っ先に確認する。


「戻ってきてないよ……」


泣きはらした目を拭うと首を横に振る。


「じゃあ獣人国側に合流してくる」


今は時間が惜しい、獣人国へ向かおうとしたその時。


「あ、ロイさん、ルナちゃんこんにちは」


カトレアの妹のシランが訪ねてきた。


「シランちゃん、こんにちは!」


空元気なところは否めないものの、ルナはいつも通りに振る舞う。


「こんにちは。珍しいね、シランさんが訪ねてくるなんて」


森に訪ねてくる人は多くない。


ということは重要な用事だろう。


「実はアーティさんから手紙を預かってまして、届けに来たんです」


シランさんは手紙をルナに渡した。


「アーティちゃん!?」


ルナが目を見開いた。


「シランさん、アーティをどこで見かけたか教えてくれないか」


俺も食い気味に尋ねた。


「え、えーと、役所だよ。そのまま港の方に歩いていったけど」


喉から手が出るほど欲しかった手がかりだった。


「ありがとうシランさん!助かる」

「ありがとう!シランちゃん!」

「ど、どういたしまして……」


あまりの反応にシランさんがたじろいでしまった。


「すぐにでも向かいたいところだけど」


わざわざ俺たちに残そうとした手紙。


何か今回の行動についての手がかりになるに違いない。


まずは読もうと思った。



『マスター、ルナサマ、レウィシアサマ、アネモネサマ、カトレアサマ。


勝手にいなくなってしまい申し訳アリマセン。


ワタシの核には最初から命令が刻まれていたようデス。


内容はマスターたちの元へ潜り込み、獣人国で核の魔導回路を暴走させることデス。


計算では国一つが消滅する規模の爆発になるようデス。


獣人国への脅威という言葉を聞いた時、封じられていた命令が解放されマシタ。


恐らくギルドで説明を受けた時だと思いマス。


ワタシは本日の正午に暴走しマス。


命令に背くことは不可能デス。


爆発を止めることもデキマセン。


ですが、命令には獣人国としか指定されていまセン。


ワタシは海へ向かいマス。


海の深くに沈み、皆サマを巻き込むことなく、そこで爆発シマス。


そうすれば被害は最小限に抑えられると判断しマシタ。


皆サマには大変お世話になりマシタ。


素性も分からないワタシと仲良くして頂いたことに感謝してマス。


皆サマを巻き込まない方法が見つかって良かったデス。


これで安心できマス。


ですが――


もう少しだけ、皆サマと一緒にいたかったデス。


さようならデス』



手紙を持ったまま、膝から崩れ落ちる。


アーティは一人で抱え込み、これから死のうとしている。


ルナは嗚咽を漏らし、言葉が出ない。


一緒にいたシランさんも顔を手で覆っている。


時刻は正午まで一時間も無い。


ここから海へ向かっても間に合わない。


それでも。


「俺はアーティの元へ向かう」


手紙を握り締めたまま外へ駆け出す。


「シランさん、ルナを頼みます……」


シランさんが小さく頷き、ルナの肩を抱き寄せた。


アーティにはまだ言いたいことがたくさんある。


みんなにも直接謝罪をしてもらわないと。


そのためには生きて連れ戻さなければならない。


身体強化を使い、全速力で海の方へ向かった。

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