二体のゴーレム
古い方の修道院。
つい感傷に浸ってしまったが、ようやく落ち着いてきた。
「ご迷惑をおかけしました」
「いえいえ、大丈夫ですよ。
いないと思っていた自分の血の繋がりがある人が見つかったら、誰でも感慨深くなりますよ」
プリムちゃんは優しく慰めてくれた。
「私の母も父も姉も兄も先立ってしまって。
身内は盲巫女――おばあさまだけですから」
プリムさんも悲しい思いをしてきたのだろう。
それでもルナのことを気遣ってくれていた。
「ルナも寂しかったけど!みんながいてくれるもん。
みんながルナの家族なんだよ」
「それは素敵ですね~」
あまり悲しい顔ばかりしちゃダメだと思った。
プリムちゃんにも悲しいことを思い出させてしまうから。
「そういえばルナちゃんたちはどうしてここに来たの?」
しまった、説明していなかった。
勝手に押し寄せて、話を聞かせてもらって、慰めてもらって。
随分と良くしてもらってしまった。
「実は向こうの修道院で争いが始まっちゃって。
なんか隠し扉?を探して欲しいって頼まれて探してたの」
「そうなのデス。
探しても見つからず、ワタシたちは疲れてしまいマシタ。
休もうにも信者の方々に襲われそうになってしまったので、こちらに逃げて来たのデス」
詳しいことはわからなかったので、知っている限りのことを伝える。
「そんな!向こうの修道院にはおばあさまが!」
ルナたちの言葉を聞いて、プリムちゃんの顔が青ざめる。
どうやらプリムちゃんのおばあちゃんも向こうにいたみたいだった。
無事かどうか気が気ではないのだろう。
「プリムちゃん!向こうの修道院に行きましょう!
リンちゃん!プリムちゃんも乗せてあげたいんだけどいいかな?」
「いいよ!プリムちゃんいい人だもん」
「ありがとうございます!よろしくお願いします!」
「ワタシが安全を確保シマス!」
リンちゃんの背中に乗って空へと飛び立つ。
こうして四人で再び向こうの修道院へと向かうのだった。
-----------------------------------------------------------
その頃新修道院。
カトレアが俺の顔を見て唖然とした表情で立ち尽くしていた。
無理もなかった。
今俺は女の姿をしているからだ。
「ロイ……実は女の子だったのか……。
そんな……私の恋が……」
カトレアが妙なショックの受け方をしている。
そろそろ誤解を解かなければ。
海妖女の歌声はもう使う必要がない。
女の姿でいる必要はなかった。
「《変身魔術・解》」
俺は元の姿へと戻った。
変身魔術の制約か、自分の身体に若干の違和感を感じる。
「カトレア。
俺は正真正銘男だ。
変身魔術で姿を変えていたんだ」
変身魔術のことや、海妖女の歌声のことについて説明する。
最初のうちはカトレアは渋い表情を見せていたが、理解してくれたようだった。
「そんな魔法あるのか。
じゃあロイは獣人になれたりするのか?」
カトレアが食い気味に聞いてくる。
まあ短時間なら問題ないだろう。
「《変身魔術》」
人間の耳が消えて、頭の上にふさふさの耳が生える。
それにしっぽも生やした。
カトレアに合わせた狼にしてみた。
「あ……ああ……」
カトレアがうずくまって悶え始めた。
周囲の兵士たちも引いた表情を浮かべている。
「はい!そこまで。
みんなの休憩も終わったし、そろそろ隠し扉を探さないと」
シアが咳払いをして、空気を変える。
カトレアは顔を真っ赤にしていた。
「それなんだが、手がかりが見つかった」
カトレアの表情が真剣なものに切り替わる。
どうやら何か見つけたらしい。
「さすがカトレアだ!
詳細教えてくれ」
「ああ、修道院の裏手の芝生があるんだが……」
どうやら芝生に空間認識改変魔法を使って、隠し扉を隠蔽しているようだった。
おそらくカトレアの推測に間違いないだろう。
「よし!早速確認しに行こう!
カトレア、案内頼む」
「わかった!」
俺とカトレア、シア、そして動ける兵士数人で、芝生のある場所へと向かった。
-----------------------------------------------------------
新修道院・地下。
「おや、静かになったということは、戦いは終わったのか」
先ほどまで聞こえていた音がしなくなっていた。
信者たちは撃退しても止まることはないはず。
つまり信者たちは退けられたのだ。
「まあまあやるようだね。
ということは近々ここにたどり着くだろうね」
このままここで待っていれば、魔力のストックがやってくる。
無駄に動かなくても済みそうだ。
「とはいえ、侮っていたら痛い目を見るかもしれないね。
ちょっとこの力を試してみようか」
詠唱をすると阿修羅のようなゴーレムが創られる。
忌の魔力で造られた生命体。
そしてもう一体、エルフの像そっくりのゴーレムが創られる。
こちらは聖の魔力で造られた生命体だ。
「すごいねえ。
動く泥人形が作れちゃったよ。
さすがの力だよ」
二体のゴーレムを入口へ向かわせる。
命令しなくとも私の思い通りに動く。
視野も私と繋がっている。
「さて、お手並み拝見といこうか」
果たして取るに足らない存在なのか、私を脅かすような力の持ち主なのか。
高みの見物を決め込むのだった。




