核
その後、ネモとカトレアが帰ってきた。
「ただいまー……って誰だっ!」
「えっ!?なんで魔法傀儡がここに!?」
二人は違う方向性で驚いた。
「行き倒れになってたから連れ帰ってきた」
魔法傀儡を拾った旨を簡潔に伝える。
「えー可愛いな、人間にしか見えないな」
ネモは魔法傀儡自体にあまり馴染みが無かったらしく、興味津々で見ている。
「二人の名前を教えてクダサイ」
アーティが二人の元に近づいてくる。
それを見てカトレアは目を丸くした。
「魔力の糸が無い!?どうして動いてるの!?」
カトレアも傀儡自体は知っているため、この異様さに気付いていた。
「その辺もふまえて直接聞こうと思ってた」
この原理は個人的にも興味がある。
「えーと、あたしはアネモネって言うんだ」
「私はカトレアです」
「アネモネサマと、カトレアサマデスネ。記憶シマシタ」
一通り自己紹介を済ませた後、本題に入る。
「なあアーティ。君は魔力の糸が無いのに、どうして動いているんだ?」
「ワタシは体内に魔力の核が埋め込まれてマス。
この核に魔力を蓄えておくことで動けマス」
仕組み自体は単純だが、その実現には高度な技術が必要だと分かる。
「じゃあ君が記憶をしたり、命令を出したりはどうやって行っている?」
「核が記憶の蓄積と命令の発信を行いマス。
どういう仕組みで動いているかはワカリマセン」
「すごい仕組みだな……」
俺は震え上がった。
核が心臓と脳の両方の働きをしている。
魔力を蓄積する技術については、魔石があるので珍しくはない。
ただ、核が魔力を制御して、思考し、身体を動かす。
その技術は並大抵のものではない。
「君のような自分で動ける魔法傀儡は他にいる?」
「動くだけならたくさんイマス。
記憶して思考できるのは記憶上、ワタシだけデス」
つまり、核に魔力を蓄積して動く魔法傀儡自体は存在している。
ただ、命令自体は術者が埋め込まないといけない。
アーティだけが唯一の成功作なのかもしれない。
「君の作者は?どうして一人彷徨っていた?」
「エラー!エラー!回答デキマセン」
想定通り引き出すことはできなさそうだ。
黒幕に繋がる情報は消されているのかもしれない。
「ありがとう、一旦俺からは終わりだけど、みんなは何かあるか?」
「はい!」
「ああ、いっぱいある」
「気になることはいっぱいだね」
「そうだな、私もいくつか」
全員食い気味だった。
「アーティちゃんは、心はあるの?」
「アタシは傀儡なのでアリマセン。記憶して学んでいくことで理解することはデキマス」
「すごい、本当に生きているみたい!」
ルナからは哲学的な疑問が出てきた。
おそらく、泣いている人を見れば悲しい、笑っている人を見れば嬉しいといったように、
紐づけて理解することはできると言いたいのだろう。
「お前は戦えるのか?」
「アタシは戦うことはデキマス。
魔法は使えませんが、核に蓄積された魔力を放てマス。
魔力の消耗が激しいので、武器を使う戦い方が主デス」
ネモからは戦闘面の質問が飛んだ。
蓄積した魔力を撃つ攻撃は行えるが、もちろん動力を使うことになる。
身体の収納スペースに武器を仕込み、それで戦うのがメインになる。
念のため収納スペースを見せてもらったが、空だったのでひとまずは安心した。
「アーティちゃんにとっては私たちってどう思う?」
「マスターの仲間ということで味方と判断シマス。
データが不足しているのでそれ以上はワカリマセン」
レウィシアさんは俺たちの印象について聞いた。
敵意は向けられていないようで良かった。
「私からは一つ。君は人のような生活を送るのか?」
「ワタシは人に限りなく近くなるよう設計されてマス。
動力にはならないデスガ、食事は行えマス。
魔力を抑えるため睡眠モードにもなりマス。
汚れを落とすためお風呂にも入れマス」
カトレアからは人間との類似性の質問が出た。
何も知らなければ人間と勘違いする程だった。
「質問はまだあるかもだけど、そろそろ日も沈んできたし、食事にするか」
「わーい、ごはんごはん」
「そういやお腹空いたな」
「今日は私が作ったんだよ」
「私は家にご飯があるからお暇させて頂こう」
家族と暮らすカトレアを家まで送り届けた後、食事となった。
「アーティちゃん、おいしい?」
ルナが尋ねた。
「美味しいデス。甘さを感じマス」
「えっ!?味がわかるの?」
レウィシアさんが驚く。
「食材の情報と調理方法からおおよその味を判別してマス」
「あーなるほどね」
実際に感じているわけじゃないのかーと、レウィシアさんは少し残念そうにしていた。
こうしてみると普通の女の子にしか見えない。
謎は深まるばかりだが、少なくとも敵意は無い。
もう少し様子を見ることにしよう。




