阿修羅像
カトレアに案内された場所へやってきた。
特にこれといって普通の裏庭だった。
しっかりと手入れがされており、階段が隠されているとは思えない。
だが、認識改変魔法で隠蔽されている情報を得た今、逆に怪しく見えてくる。
「この辺を触ってみて」
カトレアに促されて手を動かしてみる。
すると目で見た情報では絶対にありえない感触がした。
「本当だ、取っ手のような鉄の感触がある」
掴んで引っ張ってみるがびくともしない。
おそらく何かで固定されている。
「誰か認識改変魔法を解除できる人はいないですか?」
返事はなかった。
もしいれば信者たちの認識改変魔法も解除できていたはずだ。
なんとか開けられないか模索していたその時。
「私ができる」
人間国国王が名乗りを挙げた。
国王は確かに隠蔽魔術を得意としていた。
解除もできるのだろう。
どうやら抵抗しない相手や物であればできるようだった。
信者には使えなかったが、物言わぬ空間なら問題なさそうだ。
「《解》!」
芝生周辺の空間が捻じ曲がっていく。
しばらくすると鉄でできた蓋が現れた。
杭で蓋が固定されている。
「さすがです陛下」
「どうりで開かなかったわけだ」
杭を抜くと、蓋が開けられるようになった。
蓋を開けると地下へ続く階段があった。
「ロイ殿。
我々はまだ幻術使いを見つけられていない。
申し訳ないが、地下はお願いできないか。
もし地下に幻術使いがいたら捕まえて連れてきて欲しい」
「わかりました」
国王率いる国軍の兵士たちは幻術使いの探索へと戻っていく。
ここからは俺たちだけで行くことになる。
「そういえばカトレアちゃん。
お姉ちゃんはどうしたの?」
そういえば一緒にいたはずのネモの姿が見えない。
先にここに来ているものだとばかり思っていた。
「ネモは親友との戦いで力尽きて寝てたから、そのままにしておいた」
「親友……?もしかしてオウカちゃんのことかな」
ネモが力尽きるほどの相手がいるなんて。
とても信じられなかった。
「知り合いか?」
「えっと……騎士学校の同期だった子だったかな?
負傷を機に騎士を辞めて、騎士学校の近くの食堂で働いてたはず」
話を聞いて心当たりがあった。
ネモと買い物に行った日に連れて行ってくれた食堂にいた子だ。
どうして戦うことになっていたのだろうか。
「まあそれなら合流は無理そうだな。
三人で行こう」
俺たちは階段を降りていく。
地下は真っ暗な通路になっていた。
指に小さな火球を作る。
それを灯りに奥へと進む。
「それにしても修道院の地下にこんな場所が」
かなり手の込んだ造りになっている。
明らかに何か企んでいるのは明白だった。
しばらく歩いていると、道が二手に分かれていた。
こういう時にどちらへ行けばいいかわからなかった。
とりあえず同じ道へ戻ってきた時に気づけるように、入口に目印をつけておいた。
「どうするロイ?」
「わからないなあ。
シアはわかるか?」
「わかんない」
とにかく勘を頼りに進むしかない。
多数決を取ったところ、左が多かったため、左へ進むことにした。
「これでよかったのかな?」
「まあ、なるようになると思うしかない」
「仕方ない」
奥へと進む。
すると広い場所に出た。
「この部屋は?」
周囲を見渡すが、真ん中にポツンと阿修羅像があるのみで、行き止まりのようだった。
こっちの道は外れのようだ。
「ハズレみたいね、引き返そうか」
「そうだな。
なんで阿修羅像がここにあるのかわからないけど」
「悪趣味だねぇ……ってええっ!?」
突然シアが声を上げた。
指を差す方を見ると。
「来た道がなくなってる……」
「私たち閉じ込められたのか……?」
先ほど来た道が跡形もなく消えてしまっていた。
この部屋に閉じ込められた状態だ。
元々道があった場所の壁に触れる。
ちゃんと実体がある。
通り抜けることはできそうにもない。
「認識改変魔法……」
罠に嵌められた。
この部屋に入った瞬間、認識改変魔法にかけられたのだ。
部屋の入口に気づかなくなる程度であればかけられたことに気づけない可能性が高い。
「誰かいるんだろ?出て来いよ」
そうであれば認識改変魔法をかけた相手がいるはずだ。
だが、返事はなかった。
「阿修羅像が!」
カトレアが何かに気づいたように声を上げる。
阿修羅像の方に目を向けると、阿修羅像が台座から立ち上がる。
ただの石像だと思われていたものが、なんと動き出したのだ。
そしてそのまま手を振り上げる。
「まずい!避けろ!」
振り上げられた手が振り下ろされる。
振り下ろされた先に地面に大きな穴が空いている。
「なんで阿修羅像が動いているのよ!」
「私たちを狙っているようだ」
「これはまさかゴーレムなのか……」
謎の部屋に閉じ込められた俺たちに襲い掛かる正体不明のゴーレム。
果たして無事先へ進むことはできるのだろうか。
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リンちゃんに運んでもらって新修道院についた。
「あれ?戦い終わってる?」
戦っている人は誰もいなかった。
負傷者の救護か、祈りを捧げている人。
そして何かを探している兵士の方たちしかいない。
「そこの兵士の方。
ロイサマを見かけなかったデスカ?」
「ああ、彼らなら裏庭の隠し扉から地下へ降りていったよ」
「ありがとう兵士さん」
「ありがとう!」
「どういたしましてお嬢ちゃんたち」
お兄ちゃんたちは隠し扉を見つけていた。
プリムちゃんは盲巫女様を探しているようだった。
「あの!すみません。
盲巫女様を見ませんでしたか?」
「いや見てないな。
この一帯は我々が探索しているが、それらしき人はいなかったよ。
もしかしたら、地下にいるのかもしれないな」
「そうですか……ありがとうございました」
プリムちゃんはしょんぼりした顔で戻ってきた。
どうやら見つからないみたい。
でも手がかりはあったようだ。
「地下にいるかもしれないって」
「地下へ続く階段なら裏庭にあるみたい」
地下について話すと、プリムちゃんは血相を変えて裏庭に向かって走り出した。
「あっ待って!」
ルナとアーティちゃんとリンちゃんもそれに続く。
焦る気持ちは痛いほど良くわかる。
盲巫女様が無事であることを祈りばかりだった。




