再会
人間国軍側。
村の襲撃を指示して半刻過ぎ。
次々と兵が帰ってきた。
「こっちの村は無人だったけど、家畜は全滅だった」
「俺たちんところはゲリラ兵がいて仲間が数人やられちまった」
「こっちにもいたけど代わりに家畜はあったぜ」
仲間が数人やられてしまったが、食料の調達はうまくいってそうだ。
五つの班が帰ってきて、残り一つの班というところで。
「隊長!はぁはぁ……こっちは全滅です」
息を切らして走ってきた兵からの報告は、耳を疑うものだった。
「どういうことだ、兵士がいたのか」
「いえ、村民だと思います。ですが、手練れの集まりでした」
報告によると兵にも引けを取らない少女を筆頭に、
強化魔法使い、身体強化の使い手。
決して負けるような相手ではないが、消耗によるハンデで覆されたようだ。
「本日は食事を取ったら休め。明日、その村を全軍で叩く」
「はっ!」
仲間の仇討ちと資源の強奪のため、体調を整え臨むべく、今日は休む。
このまま舐められたままでは終われない。
ヴァント側の戦いは終結した。
獣人国王及び近衛兵の増援により形勢逆転。
獣人側の被害も大きかったが、ヴァント側の人間国軍は殲滅することができた。
奴隷獣人を解放し、深淵の森へ連れ帰って治療を行う。
「なんとか勝てたようだ」
「はぁ……疲れたよー、こんなに戦うの初めてだったし」
アネモネとレウィシアもようやく腰を下ろした。
「アネモネ殿、レウィシア殿。
お二方の助力無くしては、この窮地をしのぎ切れなかったであろう。
深く感謝申し上げる」
王が馬を降り、二人に対して深く頭を下げる。
「いや、当然のことをしたまでだ」
「そうそう、そんな畏まられると恐れ多いよ」
「謙虚な方々だ」
王は頭を上げると、他の獣人兵にも労いの言葉をかけに行った。
これで残る人間国軍は、魔人国国境側とソルヌ側の部隊だけとなった。
人間国軍司令部。
司令官は深く息を吐いた。
人間国側の敗北を悟った。
「何故だ、作戦はうまくいったはずなのに
計算が狂うことが立て続けに起こるんだ」
魔人国国境側は制圧できた。
そこまでは作戦通りだった。
魔人国国境側に援軍に向かわせて、手薄になったところを攻め込む。
ヴァント側も制圧。
その後、両側から挟撃することで獣人国を殲滅する。
そんな作戦だった。
だが、ヴァント側に想定外の手練れが二人、人数不利を覆す活躍。
持ちこたえたところに、王まで参戦してくるなんて。
「更に兵を出せば王の首も取ることはできそうだが」
まだ人間国軍の人員は残されている。
だがそれは人間国の警備として残している分だ。
ここを戦力に回してしまえば、国の防衛が手薄になる。
魔人国や竜人国、人魚の国までもが攻め込んでくる可能性がある。
先に仕掛けたのが人間国である以上、大義名分がある。
「最後の秘策を残すだけか……」
その秘策は正直使いたくはなかった。
敵国とは言え、獣人に恨みがあるわけではない。
作戦の成否にはもう興味は無い。
責任を取らされてよくて投獄。
王の機嫌の悪さを考えれば粛清までありえる。
他国への亡命を視野に動き始めた。
これで人間国側は完全に瓦解した。
翌日。
国軍が村へ向かっている。
コンディションは上々。
遅れを取るようなことにはならないだろう。
村には考えなしに入って奇襲をかけられていた。
ならば、次はこちらから奇襲を仕掛けるべきだ。
「魔法兵、魔法用意!」
魔法兵に魔法を詠唱させる。
「撃て!」
号令で魔法が村へ降り注ぐ。
「突撃!」
その隙を見せ兵を村に出撃させる。
村の中は大混乱だった。
「敵襲だ!」
「村を守れ!」
強化魔法をしようにも先回りされ切り倒される。
躱しきれないほどの魔法が降り注ぎ被弾する。
万全な国軍に対し、奇襲をかけられた村人。
戦力の差は歴然だった。
「くっ、この人数は……」
カトレアも善戦するが、人数差にどんどん窮地に追いやられていく。
二人、三人と倒すがキリがない。
体力を消耗し動きも鈍くなり始める。
気付けばカトレアを除く村人が全滅していた。
「残るはお嬢ちゃん一人だけみたいだな」
「仲間の仇取らせてもらう」
「いやいやお楽しみでしょ」
国軍がカトレアにゆっくり近づいてくる。
ここまでか――
カトレアは死を覚悟した。
覚悟するのはヴァントでの司令官との戦闘以来だ。
あの時はロイがいた。
でも今は一人。
こんなにも心細いのか。
あと一人だけでも倒して相討ちに。
そう考えるが身体が動かない。
「仇を取るのが優先だ」
兵士が剣をこちらに振り上げる。
この剣が下ろされた時、私は死ぬ。
せめて最期にロイに会いたかった。
「ロイ……助けて……」
思わず口から漏らした言葉。
カトレアは目を閉じた。
だが、いつまで経っても、剣がカトレアに届くことは無かった。
「え……?」
恐る恐る目を開く。
そこには、目の前で兵士の剣先を受け止めるロイの姿があった。




