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魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第五章 魔法傀儡の少女
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戦争の残火

同時期。


五大国会議が開かれた。


議題は勿論この度の戦争についてだ。


「戦勝国である獣人国に対し、敗戦国である人間国は賠償金の支払いを命ずる」


竜神国の国王が代表として処遇を言い渡した。


「また、戦争のために収集した魔道具の破棄も命じます」


人魚国の女王もそれに続く。


「まだ負けちゃいねえよ、確かに兵力戦は負けた。それは認める。

 だが、まだこっちは奥の手を残している」

「見苦しいぞ人間国国王。そんなハッタリ誰が信じるか」


魔人国の国王が毅然と答える。


国境を素通りさせた責任を問われないよう、必死さも見え隠れする。


少し考える。


万が一のことを考えるべきと直感した。


「いや、もし本当なら我が国が甚大な被害を被ることになる。

 事実確認が取れるまでは、今回の処遇は保留としよう。

 ただ、もしハッタリであったり、不発で終わった場合は国王を降りてもらう」


実際この男ならやりかねない。


国王の座から降ろす好機があるとすれば今だろう。


「ふん、お前の国がどうなっても知らないからな。

 まあ詳しいことはオレ様も知らないがな」


実際部下から詳細は伝えられていないのだろう。


言えばベラベラと得意げに話してしまう。


軍師といい、人間国が抱える人材の優秀さは身をもって体感している。


「そうだな、ここで獣人国が崩壊する大打撃を受ければ、ひっくり返るだろう」

「約束は違えないでくださいね。もし何事も無ければその時は……」

「あー、はいはい、無事で済むわけないだろう。

 オレ様は獣人国の吠え面を拝めるのを楽しみにしておくか」


何としてもここは乗り越えねばならない。


我が国の民のため、いや全国の民のためにも。




俺は一人で獣人国まで来ていた。


アーティはみんなとお留守番している。


目を離しても危険性は無いと判断した。


何かあれば《瞬間移動》で戻れる。


みんなは女子会だと盛り上がっていた。


ギルドの近くを通ると大量の依頼が張り出されていた。


「あーロイさん、初めまして。実はお噂はかねがね伺っております」

「あ、どうも」

「紹介遅れました。私は新しくこのギルドに配属された、ビオラって言います」

「あ、初めまして……」


初めて見る顔だと思ったら、新しく配属された方だった。


久々に人見知りモードが発動している。


「ちょうどいいところに、実はですね……」


自己紹介もそこそこにビオラさんに相談を受けた。


五大国会議の後、国王の指示が出たようだ。


何やら人間国がまた企んでいるらしい。


「だから調査依頼がたくさん届いているんですね」

「そうなんですよ。でも依頼内容が抽象的過ぎて、みんな受けたがらないんですよね」


確かに調査と言われても具体的な内容が書かれていない。


報酬は魅力的だが、完了条件の不確定なので手が出しにくい。


「そ・こ・で、申し訳ないのですが受けてもらえませんか?」


全力で頭を下げられる。


あそこまで全力で頭を下げられては断れない。


「わかりました。やるだけやってみます」

「本当ですか!ありがとうございます」


依頼状を受け取り、ギルドを後にした。


「それにしても人間国がなあ」


その時一瞬、アーティのことが浮かんだ。


だが首を振る。


この数日、常に行動を共にしてきた。


不審な行動は何一つない。


もし何か企んでいるのなら、あまりにも無防備すぎる。


「いやいや、それでも獣人国に甚大な被害を出すなんて考えられない」


実際魔力の消耗が激しく、戦闘はそこまで得意そうではなかった。


それに軍部への接触も無ければ、妙な魔力反応も確認できなかった。


元より、スパイとして情報を流す目的か、せいぜい暗殺くらいの警戒だった。


「変異種ヒドラみたいな魔物の封印を解こうとしている線が強いか」


そうなれば各種ダンジョンに潜るのが正攻法。


「この機会だし、全員で回るか」


既にみんな、それ相応な実力を備えている。


守られるだけではなく、守れる強さを持っている。


危険だからと遠ざけるよりも、力を合わせるべきだと判断した。




その頃。


月光の森では女子会が開かれていた。


机の上には紅茶とたくさんの甘味が置かれている。


カトレアとアネモネ、ルナとレウィシアとアーティという組み合わせで座っている。


「なあ、アネモネさんはロイとはどうやって知り合ったんだ?」

「ああ、それはあたしが人間国の軍としてだな……」


二人はロイとの出会いについて語っている。


「ルナちゃんってなんか上品なところあるよね~」

「ルナはエルフの国の王女だったんだ」

「えっ!?王女だったの?」

「ルナサマは王女サマ、記憶シマシタ」


三人はルナについての話をしている。


簡単にロイから説明を受けていた。


そのためレウィシアは過去のことは触れないようにしていた。


「ルナちゃんの過去のこと、聞いちゃってもいいの?」

「もちろんだよ!シアちゃんとアーティちゃんに聞いて欲しいな!」

「ワタシも聞かせて頂くデス」


ルナにとっては、思い出したくないような辛い記憶もあるだろう。


それでも楽しかった記憶まで忘れようとするのは違うという結論に至ったのだ。


「うう……人間がすまないことをした」

「いやもう済んだことだから、それにロイと出会うきっかけにはなったから」


人間に奴隷にされた話を聞いて、アネモネが泣きながら謝罪していた。


「あーあーお姉ちゃん泣かせちゃったの?」

「いや、違う、カトレアは……」

「あ、ああ、どうしようどうしよう」


アネモネが泣き出したのを見てレウィシアがからかいにきた。


アネモネは反論しようとするが、うまく言葉が出てこない。


からかいを間に受けてカトレアが慌てている。


「シアちゃんダメだよ、カトレアさん真面目だから本気にしちゃうよ」


ルナがレウィシアに「めっ」と叱りにきた。


「ごめんごめん、まさかここまで面白い反応するなんて」


レウィシアもやり過ぎたと思ったのか、慌てて弁解した。


アネモネが涙を拭いながら甘味を頬張る。


「しょ、しょっぱい……」


「それは涙の味だよ、お姉ちゃん」


アネモネは少し落ち着いてきたようだ。


「なぜ泣いてる方が謝っているのデス?」


アーティにとって悲しい時に涙が流れるという情報はある。


ただ、泣いている人に向けて謝るという情報しか持っていなかった。


「相手に悪いことしちゃって、悲しくなっちゃうことはあるんだよ」


ルナが続きを言おうとしてハッとした表情になった。


「でもネモちゃんが悪いことしたわけじゃなくて、あわわ……」


うまく説明できないよーとルナが声を上げた。


「なぜアネモネサマは悪くないのに謝っているのデス?」


アーティも自分に無い情報が雪崩れ込んできて混乱しているようだ。


「同じ人間のしたことだからね。直接悪いことしてなくても。

 申し訳ない気持ちになっちゃうんだよね」


レウィシアが少し考えてから答えた。


漠然としたイメージだけどねと付け加えた。


「だからあの時マスターは……」


ルナと三人でカフェに行った時のことを思い出していた。


男が人間に恨みをもっていたこと。


それに対して最初ロイが、自分にも水をかけろと言ったこと。


その不可解な行動に対しての説明がついた。


その後、ロイが帰ってくるまでの間、楽しい女子会は続くのだった。

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