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魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第十三章 黒幕
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盲巫女になる覚悟

 正気に戻ったプリムさんは溢れんばかりの思いを盲巫女へとぶつける。

 盲巫女に変身した俺はただひたすらに申し訳ない顔をすることしかできなかった。


「いろいろ言いたいことはあるけど。

 おばあ様には育ててもらった恩があるし。

 おばあ様なりの優しさだってこともわかる」


 気持ちを吐き出せてすっきりしたのか、プリムさんの表情が柔らかくなった。

 口調も優しくなる。


「それに私も知ろうとしなかった。

 優しさに甘えてた。

 おばあ様の葛藤や苦悩に気づくこともできなかった」


 今度は悔しそうな表情になる。

 自分自身に対しても思うことがあるのだろう。

 他責で終わらせず、自責の念を感じている。


「おばあ様の葛藤や苦悩を知りたい。

 そしてリリーネ家の人間として代々受け継がれた物を背負いたい。

 だから私は盲巫女になります!」


 力強い口調。

 目には意志が感じられた。

 海妖女の歌声の影響か、口に出すことで少しずつ心に整理がつけられたのかはわからない。

 完全に立ち直ったわけではないだろう。

 それでもプリムさんは前を向いていた。


「やったのう」

「私が間違っていたのかもしれないな」


 先々代姫巫女が胸を撫で下ろす。

 俺が変身した盲巫女も晴れやかな表情になった。

 これで目的は達成した。


「約束だったな《魔法解除(マジックキャンセル)》!」


 魔法の効果を打ち消すことができる、先々代姫巫女の封魔法。

 俺の身体が盲巫女から元の姿へと戻っていく。

 俺が事前に頼んでおいたのだ。

 想定通り俺自身で変身魔術が解除できなかった。

 保険をかけておいて助かった。


「余……俺……ロイだ、俺はロイだ」


 自我はなんとか保たれていた。

 多少怪しいところもあるが、時間で解決する問題だろう。

 だが、二度と実在の人物には変身しないと誓った。


「お主ら、この空間も、もってあと三分じゃ。

 急いでくれ」

「三分……!?本当か!?」


 時間はもう限られていた。

 俺はプリムさんの方を向く。


「ご迷惑をおかけしましたロイさん。

 私は戦います。

 おばあ様への敵討ち。

 そして、姉様の姿を騙る不届きものを懲らしめるため。

 どうか力を貸していただけないでしょうか」

「それはもちろん。だけど……」


 この期に及んで俺は言い淀む。

 力を貸し、プリムさんを盲巫女にすること。

 つまりは――


「優しくしてくださいね……?」


 プリムさんが恥じらいの表情を見せる。

 だが、時間は限られてしまっている。

 空間が消える前に終わらなければならない。

 そうなれば優しく労わることは難しいだろう。

 愛も何もないただ交わるだけの行為。

 それはお互い不幸になってしまう。


「俺は……」


 その時プリムさんの手が震えていることに気づいた。

 やはり怖いのだろう。

 決意を胸にしたとはいえ、そう簡単に割り切れるものではない。

 そこで俺は最後の手段に打って出る。


「プリムさん」

「あっ……」


 プリムさんの小さな身体を抱き締める。

 壊れそうなくらい華奢だった。

 プリムさんの震えが多少は収まった気がする。


「プリムさん。

 強く思い浮かべて欲しい。

 盲巫女様への思い。

 アンジェさんへの思い。

 そして、盲巫女になりたい気持ちを」

「おばあ様……姉様……」


 俺も同じく強く思う。

 変身魔術の影響か、盲巫女に親しみを感じている。

 そして、アンジェさん。

 俺が今ここにいて、大切な人たちに囲まれているのは彼女のおかげだ。

 その彼女の尊厳を傷つける者は絶対に許せない。

 そのためなら盲巫女になる覚悟だってある。

 その瞬間、俺たちの中にあった想いが重なった。


「なんだろう……力がみなぎってくる」

「うまくいったみたいだ」


 俺の中の聖の魔力が溢れ出すのを感じる。

 無意識に俺とプリムさんは口を開いていた。


「「《合体(エンゲージ)》」」


 二人の周りで魔力の奔流が起こる。


「おお、こんな方法があるんじゃな」


 先々代姫巫女が感心したような声を上げる。

 魔力に反応して魔法陣が光り輝く。

 盲巫女の儀式フェイト・オーグメントが発動した。

 聖の魔力が活性化し、身体に注ぎ込まれていく。

 内側に光が集まり、外側が闇へ覆われていく。

 しばらくすると魔力の奔流が収まった。

 そして、そこには一人の少女が立っていた。


-----------------------------------------------------------


 そしてその頃。


 正体不明の二人組と対峙してイマス。

 その二人はどこかで見覚えのあるような動きデス。

 ですが、認識が歪められて思い出せないデス。


「ルナサマ、どうなさいマス?」

「あの人たちはルナたちより強いと思う。

 だから距離を詰められるわけにはいかないね」


 ルナサマは相手に心当たりがないようデス。

 ワタシは魔法傀儡なので、対人用の認識改変魔法は効かないデス。

 ですが、ワタシも認識改変を受けているということは、空間に対して改変魔法がかかっている可能性が考えられマス。


「あ、あの人短剣を置いたね」


 ルナサマの声でその人物に目を向けマシタ。

 確かに短剣を床に置いてイマス。

 戦意がないことを伝えているのでショウカ。


「どうでしょう、ワタシたちも戦意がないことを伝えマス?」

「ルナたちはともかく、相手は速いから、隙を見せたらやられちゃうよ」


 ルナサマの言うこともその通りデス。

 ワタシたちと違い、相手は俊敏デス。

 それであれば構えを解くことはできないデス。


「あ、あっちの人動き出したよ」


 リンサマが反応した先を見ると、もう一人の方がこちらに向かってきまシタ。

 だけど何かがおかしいデス。

 こちらに向かってきているにしては距離があまり縮まっていないように見えマス。

 これはこちらの視線を向けさせるための陽動デス。

 つまり本命は――


「ルナサマ!リンサマ!退いてくださいデス!」

「えっ!」

「はーい!」


 ルナサマとリンサマが退きマシタ。

 これならワタシが間に入ることができマス。


「……!?」

「二人のことはワタシが守りマス!」


 そしてワタシは収納から盾を取り出し、敵の手刀を受け止めマス。

 ルナサマとリンサマはもう一人に向けて魔法を放ちマシタ。


「……!」


 焦ったように目の前の敵は何かを喋っているようですが、声が聞こえマセン。

 あちらの声はワタシたちには届かないようデス。


「あなたたちは何者デスカ?」


 やはり反応がありマセン。

 ワタシたちの声もあちらには届いていないようデス。

 すると、口の動きをゆっくりにして喋りかけてきマシタ。

 至近距離のため口元の動きが見えマス。


『読唇術は使えますか?』


 あちらもお互いに声が届いていないことに気づいたのか、読唇術で伝えてきマシタ。

 これならばコミュニケーションが取れそうデス。


『大丈夫デス』


 こちらも口の動きをゆっくりにして喋りマス。

 するとあちらの口元が緩んだように感じマシタ。


『先ほどの言葉を読唇術で言い直して欲しい』


 あちらは読唇術で聞き返してきまシタ。

 もう一度ゆっくりと伝えマス。


『あなたたちは何者デスカ?』

『私はカトレア。もう一人はレウィシア』


 ワタシの中ですべてが一本に繋がりマシタ。

 どこかで見たような動きはカトレアサマのものだったのデス。

 対面の人物をカトレアサマだと認識した瞬間、その顔が鮮明になってきマシタ。

 確かに目の前にいるのはカトレアサマデシタ。

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