↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第十章 竜人国の厄災
115/149

母の力

 カムイさんは本気だった。

 纏う魔力の量でそれがわかる。

 お眼鏡に叶わなければ、力づくでも連れていく。

 そんな意志表示だった。

 隙のない構えだけで、その実力が伝わってくる。


「さあ、ロイさん。

 いつでもどうぞ」


 断ることはできそうにもない。

 俺は今魔力をまともに制御できない状態だ。

 おそらく勝てる見込みはない。


「かかってこないのであれば、娘は連れていくぞ」


 周囲の者たちもこちらへ歩み寄ってくる。

 やらなければならない。


「俺が……」


 俺が相手になる。

 そう言おうとした時。


「ルナがお相手します!」


 ルナが俺の前に立つ。

 自分の意志で踏み出した。

 リンちゃんを守るため、その顔は本気だった。


「ルナ!」


 無茶だと言おうとしたが、その言葉を飲み込んだ。

 ルナは成長している。

 誰かを守るための強さを、もう身につけていた。

 それを否定するのは彼女に失礼だった。


「ルナサマ……」

「ルナちゃん……」


 アーティとシアが心配そうに見守っている。

 二人もルナの決意に水を差すことはできなかった。


「ルナやるな!」

「ルナちゃん、頑張れ」


 ネモとカトレアは誇らしげに見ていた。

 ルナの勝ちを信じて疑わない。

 そんな反応だった。


「ママ……」


 リンちゃんが心配そうにルナの顔を覗き込む。

 ルナが普段見せないような表情に何かを感じ取ったようだった。


「そうか、娘の母親代理の子が相手になるか。

 若いようにお見受けられるが、手加減はせんぞ」


 カムイさんが再び構えに入る。

 今にも斬り込みそうになっていた。

 ふと周囲を見渡すと、国民や兵士たちが何事かと集まってきている。

 緊張感が走り、お祝いムードどころではない。

 せっかく余韻に浸っていた人たちに水を差してしまっている。


「待ってくれカムイさん。

 日を改めてはもらえないか。

 今日は厄災が倒された記念すべき日。

 せっかくのお祝いが台無しになっている」

「それはそうだが……」


 カムイさんは周囲を見てたじろぐ。

 緊張感は緩んだが、引くに引けない状況になっている。


「それにカムイさんは、もし返さないとなった時に、力試しするつもりで準備してきていますよね。

 でも我々は何も準備をしていない。

 フェアではないでしょう。

 それに厄災を倒すために全力で、消耗している状況なので、本来の力は見れないのでは?」

「ううむ……わかった」


 カムイさんは剣を下ろした。

 一族の者たちがざわつくが、カムイさんが一喝する。


「すまない皆!せっかくのお祝いムードに水を差してしまった。

 ちょっと昂りを抑えられなかったのだ、気にしないでくれ」


 カムイさんが大声を上げる。

 それを聞いた周囲の者たちも「それなら仕方ない」という反応で、散っていく。


「すまなかったロイさん。

 周囲が見えていなかった。

 私は焦っていたようだ。

 日程は改めて連絡する」


 カムイさんたちは去っていった。

 緊張が解けたようでルナが地面にへたり込む。


「緊張したぁ……」


 ルナはいつもの表情に戻っていた。

 リンちゃんも安堵してパッと笑顔になる。


「ごめんな、ルナ。

 せっかくやる気になっていたところに」

「ううん、みんなの楽しみを邪魔してたみたいだし」


 遠くではアーティとシアが胸を撫で下ろしていた。

 ネモとカトレアが、ルナに近づいて来る。


「特訓しよう!」

「私も手伝うよ」

「ワタシもお手伝いしマス」

「怪我したら私が治すからね」


 アーティとシアもそれに続く。

 みんなでルナを鍛える方針のようだ。


「みんな、ありがとう。

 ルナ頑張るよ!」


 そして、翌日は休養に充て、翌々日から特訓が始まった。


 カトレアからは攻め込んでくる相手との間合いや守り方。


「ルナちゃん、それだと隙だらけだよ!」

「うぅ……!もう一回お願いします!」


 ネモからは魔法による戦闘の組み立て方。


「闇雲に《豪炎球》を撃つんじゃなくて、《土壁(ウォール)》で守った後に、

 それを壊そうとした相手に不意打ちで撃つと良いよ」

「勉強になります!」


 アーティからは魔力の制御。


「そうデス。そのまま《水球》の形を維持するのデス!」

「む、難しい。少しずつ形が歪んじゃう……」


 シアは治療とリンちゃんのお世話。


「ルナちゃん少し休憩しようか~」

「ママにお水持っていくね」


 それぞれ協力してルナに戦闘を叩き込む。


 かなりハードな内容だったが、ルナは一切弱音を吐かなかった。

 そればかりか、終わった後も復習のため自主練をするくらいだった。

 俺も何か役に立てないかと考えて、ルナを呼び出す。


 魔力視開眼について話した。

 もしかすれば、ルナにとって大きな力を得ることに繋がるかもしれない。

 その代わりに俺に魔力を見られることになる。

 魔力を見られるということが羞恥となることはカトレアで理解していた。


「ルナ、お兄ちゃんになら、見られても平気だよ」


 ルナは真っ直ぐな目で俺を見て笑う。

 リンちゃんのため、覚悟を決めている。

 それに俺への信頼を感じる。


「わかった。いくぞ《魔力視開眼》!」


 ルナの魔導回路が浮かび上がってくる。

 赤、青、茶色、緑と四属性分の魔力が流れていた。

 太くはないものの、細くもない魔力だった。

 それに魔導回路が複雑で、適性の高さも伺える。


 ルナは目を閉じてかすかに震える。

 やはり恥ずかしいのだろう。


 正直ルナの魔力は完成度が高く、手を加えるべき点は見当たらなかった。

 それでも念のため、隅々まで魔力を調べる。

 するとカトレアの時にもあったような切れた魔力の糸を見つけた。


「色は白……聖魔力か!?」


 ルナの中に残されているというのが驚きだった。

 だが、カトレアの時より、更に細く脆い糸だった。

 おそらく触れることすら難しい。

 それにこの糸は他の魔力に干渉しかねない位置にある。

 一歩間違えれば今まで使えていた魔力もダメにしてしまう可能性がある。


 俺は諦めて、閉眼しようとしたその時。

 心の奥からかすかに声がした。


「ルナに……私の力を……」


 途切れ途切れで所々聞き取れなかったが、声の主に覚えがあった。

 ルナの母親、エリスさんの声だった。

 封印からほんのわずかに漏れだす、エリスさんの思いが、俺を通して伝わってくる。

 愛する娘ルナのために、僅かな力を振り絞って俺に語り掛けてきた。


「その指に私の……魔力を……」


 おそらく俺の指に聖魔力を宿してくれたようだ。

 時間はない、既に弱まり始めるのを感じた。


「あなたの願い、聞き届けました」


 俺はルナの白い糸に指をかけて、魔導回路に繋ぐ。


「んんっ!」


 ルナから甘い声が漏れるが聞こえないフリをした。

 聖の魔力のおかげで、糸は切れずに形を保てている。

 そして、無事魔導回路と繋がった。

 カトレア以上に細く繊細のため、聖魔力を使いこなすことはできないだろう。

 だが、この力は間違いなくルナのため、役立つものになるだろう。


「《魔力視閉眼》!」


 魔導回路が消えていく。

 なんとか、やり遂げることができた。


「一瞬だけど、ママとお話できた気がする

 背中を押してもらえたんだ」


 ルナは胸に手を当てて、目に涙を浮かべていた。

 確かに母親はルナに力を与えた。


「ルナ、頑張れよ!」

「うん、お兄ちゃん!」


 いろいろな人たちの力でルナはさらに成長を遂げた。

 カムイさんとの手合わせは翌日。

 今のルナの背中はとても頼もしく見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。