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魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第五章 魔法傀儡の少女
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失踪

朝目覚めたら、アーティがいなくなっていた。


「お兄ちゃん!アーティちゃんがいないの」


息を切らしたルナが走ってきた。


日課でルナとアーティは朝、森を散歩していた。


だが今日は姿を現さなかったという。


「アーティちゃん、先に行ったと思って森中探したけど、見つからなくて」


昨日のこともあり傷心したのだろうか。


無いはずの感情が少しずつ芽生えているように感じていた。


「一人になりたくなったのかな」


情報から導かれた行動なのかもしれない。


日々進化し続ける以上、今までの枠組みでは考えられない。


「でも……なんだか胸騒ぎがするよ……」


ルナは心の底から心配しているようだ。


「確かに勝手にいなくなるのはおかしいな」


思い返すと確かに腑に落ちない。


感情起因での行動は確かに見られたが、感情が先行したことは無かった。


必ず行動する時には報告をするよう指示していた。


その指示を無視してまで感情で行動するとは考えられなかった。


「平和ボケしていたかもしれない……」


俺は血の気が引いた。


アーティの本当の管理者が命令を書き換えた可能性は否定できない。


人間でいう忘却魔法や記憶の封印魔法。


それと同じようにアーティの命令を封印しておいて、解除したという可能性がある。


「ルナ!急いで探すぞ!」


俺は駆け出していた。



今までアーティそのものを警戒していた。


だからこそ反応や行動に対して無実だと判断していた。


実際、今まで接していたアーティの人格そのものは無実な可能性が高い。


怪しい行動は一切取らず、こちらに危害を加えるつもりも無いのは明らかだった。


だが、考えが及ばなかった。


管理者情報は抹消されたのではなく、一時的にロックされている。


何らかのトリガーでロックが解除されることで、本来の命令が実行されるのだろう。


もしくは人格を乗っ取って、物言わぬ兵器に変わる可能性がある。


魔法傀儡に対する知識が圧倒的に不足していたことも問題だろう。


ただ、それ以上にアーティのことを人間として認知しすぎていたのだ。


「ネモちゃん!シアちゃん!アーティちゃん見なかった!」


ルナがネモとレウィシアさんの家に入って行った。


「いや、見てない」

「そうだね、今起きたばっかりだからね」


二人が欠伸をしながら出てきた。


「まずいことになった、もしかするとアーティは……」


俺の見解を二人に話した。


二人は一瞬で目が覚めたようだった。


「アーティは裏切ったわけではない、ないからこそ、くっ……」


ネモが目を伏せて拳を握り締めた。


アーティを操る存在に対する怒りを感じた。


「そうなると色々とやばいね……」


レウィシアさんの顔が青ざめる。


もし、この見解が正しかったと仮定する。


見つけられなければ、獣人国に大量の犠牲が出ることになる。


見つかれば、俺たちでアーティを破壊しなくてはいけない。


どちらに転んでも最悪なシナリオだった。


「アーティちゃん、どうなっちゃうの?」


ルナが心配そうにしている。


伝えないわけにもいかない。


俺はできる限り実情を和らげて伝えた。


「そんな……アーティちゃん……」


ルナの目に涙が溜まる。


ルナが一番アーティと仲が良かった。


俺の何倍も辛い思いをしているだろう。


「アーティを探そう――」




森には魔力は感じられない。


恐らく外に出ている。


手分けして探すことにした。


俺は人間国、ネモとレウィシアさんで獣人国。


二人にはまずカトレアの家に行って、声をかけて合流してもらう。


ルナは戻ってくる可能性を考えて、森で留守番してもらう。


「どこだ、どこに行ったんだ……」


必死で走る。


ソルヌ、トピア、ヴァント。


心当たりのある場所を探す。


何としても見つけなければならない。


見つければまだ助けられる可能性はある。


「久しぶりだな、この胸の痛みは」


大切な人を失いそうになる時の胸の痛み。


久々に感じた。


あんなに純粋な子にこんな残酷な結末を背負わせるなんて。


運命に怒りを感じた。




どうしてこんなことになってしまったのだろう。


あたしは怒りを抑えられないでいた。


「アネモネさん、どうしたんだ?」


カトレアの家について、事情を説明した。


「……くっ」


カトレアの表情が歪んだ。

事情は伝わったようだ。


「本当に酷いことをする、あの国の王は……」

「まったくだ、この手で殺してやりたいよ」


憎悪が募っていく。


「……」


シアは無言のままだ。


お喋りな彼女が静かなのは珍しい。


本気で今回のことを怒っている。


ルナの次くらいにアーティのことを可愛がっていた。


「聞き込みと、捜索に分かれよう」


聞き込みはシアに任せ、あたしとカトレアは二手に分かれて捜索に向かう。


「絶対見つけるからな!」


身体強化まで使い、全力で駆け出した。




「……皆サマ、申し訳ないデス」


アーティは一人彷徨っていた。


手には一通の手紙がある。


ワタシを愛してくれた人たちへ向けて、自分の気持ちを綴ったもの。


「この手紙を出したらワタシは……」


言葉に詰まる。


感情は無いはずだった。


なのに不思議なものがこみ上げる。


本当の感情は知らない。


それでも、この胸を渦巻く魔力の乱れを言葉にするならば――


「これが感情なのデスネ……」

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