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魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第十三章 黒幕
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再起

 圧倒的な力と、重大な情報。

 その両方に押しつぶされていた。


「本当に何も知らないんだね。

 それだけ甘やかされて育ったってことだ。

 もはや私の話を聞けるような状況でもないし。

 私の養分となって逝くがいい」


 忌の魔力でできた、触手のようなものが伸びてくる。

 俺もプリムさんも抵抗できない。

 このままあいつの養分にされる。

 そう思った時。


「何を諦めてるんだ!」


 俺の手の甲の紋章から先々代姫巫女が飛び出してきた。


「なんだお前は!」

「先々代姫巫女!」


 その場の全員が虚を突かれる。


「《空間封印術》!」


 空間がよじれて俺とプリムさんが吸い込まれる。


「させるか!」


 突然のことで反応が遅れた。

 黒幕が触手を伸ばすが間に合わない。

 触手は俺たちに届くことはなかった。


「盲巫女の目でも姿が捉えられないだと……。

 どこへいった!」


 黒幕の声は虚空へと響き渡った。


 俺たちは異空間に吐き出された。

 ひたすらに折り重なった紙でできた空間であった。


「お主らを空間ごと一時的に封印した。

 盲巫女と言えどわらわの封印術に干渉はできんだろう」


 俺たちは先々代姫巫女に助けられたのだ。


「助かっ……」

「たわけが!お説教じゃ、何もせんうちから諦めおって」


 俺が言い切るより先に先々代姫巫女が口を挟む。


「らしくないぞ。

 足掻いて、泥臭くなりながら、勝利を掴むのがお主じゃないのか。

 抵抗しなければ、仲間の危険が迫るというのに、端から諦めおって」


 確かにその通りだった。

 この場所の手前にはシアとカトレア。

 それにルナとアーティとリンちゃんがいる。

 地上にはネモだっているのだ。


「そうだ……何が大切な人を守るだなんて、どの口が言っているんだ」


 俺は自分の頬を思い切り叩く。

 アンジェさんの偽物を騙った怒りと、圧倒的な力への絶望で、頭がどうかしていたようだ。

 命に代えてもみんなを守る。

 それが俺の生きる理由じゃなかったのか。


「ありがとう、先々代姫巫女。

 おかげで目が覚めたよ」

「そうじゃ、その意気じゃ」


 俺の目を見て、満足げに頷く。


「お主は忌の魔力に対して本能的に苦手意識を感じてしまっていたのだろうが、あんなもの厄災の負の感情に比べれば可愛いものじゃ。

 それに打ち勝ったお主が倒せぬ相手ではない」

「負の魔力に比べれば可愛いものって……」


 にわかに信じられなかった。

 だが、先々代姫巫女の言うことが誤っているとは思えなかった。

 俺は穢の魔力の上位という言葉に惑わされていたのだ。


「とはいえ生身のお主ではどうにもできまい。

 厄災の時も周囲からの正の感情を分け与えられた上でも勝利だからな」

「じゃあどうすればいいんだ?」


 先々代姫巫女は精気を失ったプリムさんに目を向ける。

 プリムさんはその視線に気づく様子はなかった。


「盲巫女の儀式を行って、盲巫女の力を得れば良い。

 あんなまがい物の力が、本物の盲巫女の力に勝てるわけがないからな」

「でもそうなると両目が……」


 盲巫女になると両目の視力を失う。

 簡単に決断ができるものではない。

 それに、盲巫女の儀式について何も知らなかった。


「そこの娘は姫巫女の血族だろう?

 両目失う覚悟くらいしておらんのか?」

「プリムさんは聖の魔力をもっていないです」


 プリムさんは聖の魔力を宿していない。

 だからこそ徹底的に盲巫女から切り離されて生きてきていたのだ。


「お主が持っておろう。

 あの娘を抱けば良いではないか。

 粘膜接触でお主の魔力があの娘の中に入れば、条件は満たせる」

「だ、抱くだって!?」


 つい声が裏返ってしまった。

 理屈の上では条件を満たせることは理解できる。

 だが、俺はその手の行為に対しての耐性が低かった。


「そ、そんなことできるわけないだろ。

 男の俺と違って、気軽にしていいことじゃ……。

 そ、その……キスくらいなら……」

「何を腑抜けたことを言っておる。

 接吻程度の魔力じゃ条件は満たせんわ」


 退路が完全に断たれてしまった。

 プリムさんを抱くか、俺が盲巫女になるか、その二択しかない。

 苦渋の決断を突き付けられたのだった。


-----------------------------------------------------------


 その頃、シアとカトレアは。


「誰がいるんだろうね」

「もしかして、ネモが起きたのかもしれないな」


 先ほど隣から音が聞こえた。

 その音の方へと二人で向かっている。


「ようやく戻ってきたね、分かれ道」

「右側はどうなっているんだろうか」


 どんどん道を進む。

 道中は左の道とあまり変わらなかった。

 特に苦戦することもなく進んで行くと光が見えた。


「ここで戦っていたのね」

「こっちでも阿修羅像がいたのだろうか」


 急いで加勢しなければ。

 私たちは阿修羅像の倒し方についての知見がある。

 手遅れになる前に合流を目指す。

 そして、広い場所へと出た。


「さっきの場所と同じ部屋みたいね」

「だが、地面に穴がたくさん開いているな」


 阿修羅像と戦った部屋と似ていた。

 だが、ここは何故か地面に魔法の跡が残っていた。

 それくらい激しい戦闘があったのだろう。

 そしてその部屋には。


「ルナちゃん!リンちゃん!アーティちゃん!」

「ルナちゃんたちか!」


 その部屋で戦っていたのはルナちゃんたちみたいだ。

 それに石像はどこにも見つからない。

 もしかするとルナちゃんたちだけで倒したのだろうか。


「もしかしてルナちゃんたちで石像を倒したの?」

「すごいな!成長したんだな」


 だが、ルナちゃんたちは私たちを見ても反応がなかった。

 そればかりか表情からは戦意が見て取れる。


「《大火球(ハイフレア)》!」

「《大水球(ハイアクア)》!」


 ルナちゃんとリンちゃんの二人が詠唱を始める。

 そして私たち目掛けて魔法を放ってきた。


「ルナちゃん!それは笑えない冗談だよ!」

「レウィシアさん!避けて!」


 カトレアちゃんに引っ張られる。

 私がいた場所に魔法が着弾する。


「どうしたの!何が起きてるの!」


 私は声を荒げてしまう。

 目の前で起きていることを理解できていなかった。


「多分だけど、私たちを敵として認識している。

 認識改変魔法が仕掛けられているのだろう」

「そんな!でもルナちゃんたちに攻撃なんてできないよ……」


 ルナちゃんたちに敵として認識されてしまった。

 絶体絶命の状況下、果たしてこの状況をなんとかできるのだろうか。

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