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魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第十一章 リリーネ家
123/145

暗躍

 弟と妹と手合わせした後。

 見物していた生徒たちに囲まれて教えを乞われた。

 親身になって教えていたところ、気付けば夕方になっていた。

 生徒たちは皆帰宅し始めている。


「本日はありがとうございました」

「……ありがとう」


 グレイスとエリナが頭を下げる。


「いやいや、こちらこそ良い経験になったよ」


 教えるには、自分自身が深く理解していなければならない。

 そのうえで相手の目線までかみ砕いて伝える必要がある。

 人に教えるということの難しさを実感した。


「あ、そうだグレイス。

 一つ聞きたいことがあるんだった。

 もし、この時期から学校に転入生として人が入ってきたらどうなる?」


 買い物の時、ルナは学校に行きたいと言っていた。

 身のまわりが落ち着いたら入学させてあげたいと思っている。

 グレイスは少し考えた後。


「やめた方が良いと思います」

「どうして?」


 強い口調だった。

 何か不都合があるのだろうか。


「今でこそ国王の交代で認識が変わりつつありますが、人間国ではいまだ魔法の適性が最重要とされています。

 だから生徒は必死で魔法の訓練や勉強をして、それこそ楽しい学校生活とは程遠いでしょう。

 そんな中、途中から入学したとして、もし適性がなければついていけずに退学になる可能性が高いです。

 もし適性が高ければ、嫉妬によるいじめに発展するでしょうね」

「人間国の学校はそんな状況なのか……」


 あまりにも想像する学校の状況とはかけ離れていた。

 獣人国のあの仲良く勉強や訓練をして青春を送る雰囲気では無さそうだった。

 確かに努力して築き上げた立場が転入生に崩されるのは面白くないだろう。

 度重なる試験や順位に追われて、生徒には余裕がないように感じる。


「まあ僕たちは両親が宮廷魔術師だったので、平和なものだったんですけどね」

「そうだろうな、あの二人の子供って知ってて手を出す奴はいないだろう」


 確かにこういう時には立場というのは役に立つものなのか。

 とはいえルナを人間国の学校に入れるのはやめた方が良さそうだった。

 本当は獣人国の学校に入れることができればよかったのだが、獣人以外は認められなかった。


「あ、そういえば」


 帰り支度の最中、グレイスが思い出したように声を上げる。


「最近なにやら修道院の裏手に新しい修道院ができたみたいですね。

 最新医療レベルの治療がタダで受けられて、お布施もないみたいで、今までの修道院から鞍替えする人が多いみたいですね」


 初耳だった。

 あの修道院の裏手に新しい修道院が作られていたなんて。


「最新医療レベルの治療もしてくれて、お布施もないって、怪しすぎないか?」


 慈善団体にしてはわざわざ今ある修道院の近くに作る必要があるのか。

 それに医者の仕事を奪うようになってしまえば、国から何か言われるだろう。


「まあ裏でみんな噂してますよ。

 良い話で信者を集めて、最後には儀式の生贄にするんだなんて。

 バカバカしい話ですけどね」

「まあそうだな」


 この手の話は話半分に聞くのが良いだろう。


「では、そろそろ僕たちもお暇させて頂きますね」

「帰る……」


 グレイスたちは帰っていった。

 俺もそろそろ帰るとするか。

 儀式の生贄。

 子供が好きなよくある都市伝説の類だろう。

 でも何か胸騒ぎがする。

 裏がありそうなのは確かだろう。

 近いうちに行ってみようと思った。


-----------------------------------------------------------


「盲巫女様、信者がどんどん新しい方に取られてますよ!」

「そうだね」


 プリムが慌てて飛んできた。

 状況は既に耳に入っている。

 新しい修道院の動きは不可解だった。

 祀っているものもうちと同じエルフにも関わらず、わざわざうちの近くに作っている。

 同じ宗派であればわざわざ信者を取り合う必要もない。

 おそらくエルフの信仰は形だけだろう。


 それに医療についてもわざわざ国から咎められるような真似をしている。

 医療が成り立たなくなるから、ヒールレベルの治療までと国から定められている。

 だが、ハイ・ヒールよりさらに上のグレート・ヒールすら使っているそうだ。

 そして、お布施も取っていないというのだ。


「まあ大方目的はうちを潰すつもりなのだろうね」

「そうなの!?」


 プリムが驚く。

 まあプリムには想像もつかないだろう。

 考えられるとすればうちへの嫌がらせ。

 あわよくば乗っ取るつもりなのだろう。


「あ、掃除の時間だ」


 プリムは掃除に行くため出て行った。

 プリムがいなくなったことを確認し、自虐的な口調になる。


「わざわざ慌てなくても乗っ取れるというのに」


 うちは盲巫女の跡継ぎがいない。

 余が逝けばそこで終わり。

 だが、悠長に構えてはいられないのだろう。


「大体目星はついているが」


 余の死を待てないくらいの年齢で、なおかつ盲巫女に執着していそうなのは。

 聖の魔力が遺伝せず、盲巫女の資格が無かった、余の姉だろう。


「こうなったら早く跡継ぎになってもらわないと……」


 跡継ぎの条件は聖の魔力を持つもの。

 そして種族が人間であること。

 その二つの条件に当てはまる人物は――


「ロイ殿にね」


 盲巫女に性別は問わない。

 何故ならば、男であれば性転換が起こるからだ。

 実際に余は元は男だったのだから。


-----------------------------------------------------------


「どんどん信者がこちらに流れてくる」


 私はほくそ笑む。

 今頃盲巫女は泣き面を見せているに違いない。


「魔人国の幻術使いに高い金払って来てもらったかいがあった」


 あそこにいる顔を覆面で隠している人物は魔人国で有名な幻術使い。

 治療でハイ・ヒールやグレート・ヒールを使っているように錯覚させている。

 そして痛みや苦しみを感じないように麻痺させているだけだ。

 実際には治療を施してはいない。


「人間国の官僚どもが来た時の対策も考えてある」


 この治療は盲巫女の加護ということにしている。


「国の連中が何か言ってきたら幻術を解けば良い」


 すると治ったはずの痛みに再度苦しむことになる。

 痛みの理由を人間国の官僚が我々の加護にケチをつけたことにすれば、信者たちが官僚を一斉に非難するだろう。


「そうなってしまえば官僚どもは退くしかあるまい」


 信者が暴徒と化せばなおさらだ。

 国の連中も非のない国民には強く出れないのだから。


「そして最終的に信者が集まれば……」


 隠し扉の方に目を向ける。


「儀式の準備が整うのだ!あっはっはっは!!!」

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123話まで読んだ感想 ストーリー: 二章までの頃は雰囲気が暗めでそれはそれで良かったが、以降はギャグのような内容もあれば、ラブコメのシーンも出てきて面白くなってきた。 それでも暗めの雰囲気はある程…
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