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魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第十章 竜人国の厄災
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魔力視開眼

 歓喜の声が上がる中、竜人国国王は号令を発する。


「今から厄災の本体を鎮める儀式を始める。

 皆の者、決して手を出すな。

 周囲に被害が出ぬよう、守りを固めるのだ」


 緩んだ空気は一気に引き締まる。

 兵士たちは周囲の被害を抑えるべく防御態勢に移行する。


「任せたよ、ロイさん」


 カムイさんに肩を叩かれる。

 激励してくれたようだ。

 だが、その表情には、力になれない歯がゆさが滲んでいた。


「お兄ちゃん頑張って!」

「マスター、頑張るデス」


 ルナとアーティも俺の背中を押してくれた。


「ルナとアーティも演奏良かったよ」

「やった!」

「嬉しいデス」


 褒められて二人とも喜んでいる。

 二人の宝具の演奏はとても素敵なものだった。

 二人の力が無ければ分身体を倒すことはできなかった。


「これまでの無礼をお詫び申し上げる。

 何卒この国を救ってくだされ」

「私からも本当に申し訳なかった」


 国王と宰相も深く頭を下げる。

 王族がそう簡単に頭を下げるなど、普通なら考えられない。

 恥も外聞も捨てた行動。

 それくらい国を思う気持ちは強いのだろう。


「いえいえ、俺も立場が立場なら同じことをしていたかもしれませんから。

 ただ、カトレア――あなた方が攫った獣人の少女にも謝ってください」


 実際、大切な人を守るため、他者の犠牲と天秤にかける必要があれば、同じ選択をする覚悟はある。

 だが、カトレアを連れ去った事実は看過できなかった。


「もちろんだとも、誠心誠意をもって謝罪するつもりだ」

「これから向かうつもりです」


 とはいえ、丁重に扱ってくれていた事実はある。

 なのでそれを引きずるつもりはない。

 国王と宰相がカトレアの方へ向かうのを確認した。


「お主、海巫女からもらった宝珠は持ってきておるな?」

「ああ、もちろん」


 懐から海巫女に渡された宝珠を取り出す。

 透き通るほどに澄んだ青さをしている。


「これでいいか」

「それを貸してみよ」


 先々代姫巫女に宝珠を渡す。

 宝珠に魔力を込めたかと思うと、宝珠が光り始める。

 そして、宝珠がゆっくりと人の形へと変化していく。

 光が止む頃には、一人の少女の姿になっていた。


「いやはや陸に上がるのは久しぶりだな」

「海巫女様!」


 宝珠は、海巫女そのものへと姿を変えていた。


「清魔法の宝珠分身だよ。

 本体と意識は繋がっているから心配しなくても大丈夫」

「わらわもお主のような魔法が使いたいわい」


 姫巫女には海巫女の清魔法のような物はない。

 代わりに封印術に特化した封魔法を使う。

 どちらも特別な魔法ではあるが、利便さの面では清魔法に軍配が上がる。


「まあそれはおいておいてだね。

 そろそろ始めようか」

「そうじゃな、アイリスよ」


 海巫女と先々代姫巫女は、祠を挟んで一直線上に立つ。

 そして、二人は詠唱を始める。


「「《封印解除》」」


 二人の巫女が唱え終わった瞬間。

 祠にひびが入り、魔力が漏れ出す。

 その禍々しさに嫌悪感を感じる。

 魔力には触れていない。

 だが、視認しただけで吐き気を感じる。

 俺だけではない。

 遠くで俺たちを見ていたみんなや兵士たちも、同様に嫌悪感を示していた。


「「《巫女式結界術》」」


 祠が砕けそうになる瞬間。

 魔力を完全に包み込むような結界が展開される。

 嫌悪感は感じられなくなった。

 結界の中の魔力は完全に閉じ込められた。


「今のままでは封印はできぬ。

 お主の力で弱らせるのじゃ」

「結界はもって三十分ってところかな。

 それを超えたらもう抑えきれないよ」


 俺に与えられた猶予は三十分だった。

 それまでに封印ができるくらいまで、厄災を弱らせなければならない。

 どのくらい大変かは想像に難くない。


「万が一君が厄災に飲み込まれたとしても封印はできるよ。

 ただ、その場合は君ごと封印することになるけどね」


 時間切れだけは絶対に許されない。

 時間切れになるくらいなら、自ら人身御供として厄災を取り込む。

 世界を滅ぼすくらいなら迷わずその道を選ぶ。

 そうすれば、どちらに転んでも封印はできる。

 だが、厄災と一緒に封印されるなんて御免被る話だ。

 みんなの元に帰れなければ意味がない。


「おいアイリス!

 宿主を犠牲にしようとするな!

 わらわも一緒に封印されてしまうんじゃぞ」

「あはは、ごめんごめん。

 でも多少気負わなくてもいい方が、うまくいくもんだよ」


 巫女たちの言葉は既に耳に入ってこなかった。

 それだけ神経を研ぎ澄ましている。


「絶対に弱らせます」

「健闘を祈るぞ」

「がんばってねー」


 二人の巫女にそう告げ、結界の中へ入る。

 結界の中には禍々しい魔力が渦巻いている。

 先ほどとは比べ物にならないほどの嫌悪感だった。

 確かにここには一人しか来れない。

 俺だけで入ることになったのも頷ける。


「息苦しいな」


 人の悪意、恨み、妬み、苦しみ。

 様々な負の感情が凝り固まっている。

 この感覚には覚えがあった。


「これはまるで……」


 戦争で肉壁として命を散らせた時。

 ソルヌのみんながヒドラに殺された時。

 その時に心に渦巻いた感情に似ていた。

 それを何千何万もの人から集めて濃縮したもの。

 少しでも弱さを見せたら取り込まれてしまう。

 そのくらいの重苦しさだった。


「さて、俺がやるべきことは……」


 厄災を弱らせること。

 そのためには魔力を断ち切る必要がある。

 俺は事前に考えた作戦を実行する。

 厄災の魔力に干渉し、核から断ち切り続ける。

 そのために俺が発動すべき魔法は――


「《魔力視開眼》」

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