居場所
初めて受けた依頼は薬草採取だった。
討伐依頼を好む冒険者たちからは不人気な雑用作業。
それでも俺にとっては夢のような仕事だった。
ゴミを漁らなくても食べていける。
それだけで十分だった。
食べれる茸の選別。
湿った落ち葉での火起こし。
生活に役立つ知識も得られた。
安全な場所とはいえ、魔物がいる場所。
たまに出てきた魔物に魔法を試すのも楽しかった。
半月ほど簡単な依頼をこなした頃、ギルドランクがFへ昇格した。
「お疲れ様でした、ロイくん」
アンジェさんから報酬袋を受け取る。
ここのギルドは生活費以外の報酬は給料日に支払われる。
大金ではない。
だが俺にとっては、生まれて初めて自分で稼いだ金だった。
その足で本屋へ向かい、一番安い魔導書を買った。
覚えられたのは初級魔法だけ。
《水球》
《風起こし》
《土壁》
それでも嬉しかった。
森で何度も魔法を撃って試す。
すると偶然、《水球》と《土壁》を重ねた場所が泥沼になっていた。
「……魔法って、組み合わせられるのか」
新しい発見に胸が躍る。
その帰り道、ふと思い出した。
《魔法創造》が再び使えるようになっていたことを。
「何を作るべきかな……」
だが魔法の知識はまだ浅い。
この世界に何が存在して、何が存在しないのか。
制約を考えれば、あまり非常識なものは作れないだろう。
必要な時に使えなければ意味がない。
ひとまず保留にすることにした。
その後、Fランクになったことでパーティ依頼にも参加できるようになった。
組む相手がいなかった俺に声をかけてくれたのは、アンジェさんだった。
「このお二方なら、ロイくんを任せられます」
紹介されたのはDランクの冒険者の二人。
「お前が新入りのロイか、よろしく頼むぜ」
強面だが面倒見の良い戦士、アインさん。
「あなたが全属性の……」
そしてクールぶっているのに妙に抜けている弓士、ゲイルさん。
最初は不安だった。
また拒絶されるんじゃないかと。
だが――。
「おう新人、そんな固くなるな」
「そのうち慣れる」
二人は驚くほど普通に接してくれた。
一緒に依頼をこなし、ダンジョンへ潜り、戦い方を教わった。
魔力による《身体強化》。
弓に属性付与する《魔力付与》。
魔物ごとの弱点。
そして仲間との連携。
初めて知ることばかりだった。
力だけがすべてじゃない。
知恵があれば強敵にも勝てる。
弱い者なりの戦い方。
俺にとって、この上ない財産になるだろう。
二人には感謝しても、しきれない。
能力が低い俺が生き残るためには、頭を使うしかない。
小さな積み重ねを怠らないようにしなければ。
「この程度の魔物なら、あなたでもいけるでしょう」
「ロイ!頼むぞ!」
俺も魔法で援護すると、二人は目を丸くした。
「全属性適性の話は、本当だったのですね……」
「お前、杖なしで撃てるのか!?」
人間が魔法を撃つ時は、杖や剣など、何かを媒体として使うのが基本らしい。
「負けていられませんね……」
「こりゃ将来大物になるぞ!」
二人に褒められたことが本当に嬉しくて、思わず泣いてしまった。
「精神的にはまだ未熟ですね……」
「おいおい、大丈夫か、怖がらせちゃったか?」
「すいません、嬉しくてつい……」
一人前にはまだまだ程遠いようだ。
気づけばギルドにも馴染み始めていた。
アインさん、ゲイルさん以外とも打ち解け始めた。
「かーっ!今日の依頼失敗しちゃったよ~」
「不真面目ねぇ。アンタもロイ君を見習ったらどうだい?」
「いえいえ、俺はそんな、まだまだですよ」
世間話をして、
一緒に飯を食べて、
「また明日な」と言われる。
そんな当たり前のことが、俺には少し眩しかった。




