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魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第十一章 リリーネ家
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写し鏡

 盲巫女と話した翌日。

 俺の弟と妹に会いに来ていた。

 即位式で約束を取り付けていた。


「どうも実感がないんだよな……」


 急にできた弟と妹。

 ルナのような義兄妹ではなく、血の繋がりがある。

 だが、数分しか顔を合わせていない。


「どう接して良いかわからないんだよなあ」


 俺の人見知りなところが顔を出していた。

 しばらく歩くと、目的地の魔法学校にたどり着く。

 門の前で弟と妹がお出迎えをしてくれていた。


「ご無沙汰しております兄上」

「兄さま……」


 弟と妹が会釈する。

 礼儀正しかった。

 あの両親から生まれたとは思えないほど礼儀正しかった。

 もしかしたら俺が知らないだけなのかもしれない。


「そう言えば名前を聞いていなかったな」


 即位式では慌ただしく、挨拶だけで終わってしまった。

 なので前回聞きそびれた名前を尋ねる。


「そうでしたね、失礼しました。

 僕の名前はグレイスと申します。

 以後お見知りおきを」

「エリナ……」


 弟の名前がグレイス。

 妹はエリナと言うらしい。


「俺の名前はロイ。

 といってもこの名前は両親に貰ったものじゃないけどな」

「どういうことでしょうか?」

「……?」


 俺は事のあらましを話す。

 名前を貰えず愛されなかったこと。

 六歳の時に捨てられたこと。


「そういうことだったんですね。

 やっぱりあの人たちは……」

「死んで当然」


 両親を庇うつもりはないが、実の子たちからも酷い言われようだった。

 それだけ恨みを買うような育て方をされたのだろうか。


「両親のことは嫌いですが、血は争えないものでして、魔法への関心は尽きないのですよ。

 それで魔法の才能がなかったはずの兄上が何故父に勝てたのか興味深くてですね。

 是非手合わせ願いたく思っているのですが、よろしいでしょうか」

「ああ、いいよ」


 弟の頼みならやぶさかではない。

 それに自分も魔法を撃ちあうような戦闘はご無沙汰だった。

 鍛錬にはちょうど良いだろう。


 俺たちはグレイスたちが通う学校の訓練場に来ていた。

 休日は一般に貸し出されている。

 自主練に来ていた何人かの生徒が見物に来る。


「じゃあ始めましょうか」

「よろしく頼む」


 互いに構えを取る。

 俺は様子を伺うが、相手も同じで動こうとしない。

 得体も知れない相手に仕掛けるのは愚策だからだろう。


「じゃあ俺から仕掛けさせてもらおう!《大火球(ハイフレア)》!」


 俺は詠唱して挨拶代わりに大火球を放つ。

 するとグレイスが動く。


「《大火球(ハイフレア)》」


 グレイスも同じ魔法を唱える。

 互いの大火球がぶつかり合い、相殺される。

 様子見のため力をある程度抑えたのもあるが、グレイスもその年齢にしては魔法の威力が高かった。


「やるな、次は《水の鞭》」


 俺が詠唱すると、水が集まり鞭の形に変形する。

 しなるようにして、グレイスに向かって振り落とされる。


「《水の鞭》」

「なにっ!?」


 またグレイスは俺と同じ魔法を唱える。

 力をうまく受け流されて、受けきられる。


「それならば《豪炎球》!」


 この魔法はごく限られたものしか使えない上級魔法。

 果たして彼は扱うことができるのか、お手並み拝見だった。


「すげえ上級魔法だ」

「それも高威力だ」


 見物していた生徒たちが俺の豪炎球に歓声を上げている。


「《豪炎球》」


 グレイスも豪炎球を放つ。


「あいつも上級魔法使えたのか!?」

「さすが学年首席」


 見物していた生徒たちはグレイスにも驚きと称賛の声を上げていた。


「なるほど」


 完全にこちらと同じ魔法を合わせてくる。

 さすがあの両親の子供なだけある。

 魔法の才能に恵まれている。


「さすがに威力は勝てないですね」


 俺の豪炎球とぶつかるが、一方的にグレイスの方が霧散した。

 グレイスは豪炎球をかわす。

 魔法以外の戦闘技術もしっかりしていた。


「ある程度動きはわかった」


 彼は自分から一度も仕掛けてきていない。

 それに戦い方がすべてこちらと同じ魔法を使う戦法。

 高度な魔法は見よう見真似なのか威力が劣る。

 そこで一つ試したいことが生まれた。


「《風の刃(エアスラッシュ)》!」


 詠唱をして魔法を放つ……ふりをする。

 あえて誤った魔法陣を生成する。

 当然だが魔法は発動しない。


「……」


 グレイスも詠唱をしようとして取りやめた。

 ああやっぱりそういうことか。

 これで確信する。


「これはどうする?《黒暗視(ブラインド)》」


 初めて使う闇属性の魔法。

 相手の視覚を一時的に奪う。

 ヒドラと契約したことで扱えるようになった闇魔法だ。


「さすがですね兄上」


 視覚を失ったグレイスは下手に動けない。

 俺が真横に立っていても反応しない。

 だが、気配には気付いているのだろう。

 両手を上げて降参の意思表示をした。


「うおおおおお、あのグレイスに勝ったのか」

「すげえ」


 見物人は大興奮だった。

 それくらいグレイスは優秀なのだろう。

 それは手合わせして良くわかった。


「よく気付きましたね、まあどのみち闇属性の魔力は持っていないので黒暗視は使えませんでしたが」


 グレイスは相手の詠唱で作られる魔法陣を見ることができる。

 それを素早く再現して戦っている。

 そこで俺はグレイスの視界を奪う魔法を使ったという訳だった。


「どうしてそんな方法で戦っているんだ?」

「それはですね、両親からたくさんの勉強を押し付けられる日々に嫌気が差しましてね。

 特に魔法の詠唱を覚えるのがめんどくさくて、めんどくさくて。

 それなら相手の詠唱を真似すれば良いのではと思ったら、これがうまくいきまして」


 唖然とするような天才っぷりだった。

 普通の人間では相手の詠唱による魔法陣の形を目で追うのが精一杯だろう。

 とても真似できるほどの余裕はない。

 彼はそれを簡単にやってのけている。


「まあ課題として上級魔法などはうまく制御できなかったので、魔法制御の精度は上げないといけないですかね。

 その課題が見つけられただけでも兄上に感謝です」


 遠くで見ていたエリナがこちらをじっと見ている。

 俺とグレイスの戦いを見て、うずうずしているのだろうか。


「次はエリナとの手合わせをお願いたいのですが、魔力は大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だよ。

 魔力には余裕がある」


 グレイスと入れ替わりでゆっくりとエリナが歩いて来る。

 日傘を差しているが戦えるのだろうか。

 心配をよそにエリナはこちらを見据えて佇む。


「……兄さま、ご覚悟を」

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