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魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第四章 再会
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それぞれの役目

深淵の森に戻り、事のあらましを伝える。


みんな驚愕した表情で俺を見た。


「本当なのか……?確かに獣人国との仲は悪かった覚えはあるが」

「あの国王なら考えそうなことですね。

 失敗を取り返すために、別の戦果を求めるのは」

「そんな……戦争なんてよくないよ……」


各々思うところはあるようだ。


特にルナは戦争で国を失っている。

目に見えて表情が沈んでしまった。


「依頼として、人間国の侵攻を失敗させることを請け負っている。

 それに獣人国には大切な人がいる……」


カトレアとの日々を思い返す。


大切な人を失いたくない。

二度とあの時のような思いはしたくなかった。


「あたしも手伝う。戦闘なら役に立てる」


“大切な人”という言葉に、ネモの胸が一瞬だけ痛んだ。


だが、大切な誰かを守りたいという気持ち。

それがどれほど強いものか、彼女自身理解していた。


「私も回復なら任せて欲しいです」

「ルナも戦う!」


レウィシアさんとルナも力強く頷く。


気持ちは本当に嬉しかった。


みんな、大切なものを守りたいと思っている。

だからこそ、俺の気持ちも理解してくれている。


だから――


「すまない。獣人国へは俺一人で行く」


その言葉に、三人とも悲しそうな表情を浮かべた。


「どうしてだよ!なんで頼ってくれない!」

「また一人で抱え込もうとしてませんか?」

「ルナは足手まといなの……?」


しまった、と思った。


先に理由を話すべきだった。

一人で行くと言われれば、不安になるに決まっている。


「理由を聞いて欲しい。

 まず、俺たちは獣人国を助けるのが目的だけど、味方じゃない」


俺たちは人間。

そしてルナはエルフ。


獣人国からすれば、侵攻してきた敵国の人間と未知の種族だ。

当然、見つかれば警戒される。


「それに人間国側も、ルナ以外はお尋ね者だ。

 敵として扱われる可能性が高い」


俺はもちろん、謀反を起こしたネモも、失踪したレウィシアさんも指名手配されているはずだ。


「つまり双方が敵の中、第三勢力として動く必要がある。

 だから少人数の方が動きやすいんだ」


戦争は混乱する。


そんな環境で誰かを守りながら戦うのは難しい。

特に経験の浅い者には危険すぎる。


レウィシアさんとルナは納得したように頷いた。


だがネモだけは食い下がる。


「あたしなら足手まといにはならない!」


その言葉に嘘はない。


実際、ネモがいてくれれば戦力としてこれ以上ないほど心強い。


「確かに、ネモがいてくれたら頼もしい。

 正直、一緒に来て欲しいとも思ってる」

「なら、どうして……!」


真っ直ぐネモの目を見て伝える。


「この森を、帰る場所を守って欲しい」

「あっ……」


ネモが目を見開いた。


「人間国はこの森も狙っている。

 もし俺たちが全員いなくなれば、火事場泥棒みたいに踏み込んでくるかもしれない。

 だからネモ、レウィシアさん、ルナにはこの森を守って欲しい。

 俺が帰ってこれる場所を守って欲しいんだ」


最初は、二人を守って欲しいと言おうと思った。


だが、それは違う。


レウィシアさんもルナも、守られるだけの存在じゃない。

二人とも、自分の意思で戦おうとしてくれている。


そんな相手に、()()()()()として扱うのは失礼だと思った。


「……悔しいけどわかった。

 確かに帰る場所は大切だ。

 あたしもこの森が好きだしな」

「私も気に入ってますね」

「ルナの故郷だもん。守らなきゃね!」


全員が頷いてくれた。


「みんな、留守を頼んだ」


そう言って、俺は獣人国へ向かった。



道中、小休憩を挟む。


「さて、どう動くか」


真正面から入ればまず捕まる。


ならば、人間国の侵攻部隊に紛れて潜入するのが現実的だろう。


獣人国側と戦闘になった場合は、人間側を攻撃して混乱に乗じて逃走。

その後、変身魔術で獣人へ姿を変え、獣人国側へ潜り込む。


そこまで考えて、ため息を吐いた。


「……そう単純にいくかな」


相手は国軍。

今まで以上に油断が命取りになる。


そして、もう一つ。


保留にしていた《魔法創造》。

ようやく方向性が決まった。


「《魔法創造》!」


新たに生み出した魔法は――


《瞬間移動》


一瞬で目的地へ移動できる魔法。


制約:

『魔力のマーキングがある人物の元にしか飛べない』

『対象が生命の危機に瀕していなければ発動できない』


シンプルながら強力な魔法だ。

それ故に、制約のよる不自由さが群を抜いている。


移動手段として気軽には使えない。

戦闘への転用も難しい。


あくまで緊急時。

大切な人を守るための魔法だ。


マーキングの条件は、おそらく俺の魔力を持っていること。


なら、深淵の森で誰かに危険が迫れば駆け付けられる。


問題は()()()()()の判定基準だ。

どこまでが対象になるのかはまだわからない。


それでも。


大切な人の元へ駆け付けられる。


今の俺には、それだけで十分だった。


「これで懸念材料は一つ減ったな」


休憩を終え、再び獣人国へ向けて歩き出した。

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