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魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第九章 竜人族の子供
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協力者

 月光の森。

 俺は人魚の国から戻ってきている。

 帰り際。


「もらった報酬に対して、あんまり働いてなかったから、代わりにこれあげるね」


 海巫女からあるものを渡されていた。


「いずれ役に立つ時が来るから」


 それだけ伝えられただけだった。


「これなんだろうな」


 真珠のような綺麗な珠だった。

 清魔力が込められているのはわかっている。

 先々代姫巫女である白髪の少女は再び手の甲の紋章に戻っている。

 来る時のため、魔力を蓄えておくために。


「それと今回の件、ルナに伝えるべきか」


 リンちゃん。

 姫巫女の使命について。


「ロイ。手紙が二通来てたぞ」


 カトレアが手紙を二通、手渡してきた。

 獣人国のギルドで渡されたものらしい。


「ありがとう。カトレア」


 カトレアから手紙を受け取ると目を通した。

 一通目は竜人国宰相からのもの。


「内容としては想定通りか」


 リンちゃんの返還についての要請だった。

 あくまで姫巫女としての使命や厄災には触れず、

 親族が形見を引き取りたいという内容だった。


「理性的な文章だな」


 応じなかった場合についての脅し文などもなく、

 保護にかかった費用や謝礼について書かれている。

 彼らは平和的な解決を望んでいた。

 もし、ただ何も知らず保護していただけなら返還に応じていただろう。


「だが、応じるわけにはいかない」


 返還には応じない。

 何故なら対話ではなく、一方的な要請でしかないからだ。

 不都合は伏せて、応じる以外の返答は求められていない。


「それと二通目は姫巫女の弟を名乗る者からか……」


 内容は姉の形見であるリンちゃんを保護したい旨の内容だった。

 おそらく竜人国国王の手紙の親族に該当する人物だろう。


「姫巫女の弟である以上、厄災のことは知っているだろうな」


 使命を果たすための方便とも考えられる。

 ただ、こちらは対面での対話を要求している。

 説得か、脅迫かはわからない。

 だが、リンちゃんを救うためには避けては通れない。

 会って話すべきだろう。


「敵か味方か果たしてどちらだろうか……」



 俺は姫巫女の弟が指定する場所へとやってきた。

 場所は獣人国の首都スーベニア。

 そのこじんまりとした喫茶店だった。

 竜人の青年がこちらに気付くと手招きする。


「すまない、わざわざ呼び出してしまって」


 物腰は柔和だった。


「いえ、こちらも話したいことがあったので」


 席に着く。


「まずは単刀直入に言おう。

 姉上……いえ、姫巫女の子を渡して頂くことは可能だろうか」


 青年は深々と頭を下げる。


「申し訳ないですが、お返しすることはできません」


 青年は表情を変えずこちらを見据えた。

 おそらくこの回答は想定内だったのだろう。


「それは何故か教えていただくことはできないだろうか」

「厄災。それに姫巫女の使命について知っているからです」


 青年は一瞬驚いた表情をしたが、すぐに切り替える。


「なるほど。それであれば頷ける」


 青年の表情から緊張感が消えた。


「我の目的は姉の形見である子を守ること。

 そして、使命に縛られず自由に生きられるようにすることです」


 表情から嘘は言っていないようだった。

 姫巫女の弟は竜人国側の立場ではないことがわかった。


「あなたの目的はわかりました。

 ですが、竜人国はどうされるつもりでしょうか」


 姫巫女の犠牲が無ければ、厄災を止められず、国が滅亡してしまう。


「我も姫巫女直系の血を継いでいる。

 それに我が一族に伝わる秘技もある。

 厄災は私の力で解決する」


 青年の言葉に違和感を覚えた。

 この青年は目の前のことしか見えていない。

 姉の形見であるリンちゃんを守りたいという気持ちは本物なのだろう。


「もし、厄災を自力で解決できなかった時のことは考えてますか?」

「……その時は我が命を賭けるだけだ」


 覚悟は本物だった。

 だが、肝心な厄災に対する認識がズレている。

 それに万が一厄災を解決できたとして、国は次の厄災に備える必要がある。

 姫巫女の力が必要である以上、国と戦うか逃げ続けるしかない。

 結局リンちゃんは自由には生きられない。


「もし厄災を解決できたとして、また五十年後に厄災がやってきます。

 国もそれに備えるために姫巫女の子を手元に置いておきたいでしょう。

 あなたは竜人国と戦い続けるのですか?逃げ続けるのですか?」


 青年の表情が曇った。


「竜人国の手の届かないところに行って静かに暮らすつもりだ。

 追手が来ようと追い払う力はある」


 答えに窮したのか、言葉が弱々しかった。

 自分の言葉の矛盾に気付いているようだった。


「追われ続ける生活は自由でしょうか。

 結局は使命に縛られて生きているのと変わりないのでは」


 青年が苛立った表情を見せた。


「ならどうしろと言うのだ!」


 感情的な言葉を吐き捨てる。


「厄災がどうして五十年に一度起こるか知ってますか?」

「ああ、初代姫巫女の封印が不完全だったからだ」


 封印から漏れ出したものが負の感情を取り込み続けて分身体を作る。

 それが今起きている厄災の原因である。


「なら、その初代姫巫女の不完全な封印を完全なものにすれば良いと思いませんか?」


 青年は目を丸くする。


「確かに……その発想はなかった」


 厄災の分身体に苦戦する竜人国にとって、根本をどうにかするという発想が出てこなかったのだろう。

 俺も先々代姫巫女に言われるまで気付かなかった。

 目先の問題だけに囚われていたのだ。


「厄災がもう起きないのであれば、姫巫女を縛る必要もなくなる。

 そのために協力してくれないか」


 俺は青年に手を差し出した。


「もちろんだ、我でよければいくらでも力を貸そう」


 青年は俺の手を取った。

 こうして、姫巫女の弟と手を組むことができた。

 いくら厄災をどうにかできると言っても、竜人国が信用するはずがない。

 目的を果たすためにも彼の力が必要不可欠だった。


 これでリンちゃんを救う作戦が一歩前進したのだった。

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