特殊スキル
妹であるエリナと対峙する。
俺は構えるが、エリナは構えない。
「どうした?まだ準備中終わっていないのか?」
一旦俺は構えを緩める。
その瞬間。
「《JUDGEMENT》のUPRIGHT……」
突然エリナが詠唱したかと思えば、上空が曇り始める。
そして雲から落雷が起こる。
「見た事もない魔法だ……」
雷属性の魔法だろうか。
獣人国の国王くらいしか使っているところを見た事がない。
そんな貴重な魔法を使いこなしているというのか。
「《身体強化》!」
俺はなんとか回避する。
着地した場所には焦げたような跡が残っていた。
もし当たっていたらと思うと、背筋が凍るようだった。
「《THE SUN》のUPRIGHT……」
エリナが放った魔法は今度は豪炎球だった。
だが俺の知る豪炎球の魔法陣とは異なる。
それでも目の前の魔法は見覚えがあるものだった。
「《豪炎球》!」
なんとか詠唱を行い、豪炎球を放つ。
二人の豪炎球は相殺された。
すごい威力だった。
「うーん……」
だが、ふと俺は違和感に気付く。
先ほどグレイスが豪炎球を撃った時は見物していた生徒が驚きの声を上げていたが、エリナの時は特にそういう声は聞こえない。
威力ならグレイスよりも上であるにも関わらずだ。
グレイスより優秀なのかもしれないが、それにしても反応が薄い。
エリナの動きを捉える。
魔法を詠唱しているわけではなかった。
懐からカードのようなものを取り出していた。
そしてそのカードに魔力を流すことで魔法を発動していた。
「《THE HIGH PRIESTESS》のREVERSED……」
「くっ……」
不快感を覚える。
超音波のようなものを受けて、視界が揺れる。
見物していた生徒も何もかもすべての人がエリナに見える。
これは魔人族が得意とする弱体化魔法だ。
「《異常解除》!」
新しく覚えた魔法を試す。
状態異常になった時にそれを直す魔法。
今まで状態異常になることがなく、使ってこなかったものだ。
全身に魔力が巡ると、視界の揺れが収まる。
景色も元に戻った。
「《水の鞭》!」
エリナに向かって水の鞭を飛ばす。
カードを引くよりも早く鞭が伸びる。
エリナを鞭で拘束する。
これでカードを引くことはできなくなった。
「……しまった」
「これで魔法が撃てなくなったんじゃないか?」
「……ぐぬぬ」
エリナは必死に解こうと身を捩るが拘束は解けない。
しばらく抵抗した後。
「私の負け……」
エリナは負けを宣言した。
俺は拘束を解く。
「エリナは一体どうやって魔法を使っていたんだ?
詠唱じゃなくてカードに魔力を流し込んでいたようだけど」
疑問をエリナにぶつけてみる。
「……これはタロットカードって言う魔道具。
カードに魔法陣が刻まれていてそれに魔力を流すことで発動する」
「そういう仕組みだったのか!」
仕組みは魔導銃に似ているが、魔法を発動できる魔道具なんて聞いたこともなかった。
とても興味深かった。
「そんなすごいもの、よく手に入れられたね……」
「これは私のスキル」
スキル。
俺の魔法創造や、魔力無限のような、生まれつき備わった特殊能力。
俺のスキルは神に与えられた後天的スキル。
だが、エリナのものはおそらく先天的に持っていたスキルだろう。
「……魔法を詠唱すると隙ができる。
だから身を守るために身体を鍛えたり、回避の訓練をしないといけない。
私、身体を動かすのが嫌いだから助かる」
「確かに魔力を流すだけだから、詠唱硬直がないのか!」
彼女もグレイスと同じで天才だ。
天才ゆえにいかに自分の苦手を回避するかに振り切っている。
「でも制約が多いから万能じゃない……」
「なるほど、やはり制約はあるのか」
エリナが言うには無作為で引いたカードとその向きによって魔法が決まるらしい。
そのため発動する魔法を選ぶことはできない。
そして魔力の消耗も激しく、カードによっては自身に害を及ぼすものもあるという。
かなりピーキーな魔道具だった。
「兄上の強さはわかりました。
僕たちより遥かに魔法の実力は上。
それに場数も踏んでいる。
通りで強いわけですね」
「何より兄さまは洞察力に優れている。
尊敬……」
二人に褒められて悪い気はしなかった。
「俺は元々は無力だった。
だから生き残るため、考えることを学んだんだ」
俺は決して強くはなかった。
考え、学び、自分の力ではどうしようもないことも、仲間とともに乗り越えてきた。
今でも未熟さを感じることも多い。
「二人も自分の苦手に対してうまく考えて戦術を立てているから。
次は自分のしたいことをいかに邪魔されずに通すかを考えた立ち回りができると強くなれると思う」
偉そうなことを言っていると思う。
だが、二人には才能がある。
それにもっと強くなる伸びしろもある。
兄として二人の成長を心待ちにする思いが芽生えた。
「はい!兄上」
「わかりました。兄さま」
二人の顔つきが変わった。
こんな俺の言葉でも心に響くものがあったのだろうか。
「この感覚がそうなのか……」
戦いを経てようやく弟と妹ができた実感が少しだけ湧いてきたのだった。




