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魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第四章 再会
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謁見

獣人国王の元に一通の手紙が届いた。


「陛下宛てに、人魚の国のアイリス様から親書が届いております」

「うむ、持って参れ」


海巫女殿から何用だろうか。

此度の戦争について、人魚の国にも話が届いたのだろうか。


封を開ける。


手紙が二通入っている。


海巫女殿からの手紙を読む。

副状であることがわかった。


本来の差出人は人間国のロイという男。

人間国は敵対関係にある。

国王もしくはその臣下からの降伏状だろうか。


最初は読まずに処分するつもりだった。

だが、わざわざ人魚の国を経由したところに引っ掛かりを感じた。


そしてロイという名を聞き覚えがある。

五大国会議にて人間国を訪れた時に貼りだされていた手配書。


内偵からの話によると、ソルヌの冒険者。

人間国の変異種ヒドラの討伐、獣人国の娘と共にヴァントで兵器を破壊した男。

人間国に仇名す存在であると同時に獣人国を救った人間である。


功績が功績であるため、にわかに信じがたいところがある。

それでも今回の件も一枚嚙んでいる可能性がある。


「読まぬわけにもいくまい」


手紙に目を通した。


内容としては想像した通り、ソルヌでの国軍の撃退を行った当事者であること。

そして、人間国の侵攻の妨害の依頼を受けており、助力をしたいとのことだった。


要求としては獣人国への入国の許可。


「さて、どうするべきか」


申し出はありがたい。

海巫女経由であるため、おそらく人間国が名を騙った罠である可能性は低い。


だが、人間を我が国に踏み入れさせるのには抵抗がある。

せめてこの目で見極めたい。


手紙には直接話す必要があれば、深淵の森の入口に指定時間に来るようにと書いてある。

深淵の森を指定する意図がわからない。


罠かもしれない。

それでも国民の命のため、布石はすべて打ち尽くす。


「宰相、翌明朝に深淵の森の入口に向かう。兵の準備せよ」

「はっ!」


身の危険は承知の上だ。



ロイは深淵の森へ帰ってきていた。


「お帰りみんな」


一時帰宅ではあるがやはり落ち着く。


「おかえり、お兄ちゃん」

「おかえり、ロイ」

「おかえりなさい」


三人がお出迎えしてくれた。


今の状況と獣人国国王への謁見を申し入れた旨を伝えた。


「えっ、王様が来るの!?」

「国王を呼び出すとは.....」

「なんか、すごいことになってますねー」


あくまで来るかどうかは未知数だとは伝えた。


「それで三人も立ち会って欲しい」


今回の作戦に直接関わらせるつもりはない。


思惑としては今後獣人国とは繋がりを持ちたいと思っている。

そのため、深淵の森の瘴気が既に存在しないこと。

また、獣人国側にも三人のことを知っておいてもらう必要がある。


「えっ、お洋服どうしよう!?」

「あたしも正装は持っていないぞ」

「私もなんですけど!」


男目線で失念していた。


「あー....今回は兵装でお願いしようかな...

 正式な場はちゃんとした服装にしよう、うん」


目をそらしながら答えた。


「わかってるよ、戦争中に正装で顔合わせは無作法だ」


ネモはルナたちに乗っかっただけのようだった。


「でも、ちゃんとした場では頼むな!」


おねだりされてしまったが、良いだろう。


「わーい、ルナも欲しい!」

「私の分ももちろんありますよね?」


ルナもレウィシアも便乗する。


「ああ、もちろん好きな物を買ってあげるよ」


三人には日頃からお世話になりっぱなしだ。

喜んで買ってあげたいと思っている。


「さて、明日早いから、もうご飯にしようか」


約束の時間は明朝になる。

今日はゆっくり休むとしよう。




翌日。


深淵の森には獣人国の国王と近衛兵が訪れていた。


「ようこそおいで下さいました国王陛下」

「うむ、そなたがロイ殿か」


結界越しでの顔合わせとなる。

結界の外とはいえ、瘴気がある認識があれば、近づきたくもない場所だ。

それでもここに来てくれている。


「お初にお目にかかる。

 我は獣人国国王、ヒース・ハウエルだ」


穏やかな声音だった。


ひとまず敵意は感じない。


「まず最初に先日のソルヌの件だが、誠に感謝する」


深々と頭を下げる。


「国王陛下、頭をお上げください」


とても誠実な王だと思った。

人間国とは大きな違いだ。


「そう畏まらなくとも良い。

 肩肘に力が入っていると疲れてしまうだろう」

「陛下、さすがにそれは!」


臣下が慌てて口を出した。


「よいよい、砕けた口調の方が話しやすい」


本来であれば謹むべきだが、王は本気でご所望のようだった。


「わかりました」


王は満足そうに頷くと。


「最初に聞きたいことがいくつかあるが答えて頂けるかな?」

「ええ、大丈夫ですよ」

「まずは何故獣人国へ肩入れする?依頼だとしても何故受ける?」


尤もな質問だ。

獣人国とは縁もゆかりもないのだから。


「いくつか理由はあるんですが、一番の理由は獣人に大切な人がいるからです」


それだけを伝えた。

余計な言葉を添える必要は無いだろう。


カトレア、戦友であり、とても大切な人。

彼女を守るために動いていると言っても過言ではない。


「そうか、それは嬉しいことだ」


王は笑顔になった。

心から嬉しそうな表情だった。


「次に。この深淵の森に諸君らは住んでいるのかな?」


俺の他、後ろのルナ、ネモ、レウィシアの三人にも目を配った。


「うん、ルナの故郷なの」

「ああ、ここに住まわせてもらってる」

「そうです、家も建てました!」


三人とも顔色も悪くなければ、元気そうだ。


「して、瘴気は大丈夫なのか?」


あまり深淵の森の状況は伝えたくない。

だが、ここまで信じてくれる相手に隠し立てをする気にもなれなかった。


「この森の瘴気はすべて浄化されています。

 彼女たちの元気がその証です」

「そうか、それじゃ少しお邪魔してもよいかな?」


王が結界をくぐろうとしている。


「陛下、さすがにそれはおやめください。

 陛下の身に何かあれば……」


臣下が全力で止める。


「よい、我はロイ殿を信じる」


王が深淵の森へ足を踏み入れた。

ゆっくりと息を吸う。


「なるほど、確かに瘴気は感じられん」


王である以上、相応の実力者である。

瘴気の魔力を感じることくらい容易い。


「となると、人間国の出兵を往なしたのも君たちか」


俺は頷いた。


後ろを振り返ると。


ルナは大きく頷き。

ネモはバツの悪そうな表情でそっぽを向いた。

レウィシアはそうみたいですね~と他人事で答える。


「そうか、この森も……」


王が遠い目をして森を見つめた。


「最後にこちらが本題だが、諸君らには獣人国に力を貸して欲しい。

 頼めるかな?」

 

再び深々と頭を下げる。


俺たち四人は目を見合わせた後、一斉に答える。


「「「「もちろん!」」」」


こうして獣人国と深淵の森の同盟が結ばれたのであった。

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