新たな力
前線に立って戦っているが、兵士たちが苦戦するのも理解できた。
信者たちは俺たちの動きに合わせて立ち回りを変えてきている。
例えば防御のために撃った魔法に対して無理に当たりに行こうとしたり、わざと急所で受けようとしたりする。
無血による突破が最優先な兵士たちは相当神経をすり減らされる。
また、タイマンを得意とする兵士に複数人あてがったり、範囲攻撃が得意な兵士を一人が受け持ったり。
この幻術使いは兵法にも長けているようだ。
「《黒暗視》」
「前が見えない!!!」
視界を奪うと、洗脳が解けることがわかっている。
だが、魔法は詠唱による隙ができてしまう。
それに単体にしか使えないため、使う対象をよく考えなければならない。
「本当にキリがないな……」
これでは隠し扉の捜索には移れない。
かくなるうえはこの状況を打開できる魔法を創造するしかない。
「すみません!ちょっと準備したいことがあるので一時離脱します」
「わかった!できるだけ早く戻ってきてくれよ!」
兵士に声をかけると戦線を離脱する。
そして安全を確保した上で考えを巡らせる。
おそらく洗脳解除のような直球な魔法は創造できない。
それならば間接的に洗脳を解除できるものか、無力化できるものが必要だ。
「何か……何かないのか……」
その時ふと、修道院で見聞きしたものが浮かんだ。
これであれば突破口になりうる。
後は創造された魔法が有用なものであることを祈るのみ。
「頼む何とかしてくれ!《魔法創造》!」
脳内のイメージを形になっていく。
そこで作り出されたのが――
《海妖女の歌声》
魔力を込めた歌声が様々な効果を生む。
込める魔力の種類によって効果が変わる。
制約:
『生物学上の女しか使えない』
『発動している間は一切の行動が取れない』
『込めた魔力は二十四時間の間使えなくなる』
礼拝堂で聴いた歌から着想を得た。
祈りの形の一つだという。
曖昧な効果な上、制約もなかなか重い。
それに一番最初の制約が引っ掛かった。
「もしかして俺では発動できない?」
発動すらできない魔法が創造されるなんて……。
だが一つ可能性がある。
「《変身魔術》」
人魚の国へ行くときのように女性の姿へと変身する。
この状態であれば発動できるかもしれない。
兵士がどんどん押し切られていくのが見えた。
他に手段はない。
この魔法に賭けるしかなかった。
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旧修道院。
遠い方にある元あった修道院。
そこに着地した。
「リンちゃんお疲れ様!よく頑張ったね」
「うち頑張った!ママなでて!なでて!」
リンちゃんの頭を撫でると目を細めてくすぐったくする。
その姿はとても愛らしかった。
「ルナサマこれからどうしマス?」
「リンちゃんも疲れているし、ちょっと休憩しようかな」
無理をさせてしまっては元も子もなくなってしまう。
お兄ちゃんならそうすると思った。
「それにしても寂しい場所デス」
寂れた修道院を見て、アーティちゃんが呟く。
元は人で溢れていただろう形跡を見かけていたたまれなくなる。
「森を最初に見た時の気持ちだよ」
今ルナたちが住んでいる月光の森。
元エルフの国であった場所。
そこがまだ瘴気に覆われていた時にそう感じた。
「ママ!この像ママみたい」
落ち着いていられないのかリンちゃんがあちこち動き回る。
そこで見つけた像を指出して声を上げる。
「これは……エルフの像?」
「本当デス。ルナサマそっくりに見えマス」
お兄ちゃんから聞いた話だと、エルフの存在は忘却魔法で消されていて、一般の人は知らないはず。
どうしてエルフの像がここにあるのだろう。
その時、誰かが近づく気配がする。
「あの……あなたたちは?」
声の方を向くと、そこには修道服を身に纏う人物が立っていた。
どこか懐かしさを感じる。
ルナと同じ髪色の女性だった。
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彼女は相変わらずの剣捌きだった。
速さ、重さ、それに攻撃へ移るまでの動作。
どれもが最高水準である。
「ブランクがあるのにやるな……」
「脚を失った後も日々鍛錬は欠かさなかったからね」
戦地に立つことはできない負傷。
そんな状況でも諦めずに剣を振り続けていたという。
その努力には、感心する以上に尊敬の念を抱いた。
そのため、正々堂々と剣を交える。
「アネモネちゃんは腕が鈍ったんじゃない?」
「そうかもしれないな」
機動力を使えばおそらく彼女は追いつけない。
だからこそ、その手段は取らない。
あたしは魔法や機動力、知略、そのすべてを駆使して強くなった。
純粋な剣の腕に頼る必要はなくなった。
その分成長が止まったのだろう。
「剣技――桜演舞」
彼女は舞うような動きを見せる。
剣の太刀が散る桜を表現するかのように動く。
「くっ……」
剣で捌くのが精一杯だった。
動きは目で追いきれない。
なんとか反応だけで受け流す。
「終幕」
今までの攻撃は前座だったと言わんばかりの一撃が飛ぶ。
その攻撃で剣先が折れて吹き飛ぶ。
「さすがアネモネちゃんね。
この攻撃を受けきるなんて。
でも剣は耐えられなかったようね」
「あたしもこれを使うしかないみたいだな」
手に持った剣を投げ捨てる。
深呼吸すると一気に魔力を手に集める。
かなりの量をもっていかれる。
彼女との対決が終わればもう戦えないだろう。
それでもいい。
彼女を先に行かせる方が被害が大きくなる。
あたしはロイたちを信じる。
「それの剣は!?」
彼女は驚いた表情を見せる。
あたしの手には魔力でできた剣が握られている。
これはロイたちと出会った後に、裏で編み出したものだ。
「これならあたしの心が折れない限り、剣も折れない。
不安要素はなくなった!」
再び構えを取る。
ここからが本領発揮だ。




