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魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第四章 再会
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策略

王との謁見の後、獣人とともに行動していた。


まず俺は兵士たちの援護として少し離れた場所で待機している。

ヴァント側から見て死角になる場所に潜む。


役割は二つ。

敵兵の接近を知らせつつ、先制攻撃を行うこと。

魔法で味方兵を援護すること。


遠くからこちらの様子を窺っている人間国側の兵を観測している。


一度交戦があったが、想定外だった獣人国側の兵力に加え、

挟み撃ちの形で魔法攻撃を仕掛けたことで敵は一時撤退した。

次の指示を待っていると言ったところだろう。


相手の被害に対してこちらは最小限に抑えられている。


ルナとレウィシアさんは住民の避難や怪我人の救護を行う。

深淵の森を場所として貸し出している。


最初は難色を示すものが多かった。

だが、王が直々に森に足を踏み入れたため進んで入る。


ネモは深淵の森の護衛の担当。

森の状況を知った人間国側の兵士には容赦しないよう伝えてある。


住民たちに怖がられないように彼女たちには《変身魔術》で

獣耳を生やしている。


「うわぁ!この耳もふもふしてる」

「本当ですね、ルナちゃん似合ってますよ」


ルナとレウィシアさんがワイワイ盛り上がっている中


「う、うっ...恥ずかしい」


顔を真っ赤にして恥じらうネモ。


「そんなことないよ!似合ってるよネモちゃん!」


最近ネモちゃん呼びを許されたルナが慌ててフォローする。


「そうですよ。()()()()()可愛いですよ」


レウィシアさんがにやにやしながらからかう。


「シア!お前ってやつは!」


戦争中にも関わらず緊張感が無い。


だが、そのおかげで住民たちも和やかでいられる。


「ルナちゃんヒールうまくなりましたね~」


ルナはレウィシアさんに習ってヒールを使えるようになっていた。

飲み込みが早くて数時間である程度は使えるようになっている。


予想外だったのはネモだ。

ネモもレウィシアさんからヒールを教わり、初めて使ったはずだった。

それなのに、一発でものすごい精度のヒールを使ってみせた。


元々魔力量が少なかったことによる、魔力の効率化を極め続けた結果。

負傷した場所を的確に、必要最低限の範囲に絞ることで効果を最大限に発揮する。


これにはレウィシアさんも驚いていた。


「お姉ちゃんに嫉妬しちゃうなー。

 私より回復魔法の才能あるかもね」


思わずネモも苦笑するしかなかった。



ロイは違和感を感じた。


「兵が撤退し始めた」


後方の兵が疎らに撤退を始めている。

突破が困難と判断し、もう片方に援軍に行くつもりだろう。

そう思ったが、あまりにも撤退が遅い。


「まさか時間稼ぎでは......!?」


よく見ると、敵兵の中に魔法傀儡や獣人奴隷が混じっていた。


「やられた、こっちは囮だ」


急いで総司令官の元へ向かう。


「司令官殿、ヴァント側の兵は囮です。

 おそらくは魔人国側に兵を動かす時間稼ぎをしていたのかと」

「なんだと」


総司令官は頭を抱えた。

魔人国側の国境とヴァント側の兵士の数を比較したとき、ヴァント側の方が戦力が集中していた。

ヴァント側には俺がいることを考慮し、戦力の大半を魔人国側に回していた。


こちらの方が兵の数が優位にも関わらず制圧されたのだ。


「してやられた、相手の方が一枚上手だったか!」

「すいません、気付くのが遅くなってしまって」

「いや、しょうがない。

 誰も兵が急に消えて別のところに現れるなんて思わない」


デコイが混ざっていたとしても、人間国軍の兵数が合わない。

国の全兵力を投入するとも考えづらい。

ヴァント側の兵士が魔人国側に移動したとしか思えない。


一瞬顔を伏せたが、すぐに気持ちを切り替える。


「とりあえず、ロイ殿にも魔人国側に援軍を頼みたい」

「わかりました」


大急ぎで魔人国側に移動する。




人間国側の軍師は高笑いをしていた。


「うまくいったようだな」


兵力の大半をヴァント側に集中させていた。

獣人国側の認識は正しい。

だが、それはあくまで表向きの話だ。


「転移の魔道具を使ってくるなどと思いも寄らぬだろうしな」


対になる魔法陣に移動できる転移の魔道具。

大量の魔力を消費し、詠唱にもかなりの時間を要する。


発動のために時間を稼ぐ必要があった。


そのためヴァントの先鋒隊に突撃を命じた。

ある程度戦闘を行ったら撤退する。


獣人国が雇った傭兵はヴァント側にいることもわかった。

そのためわざと膠着状態とすることで転移の発動まで時間を稼ぎ切った。


後は転移発動前に後方の兵を撤退させたように見せかけたのち、魔人国国境側に転移させた。


「撤退がフェイクと気付いた時にはもう遅い、くくく」


獣人国側の兵士よりも多い兵力で叩けば、制圧は容易。

そのまま混乱に乗じて侵攻を進めれば勝てる。


「さて、獣人国よ。どう動く?」


戦略盤の駒を玩びながら、更なる戦略を立てるのだった。



ヴァント側の人間国軍


「おやおや、あっちに増援に行くみたいだな」


ヴァント側の司令官が獣人国側の動きを察知する。


「こっちが手薄になってしまっているじゃないか」


こちらも兵はほとんど残っていない。

だが、混乱に乗じれば増援を遅らせることもできるかもしれない。

あわよくば、こちら側も制圧できるかもしれない。


「その場凌ぎの戦法じゃいけないってことを身をもって体験してもらうかな」


出兵の準備が整いつつある。


「さて出撃といこうか!」


人間国の策略によって、戦況は大きく傾いた。

急ぎ魔人国側へ向かうロイ。

果たして、この劣勢を覆すことはできるのか。

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