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魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第十二章 宗教戦争
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お兄ちゃん

 古い方の修道院。

 ルナたちはプリムちゃんに昔話をしてもらっていた。


「昔エルフと人間が恋に落ちたの」


 エルフと人間が結ばれた話。

 とてもロマンティックだった。

 ルナもいつかは人間に恋をするのだろうか。

 その時ふとお兄ちゃんの顔が浮かぶ。


「えっ!?どうしてお兄ちゃんの顔が」


 一瞬顔が真っ赤になる。

 急にお兄ちゃんのことを意識してしまった。

 恋愛話に当てられたのかもしれない。


「どうしましたルナサマ?」

「ママだいじょうぶ?」

「ううん……平気」


 自分でも信じられなかった。

 気持ちを落ち着かせるために話を変えなきゃ。


「そのエルフの男の人と、人間の女の人の名前で何って言うんですか?」


 もしかしたら知り合いかもしれない。

 時期的にルナが生まれた後の話だろう。

 気になって質問してみた。


「文献に残っていたのでわかりますよ。

 エルフの男性の方が、ルイ・ローティアというエルフの国の王子。

 人間の女性の方が、アシュリーという田舎の娘ですね」

「えっ……」


 ルイ・ローティア。

 ルナの"本当のお兄ちゃん"の名前。

 あの勇敢で優しかったお兄ちゃんは人間に恋をしていたのだ。


「どうしたのルナちゃん?」


 ルナの反応が気になったのか、プリムちゃんが心配そうな顔をした。


「ルイ・ローティアはルナの本当のお兄ちゃんの名前です」

「えっ!?」


 今度はプリムちゃんの方が驚いた顔をした。

 事情を知っているアーティちゃんは、「そういうことですか」と呟く。

 難しい話がわからないリンちゃんは首を傾げている。


「ど、どういうことですか?」

「ルナは戦争の時、ママに封印されたの」


 ルナの命を守るために長いこと封印されていた。

 そして、最近封印が解かれたという話をする。

 だから生まれてから戦争に入り、封印されるまではルナは数百年も前を生きていたことになる。


「そういうことだったのですね……。

 そうなるとルナちゃんは本当なら遠いご先祖さまになるのかな?」

「えっ!?もしかして?」


 ルナの本当のお兄ちゃんは人間の女の人との間に子供を儲けていたことになる。

 知らなかった。

 ルナたちの一族は命を繋ぎ、現在まで受け継がれてきたのだ。


「そうなんだ……」

「ルナちゃん大丈夫!?」


 気づけば涙が流れていた。

 ルナ以外何も残っていないと思っていた。

 でも本当は小さくても確かに残っていたのだ。


「ママ、どこか痛いの?」

「痛くないよ、リンちゃん。

 ちょっと嬉しくて泣いてるの」

「嬉しいのに泣いてるの?へんなの?」


 しばらくの間、感傷に浸っていた。

 プリムちゃんもアーティちゃんもその間、静かに見守ってくれていた。


-----------------------------------------------------------


 その頃、新修道院。


 隠し扉の手がかりを見つけて、ロイの元へ向かっている。


「ネモはどうなったかな?」


 ネモの様子も気になる。

 先ほど大きな爆発もあった。

 何か起きたに違いなかった。


「ネモー!どこにいるの?」


 先ほどまでネモたちが戦っていた場所につく。

 周囲の木々がなぎ倒されている。


「ネモ!?」


 その近くで倒れているネモを見つけた。

 私は急いでその場に駆け寄る。


「良かった。

 丸く収まったみたいね」


 倒れるネモは、ちゃんと呼吸をしている。

 疲れて眠っているだけだった。

 負傷はしているが、命に別状はなさそうだった。

 特に後遺症になりそうでもない。

 それに表情がとても穏やかに見えた。

 隣で同じく倒れているネモの親友も穏やかな表情をしている。

 そして二人の手が繋がれていた。


「起こさないであげよう」


 起こしても戦える状況ではないだろう。

 ロイには私の方から伝えよう。

 私はそのままこの場を後にする。


 ロイの元へ向かう道中、もう誰も戦ってはいなかった。

 祈りを捧げる者。

 寝ている者。

 帰り支度を始めた者。

 遠くから聞こえた歌声の影響だろう。


「しかし、あの歌声は誰だったんだろう」


 副旋律を歌っているのはレウィシアさんだった。

 だが、主旋律の歌声は聞いたことがなかった。


「あ、カトレアちゃん!無事だったんだね」

「そっちも無事でよかった」


 レウィシアさんが出迎えてくれた。

 兵士の方々もみんな無事そうだ。


「あれ?ロイは?」


 ロイの姿が見当たらない。

 代わりに見知らぬ女の子の姿があった。


「あなたは……?」

「ロイだよ」


 黒髪の女の子が振り向くと名を名乗る。

 だが、その名前は到底信じられるものではなかった。


「ロイ!?」


 思わず叫んでしまった。

 知らない間にロイは女の子になってしまっていたのだ。


-----------------------------------------------------------


 新修道院・地下。


 盲巫女を殺した後、失った魔力を補充していた。

 最初は盲巫女の魔力を回収するつもりであったが、本能が警鐘を鳴らした。

 死してなお、盲巫女に触れることは躊躇われた。

 何かを仕掛けている可能性もあった。

 そのため、洗脳した信者の魔力を出がらしになるまで吸い上げる。

 地下の信者も使い果たした。


「何やら騒がしいね」


 地上で爆発が起こったのか、ここも激しく揺れた。

 想像通り、地上では戦いが起こっている。


「人間国の奴らはどうなったんだろうか」


 さっきまでいた魔人国の幻術使いは、儀式のさなかに逃げ出してしまった。

 大した危機回避だった。

 もしこのまま残っていたら口封じのために殺していたところだ。

 まあ取るに足らない奴だ、いつでも殺せるだろう。


「盲巫女よ、あの世で見ていろ。

 お前の大切なものが壊れていくところをな」

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