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魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第五章 魔法傀儡の少女
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魔法傀儡

 ヴァントにフードで身を隠した人物が立ち尽くしていた。

 このフードは国軍のデコイ兵士が着用していたものだ。

 どこから来たのか、今まで何をしていたか分からない。


「……行かなきゃデス」


 ただ、自分の中に刻まれた命令だけは覚えている。

 覚束ない足取りで歩みを進める。

 フードから見えるのは人とは思えない精気の無い肌。

 虚ろな瞳でひたすら前だけを見ている。


「……魔力」


 魔力が尽きかけている。

 そのまま意識を失い、地面に倒れ込んだ。


-----------------------------------------------------------


 俺はルナと二人で、獣人国にある森林地帯の討伐依頼を受けていた。

 今回はルナが主体で俺が援護という形を取っていた。


「《風の刃(エアスラッシュ)》!」


 俺が詠唱すると風の刃が一面のゴブリンを切り裂いた。

 次々と倒れていく。


「次は《水球(アクア)》!」


 再び詠唱すると水の球がホーンラビットを直撃する。

 当たった瞬間、水が弾け、窒息させる。

 ゴブリンは数を減らすため火力重視。

 ホーンラビットは素材が傷むから別の魔法。

 ルナに使い分けを教える。


「次はルナもやってみるか?」

「やるやるっ!」


 ルナが詠唱を始める。


「えい!《風の刃(エアスラッシュ)》!」


 風の刃がゴブリンを切り裂く。

 少数ではあるが確実に討伐できている。


「次は《土礫》!」


 土を礫のように細かくしたものをぶつける初級魔法。

 ルナが獣人の子に教わっていた魔法だ。

 大量の礫が襲い掛かる。

 ホーンラビットは礫の勢いに吹き飛ばされて気絶した。


「わーい、ルナもうまくできた!」

「良かったぞ、上出来だ」


 喜ぶルナの頭を撫でる。


「えへへ……」


 目を細めてルナが微笑む。

 魔法の腕は同じ年齢の子たちより頭一つ抜けている確信がある。


「さて、そろそろ帰るか」

「はーい」


 森林地帯を抜けて深淵の森に帰ろうとした時だった。


「お兄ちゃん、あそこで誰か倒れてるよ」


 フードを着た人物がヴァント付近で倒れていた。


「おーい、大丈夫か?」


 声をかけながら近づくが反応が無い。

 身体を起こすと人間の少女だった。

 いや違う。

 顔こそ普通の人間だが精気が無い。

 それに身体が球体関節で出来ている。


「魔法傀儡か」


 ヴァントの国軍がデコイに使っていた魔法傀儡の一体だろう。

 ほとんどは破壊されたか、放棄されて回収して解体されたはず。


「……ま、魔力」


 うわ言のように魔法傀儡が呟いた。


「うわっ!」


 それを聞いて驚いてしまった。

 魔法傀儡は魔力の糸が無ければ動かせない。

 なのに動いている。

 しかも喋った。

 あまりにも異質な存在に恐怖を覚えた。


「国軍が残した兵器かもしれない、どうしようかな……」


 得体の知れないものを放置しておくわけにもいかない。

 本来なら破壊するのが正しい行動だ。

 だが、幼気な少女の見た目をしており、意識もある。

 流石に躊躇してしまう。


「お兄ちゃん、助けてあげようよ」


 ルナが懇願する。

 魔力の糸が無い以上、誰かが操っているとは思えない。

 それにもし、他にも同様の傀儡が存在するとしたら。

 今後の脅威となるだろう。

 それであれば、リスクはあるが調査すべきだ。


「そうだな、一旦連れ帰ろう」


 傀儡の少女を抱えて深淵の森に戻った。


-----------------------------------------------------------


 深淵の森に帰ってきた。

 カトレアとネモはそれぞれ依頼でいない。

 レウィシアさんだけが戻っていた。


「おかえりー。

 ……って!何?何?少女誘拐してきたの?」


 レウィシアさんが驚いた表情になる。


「違う!違う!これは魔法傀儡だ」

「道の真ん中で倒れてたんだよー」


 必死に説明する。


「いや、でもなんで連れ帰ってきたの?」

「実は訳があって……」


 魔力の糸と繋がっていないのに動いたこと。

 言葉を発したことを伝えた。


「それは興味深いね」


 レウィシアが興味津々に傀儡を見る。


「何かあるといけないから一旦二人は席を外して」

「わかったー!」

「はいよー」


 二人を退避させる。

 魔法傀儡の臀部に尻尾のようなプラグがある。

 これを手にもって魔力を流し込む仕組みのようだ。

 プラグを手にもって魔力を流す。

 すると。


「魔力充電完了デス!起動シマス!」


 元気な声で魔法傀儡が動き出した。

 その後こちらを振り返り。


「管理者情報破損確認、修復不可能、再設定シマス」


 管理者、おそらく主人のことだろうか?

 何らかの原因で破損してしまっているようだ。

 元の管理者が誰だったのかは確認できそうにない。


「名前を教えてクダサイ」

「ロイだ」

「管理者情報再登録シマシタ。ワタシのマスターは、ロイサマデス」


 この傀儡のマスターになってしまった。


「ねえねえ、何が起きたの?」

「おー、動いてる動いてる」


 ルナとレウィシアさんが戻ってきた。


「うわぁー!すごい!すごい!本物の人間にしか見えないよー」


 ルナが驚く。

 ルナの元いた時代では魔法傀儡というものは無かった。

 いや、むしろ誰も操作していないのに動く傀儡は俺も初めて見るが。


「アナタたちの、名前も教えてクダサイ」

「ルナはルナだよ!」

「私はレウィシア」

「ルナサマ、レウィシアサマデスネ。記憶シマシタ」


 ルナとレウィシアのことも記憶したようだ。


「ねぇねぇ、お名前は何って言うの?」

「ワタシに名前はアリマセンガ、型番はアーティフィシャル・ブルーローズ……」


 長ったらしい言葉が続く。


「うーん、長すぎて覚えられないよ……

 そうだ、アーティ、アーティちゃんってのはどうかな?」

「おー覚えやすいし、いいな」

「ルナちゃん、センスいいねー!」

「でしょ!でしょ!」

「畏まりマシタ。ワタシの名前はアーティデス」


 名前はアーティに決まった。


「これからよろしくね!アーティちゃん」

「彼女が何者なのか、解き明かしていくのも面白いかもねぇ」

「そうだな、いろいろと聞きたいこともあるし」


 自立稼働する謎の魔法傀儡のアーティ。

 彼女は一体何者だろうか。

 疑念は尽きないが今は彼女たちが楽しそうにしている。

 一旦様子見を決めた。

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