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魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第十二章 宗教戦争
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剣は語る

 あたしの右手には魔力の剣が握られている。

 大きさも十分だ。

 形も問題ない。

 うまく制御できている。


「あまり長くは戦えないからな。

 速攻で終わらせてもらう」

「そううまくいくかな?アネモネちゃん」


 あたしは一気に距離を詰める。

 そして大きく振りかぶり。


「剣技――紅炎」


 剣が紅い炎を纏う。

 それを彼女に向かって振り下ろす。


「剣技――桜演舞 第二幕」


 彼女も先ほどのように舞うような動きを見せる。

 だが、今回は攻撃ではなく守っているようだった。

 細かい斬撃の連続に、こちらの攻撃を威力を殺される。


「新たな芽ぶきに備える夏の桜の舞!」

「面白い剣技だな」


 彼女との勝負を純粋に楽しんでいる。

 学生時代を思い出す。

 初対面で因縁をつけられて、何度も勝負を挑まれていたが、気付けば大がつくほどの親友になっているなんて思いもしなかった。

 あの頃のように言葉はなくとも剣で語り合うことができる。


「次は私から行くよ。

 剣技――桜演舞 第三幕」


 彼女は構えを取る。

 最初の剣技とほぼ同じ。

 そのままでは受けきれない。


「剣技――黄炎」


 あたしも剣に魔力を込める。

 剣を纏う炎の色が紅から黄へと変わる。


「四季桜は二度咲く!」

「それならまた、散らせてやるよ」


 剣同士がぶつかり合う。

 その衝撃で魔力の衝撃波が生まれ、周囲の人が吹き飛ぶ。


「ネモ……すごいな」


 カトレアはちゃんと回避していた。

 怪我していなくて一安心だった。


「ぐぬぬ……」

「くっ……」


 彼女の剣技はものすごい威力だった。

 もし普通の剣だったなら刃は折れて、そのままあたしは斬られていた。

 だけどこの剣ならば大丈夫だ。

 攻撃は受けきったが、こちらも攻撃も受けきられた。

 一旦お互いに距離を取る。


「やっぱり魔力の剣はずるいなぁ……」

「剣士たるもの、鈍らから神剣まで使いこなせてこそ一人前って教わっただろ?」


「そうだったね」と彼女は笑う。

 一つの剣だけでここまで戦う彼女のことをあたしは尊敬している。

 もっと剣を交えていたいと思ってしまう。

 だが、魔力の消耗が激しい。

 剣の威力はおろか、形を維持するのも難しくなってしまう。

 おそらく残すは二振りが限度だろう。

 そして、彼女も息が上がり始めている。


「あと二振りで決着をつける」

「最後に立っているのは私の方だけどね」


 お互い笑い合った後、表情を引き締めて剣を構えた。


-----------------------------------------------------------


 その頃旧修道院。

 見知らぬ女性と鉢合わせした。


「あ、ルナはルナって言います。

 この子はリンちゃん」

「うちはリンちゃんだよ!」

「ワタシはアーティデス」


 ルナたち三人は自己紹介をする。

 修道服を着ているなら、この修道院のシスターさんだろう。

 ルナたちの方が部外者である。


「あ、あなたたちがそうなの?

 レウィシアちゃんから聞いてるよ!

 私はプリム・リリーネって言います。

 プリムちゃんって呼んでくださいね」


 プリムちゃんはパッと表情を明るくした。

 どうやらシアちゃんの知り合いのようだ。


「良かったー!シアちゃんのお友達なんだね」

「そうなんですよー!

 ってルナちゃんってもしかしてエルフ?」


 プリムちゃんは驚いた表情を見せた。

 エルフのことを知っているみたい。


「どうしてエルフのことを知っているの?」

「実は私たちリリーネ家のご先祖様に、エルフと人間の間に産まれた人がいるの」


 衝撃的な事実だった。

 血は完全に途絶えていなかった。

 エルフの血は、人間との間に生まれた子へと受け継がれ、今まで残っていたのだ。


「だから髪の色が……。

 ねぇねぇ!プリムちゃん!もっとその話教えて欲しいな」

「うちも聞きたい!」

「ワタシも気になりマス」


 みんなも興味津々だった。


「盲巫女様――おばあ様から教えてもらった話ですが、それでも良ければ」


 休憩も兼ねてお話を聞かせてもらうことになった。


-----------------------------------------------------------


 その頃修道院。


 ネモと女性の剣がぶつかった際に、衝撃波が発生した。

 私は回避したものの、周囲の信者たちは吹き飛ばされて気絶していた。

 そのおかげで信者を相手する必要が無くなり、隠し扉の探索に専念ができるようになった。


「ネモに感謝しなきゃね」


 ネモの対決を最後まで見ていたかったが、やるべきことがある。

 探索のため、修道院の建屋へ向かった。


「それにしても広い敷地だ」


 あちこち調べまわるが、それらしきものが見つからない。

 本当にあるのか疑わしいくらいだった。


「一通りは見て回れたかな?」


 建物を一周回ってきたら手がかりはなかった。

 疲労で一度地面に寝転ぶ。


「他のみんなは大丈夫だろうか」


 空を見上げるが、ルナちゃんたちの姿は見えない。

 一度離脱したのか、他と合流したのか。


「私もロイのところに戻るか」


 そう言って立ち上がろうとした時に、かすかに音が聞こえた。

 気のせいかと思ったが念のため耳を澄ませる。


「空気の音?この下に空間がありそう?」


 最初配管か何かだと思ったが、それにしては風の音が低い。

 地下に何か広めの空間があるのは間違いなさそうだ。

 少しずつ移動しながら音を辿る。


「この下だ!周辺に何かあるかもしれない」


 必死に周囲を調べる。

 すると芝生に違和感があった。


「わずかに盛り上がっている……?

 だけど扉があったら明らかに芝の痛みや土の状況でわかるはず」


 念のためそこを掘ろうとすると固くて掘り進めない。

 だが、芝の痛みや土の削れは発生している。


「おかしいな?勘違いかな?」


 少し離れたところの芝も掘ろうとするが、そこも硬くて掘り進めない。

 全体的にここの土は固そうだった。

 もう一度違和感のあった場所に戻ろうとした時。


「痛っ!?」


 何かに足をぶつけたようだった。

 だが、どこにもぶつけた原因になるものが見つからない。

 しばらく手を動かして調べると、何か取っ手のようなものに触れた。


「もしかしてこれじゃ……」


 だが肉眼で確認できないため、確信が持てない。

 少し考えてある結論にたどり着く。


「空間認識改変魔法……」


 人ではなく空間にかける認識改変魔法。

 おそらく地下へ繋がる隠し扉がある可能性が高いが、普通の芝生にしか見えないように認識改変されている。


「一度ロイに報告しないと!」


 目的のものが見つかったかもしれない。

 私はロイの元へ駆け出した。

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