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魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第十二章 宗教戦争
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苦戦

 宗教戦争の火蓋が切られた。

 東に西に剣戟の音が響く。

 兵士と信者が激しく鍔迫り合いをしている。

 強さはほぼ互角といったところだった。

 だが、信者は洗脳されており、心に隙がない。

 それに疲れすら感じることはない。

 長期戦は圧倒的にこちらが不利だった。


「お前どうしちまったんだよ!」

「……」


 顔見知りの相手に戸惑う兵士もいる。

 それに他にも。


「母ちゃん!何やってんだ!

 目を覚ませよ!」

「……」


 自身の母親と対峙するものまでいる。

 だが信者たちに共通して言えるのは今は自我がない。

 完全に洗脳された操り人形だった。


「軽傷の方はこちらへ!」

「重症の方は私の方へ」


 俺とシアで症状ごとに人を割り振る。

 適材適所に動いている。


「それにしても怪我人が多いね……」

「全力で向かってくる相手に無力化だけ狙うのは至難の業だからな」


 元軍人の兵士を相手にしている分にはある程度全力は出せるが、一般市民を相手にしている場合にはそれができない。

 操られているため、痛みで怯ませることもできない。

 あくまで気絶による無力化か、抵抗できないレベルに縛り上げるくらいしか方法がなかった。


「くそ……気絶を狙おうにも急所に対する隙がまるでない」

「縛り上げようにも捕捉できるような動きじゃない」


 難航すればするほど怪我人が増える。

 そして、抵抗する相手がいなくなれば自ずと医療班に向かってくる。


「ロイくん危ない!」


 シアが叫ぶ。

 俺の目前まで信者が近づいてきていた。

 だが気配で既に気付いている。


「《黒暗視》!」

「うわあ!目がぁ目がぁ」


 信者が目を抑えて狼狽え始めた。

 おそらく視界を失ったショックで洗脳が一部解けたのだろう。

 少なくとも自我を取り戻していた。


「《催睡眠》」


 兵士が睡眠の魔法を使うと、信者が眠りにつく。

 そのまま地面に倒れ、いびきをかき始めた。


「申し訳ございませんロイ殿。

 危険に晒してしまって。

 ですがおかげで一人無力化できました」


 兵士が信者を武装解除した後、どこかへ運び出す。

 だが、医療班を狙う信者はまだまだ押し寄せてくる。


「すまんシア。ちょっと俺も前線に行く」

「了解!気を付けてね」


 軽傷者もシアに任せて、俺も前線に立つ。

 隠し扉の探索にはまだ向かえそうにもなかった。


-----------------------------------------------------------


 その頃、ネモとカトレアは。


「なんとか無力化できているが、キリがない」

「なかなか骨が折れるね」


 ネモと私は着々と信者の無力化を進められている。

 だが、すればするほど新たな信者が襲い掛かってくる。

 あまりにも人数が多い。

 おそらくまだ五百人近くは信者がいそうだった。


「一旦退いて息を整えるか?」

「そうだね、結構魔力も消耗してきているし」


 建物の陰に隠れて息を整える。

 手持ちの魔力ポーションも惜しみなく使う。


「みんなは大丈夫だろうか……」


 遠くで負傷した兵士が次々と下がっていくのを見ている。

 みんなのことが心配になる。


「大丈夫だよ、あいつらなら」


 心配はしているのだろう。

 だが、それ以上に信じているのだ。


「弱気じゃダメだな、気持ちを切り替えよう」


 自分の頬を手で叩く。

 痛いが、その分気合が入る。


「ネモ!次はどう……」


 ネモの手から剣が零れ落ちる。

 それを見て最後まで言い切ることができなかった。


「どうして……」


 ネモの顔を見ると明らかに動揺している。

 その視線の先には女性が立っていた。

 年はネモと同じくらいだろうか。

 凛と佇むその構えは隙がまるで感じられない。

 相当の実力者だった。

 だが、片足が義足であり、歩行が覚束ないようにも見える。

 とても戦えるような状況には見えなかった。


「ネモ!あの人は知り合いなのか?」


 ネモは苦々しい表情で頷く。


「あいつはあたしの一番の親友さ」


-----------------------------------------------------------


 その頃、空の部隊は。


「うーん隠し扉ってどこだろう?」

「どこだろー」


 リンちゃんに建物の周辺を飛んでもらっている。

 だけど特にそれらしき物は見つからなかった。

 そうこうしているうちに修道院を一周する。


「ルナサマ!リンサマ!そちらはいかがデス?」


 逆側を飛んでいたアーティちゃんとちょうど合流する地点についた。


「ダメだよ、何も見つからない。

 アーティちゃんはどう?」

「ワタシもダメデス。

 やはり上空から見つけにくい場所なのかもデス」


 アーティちゃんも手がかりはなさそうだった。


「一旦お兄ちゃんたちのところに戻ろう」

「そうデスね、それが良いデス」

「帰ろうー」


 話もまとまり、お兄ちゃんがいた方に向かってもらう。

 だけど、信者の人たちがこちらを見ている。


「ルナサマ、リンサマ。

 お気をつけくだサイ。

 着地したところを襲うつもりデス」


 明らかに敵意を向けられている。

 このまま着地したら一斉に襲い掛かってきそうだった。


「どうしようアーティちゃん?」

「一度修道院から離れた場所に着地して、徒歩でロイサマのところに行くのが良いと思いマス」


 時間はかかっちゃうけどそれが安全だった。

 リンちゃんを危険な目には遭わせられない。


「リンちゃん、遠い方の修道院に向かってくれるかな」

「おっけー」


 リンちゃんにも疲れが見え始めている。

 修道院についたら少し休憩しよう。


「アーティちゃん、遠い方の修道院に向かうね」

「わかりマシタ。ワタシも向かいマス」


 ルナたちは遠い修道院に向かった。

 一時的に戦地から撤退する形となった。

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