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魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第十二章 宗教戦争
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忌と聖

 目の前の阿修羅像に手をこまねいていた。

 阿修羅像の形をしたゴーレム。

 傷をつければたちまち修復し、魔力が増加する。

 迂闊に手を出せないでいる。


「このままじゃ、私たちが先に消耗しきっちゃうよ」


 シアの言う通り、ジリ貧になっている。

 何か対策を考えないといけない。

 思考を巡らせていたその時。


「あっ!しまっ……」


 シアが疲労からか体勢を崩してしまった。

 このままでは危ない。


「《身体強化》!」


 俺は腕に身体強化を施し、シアを庇うように腕で防御する。

 腕の骨が軋む。

 身体強化の上からでも腕をへし折られそうだ。

 離脱しようと踏ん張りを解いたら確実に折れる。


「ロイ!」


 カトレアが阿修羅像の腕を切り落とす。

 強化されてしまうが、背に腹は代えられない。

 その勢いで離脱することができた。


「すまない、カトレア。

 助かった」

「ロイくん!ごめんね。

 私のせいで」


 シアが俺の腕にヒールを当てる。

 痛みは引いてきた。

 ただ、骨の修復には時間がかかりそうだ。

 阿修羅像は快復まで待ってくれるはずもなく、修復と同時にさらに攻撃を仕掛けてくる。


「ロイ!くるよ」

「ちっ!修復が速すぎる」

「あっ!まだ腕が」


 俺とカトレアはその場から飛び退く。

 幸いシアは死角になっていたようで攻撃対象から外れていた。

 シアにヒールをかけてもらっている最中だったが、構わずに俺に攻撃をしてきた。

 まだ治りきっていないが、回避するしかなかった。


「えっ?」


 その時、シアが驚いたような声を上げる。

 阿修羅像の腕にヒールをしてしまったようだった。

 その腕は砂になって崩れ去る。

 そして、そのまま修復が始まらなかった。


「どういうこと?」

「ヒールでダメージなんて聞いたこともないぞ」


 シアとカトレアが頭を抱える。

 その時、ふとあることを思い出した。

 この魔力が禍々しかったことを。

 俺たちにとって癒しとなるヒールは逆に毒になるということか。


「一本腕を失っただけじゃ、全然止まらないみたいだね」


 阿修羅像は変わらず俺たちを襲う。

 ヒールを当てようにもそんな隙はなかった。

 近付ければやられるのが目に見えている。


「物は試しだ!《堅土壁(ハードウォール)》」


 詠唱すると土壁が展開される。

 これは攻撃ではない。

 防御の魔法である。

 これなら傷つけて修復されることもない。


「ああ、土壁が破壊されてしまった」


 土壁は簡単に破壊されてしまった。

 カトレアは嘆くが、想定通りだった。

 それでも阿修羅像の攻撃を二発くらいは耐えてくれる。

 このまま土壁を展開させ続ければ、魔力切れにもっていけるかもしれない。


「《堅土壁(ハードウォール)》!」


 再び土壁を展開しようとしたその時だった。


「えっ!?」

「阿修羅像が加速した!」


 シアとカトレアが声を上げる。

 阿修羅像が少し加速したのだった。

 その影響で土壁の展開が遅れる。


「くそ……さすがに対策してくるか」


 このままでは、土壁が阿修羅像の後ろに展開してしまう。

 そうなれば何の役にも立たない。

 そればかりか、詠唱による硬直で回避が間に合わない。

 俺は再度防御行動に移ろうとしたその時。


「なっ!」


 展開途中の土壁に足を取られて阿修羅像が転倒する。

 どうやら加速が少し足りなかったようだ。


「今だシア!やるぞ」

「うん!」


 阿修羅像が起き上がる前に

 二人でヒールをかける。

 身体がどんどん崩れていく。

 そして最終的には完全に砂になった。


「やった……」

「ロイくんやったね」

「倒せた……」


 阿修羅像が消えたと同時に、道が現れる。

 ちゃんと、元来た道と、先へ続く道の両方ある。

 やはり空間認識を阻害していたのだ。

 シアにヒールを再度かけてもらい、腕が完全に快復した。


「さあ先へ進もう」


 そう言って俺は先へ続く道に足を踏み入れた瞬間。


「えっ!」

「ロイ!」


 シアとカトレアが声を上げる。

 振り向くと、シアとカトレアの姿はそこにはなかった。

 そして、先ほどあった道がなくなっていた。


「シア!カトレア!聞こえるか!」

「聞こえるよ。

 岩が落ちてきて道が塞がれちゃった」

「破壊しようにも、大きくて時間がかかりそうだ」


 俺たちは分断されてしまった。

 この先は一人で進むしかなさそうだ。


「ロイくん!先に行ってて」

「すぐに私たちも追いつく」

「わかった、二人とも気を付けて」


 待つ選択肢も無いわけじゃなかったが、胸騒ぎがする。

 このまま急がないといけない気がする。

 俺は足早に先へと進んだ。


-----------------------------------------------------------


 その頃、反対側の道では。


「いい?ルナの知っているゴーレムは聖の魔力で動いているの。

 聖の魔力は光があるところで強くなって、暗闇では弱くなるの」


 エルフの国で運用していたゴーレムと同じ物と仮定して話す。

 感じる魔力を見ても、その推測に間違いなさそうだった。


「そうなのデスネ」

「そうなんだー」


 前提条件をまず伝えた。

 イメージがしやすいようにするのが大事だとお兄ちゃんから教わっている。


「次にゴーレムは壊しても魔力で修復するの。

 それに壊せば壊すだけ強くなっちゃうの」

「それでしたらどう立ち回れば良いのデス?」

「壊れても直るんだーすごいー」


 アーティちゃんはやはり疑問に持ってくれた。

 こうなると話は早くなる。


「ゴーレムの足場に大きな穴を作って、そこに落とすの。

 そうしたら穴を埋めて真っ暗にするんだよ」


 お兄ちゃんが過去に使っていた作戦だ。

 ヒドラと戦った時の作戦を流用している。

 ルナも見て学んでいる。


「なるほど、それでは穴を掘って、そこに誘導するのデスネ」

「わーい穴掘る!」


 アーティちゃんが答えにたどり着いてくれた。

 それにリンちゃんも乗り気のようだった。


「ルナとリンちゃんで穴を開けよう。

 魔法で地面を攻撃するんだよ!」

「うん!ママと一緒に頑張るよ!」

「アーティちゃんは穴を開けるまで何とかルナたちを守って!

 大変かもしれないけど、アーティちゃんを信じてるよ」

「任せて欲しいデス。

 ルナサマとリンサマはワタシが守りマス」


 作戦は決まった。

 後はうまくいくように立ち回るだけ。

 ルナの初めての指揮する作戦。

 緊張しているが、成功する自信がルナにはあった。

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