02-01.愛の伝道師
「愛! 愛ですよ! アズキ!」
どっかのヤヴァい黒仮面みたいなこと言い出したにゃ。
「私決めました! 私は愛の伝道師となります!!」
あかん……。
「ま、まあ。頑張ってくれにゃ。応援してるにゃ」
「はい♪」
いや、応援して良いのかにゃ?
「ちなみににゃが……」
「具体的な活動内容ですね♪」
フリーハグでもするのかにゃ?
いかんにゃ……こんな美少女がやっても邪な愛しか生まれないにゃ……。
「皆にアズキを撫でて頂くのです!」
「な……なんにゃってぇ!?」
何言ってんのこいつ!?
「きっと誰もがこの愛の尊さに気が付く筈です!!」
「ふっじゃけんにゃ!! 誰がやるか!!」
「応援してくださるって言ったじゃないですかぁ!?」
「なんで私が身売りなんかしなきゃいけないにゃ!?」
「仕事が欲しいと言ったのはアズキです! WinWInです!」
「何がWinWInにゃ! 結局それが目的かにゃ! 楽して稼ぎたいだけなら自分の身体を使えにゃ!」
「なんですかそれは!? 誰がそんな事を言いましたか!」
「今自分で言ったにゃ! 私は嫌にゃ! この身体はお前以外に触らせないにゃ! けどそれも今ここまでにゃ! こんな奴とはコンビ解消にゃ!!!」
「解消!? させるわけないでしょ!?」
「放すにゃ! 私は一人で生きていくにゃ!!」
「なっ!? 何故ですか!? 急にどうしたって言うんですか!?」
「それはこっちのセリフにゃ! 散々好き好き言っておいて結局なんとも思ってないにゃ! だから他人に身体を触らせろなんて言えるにゃ! 何が愛の伝道師にゃ! お前なんかに愛がわかる筈ないのにゃ!!!」
「っ!?」
スフィアの手が緩んだ。私は全速力で駆け出した。
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「……空気読めにゃ」
あっさり捕まえるのは違うにゃろが。ここは一旦別れて紆余曲折の末に仲直りするやつにゃ。スフィアのピンチに私が颯爽と駆けつけるとこにゃ。ドラマがある筈だったのにゃ。
「すみませんでしたぁ!!」
「……言い訳があるなら聞いてやるにゃ」
「てっきりアズキは撫でられるのがお好きなのかと!」
「スフィアに撫でられるのが好きなだけにゃ!」
「ありがとうございます!!」
「うっさいにゃ!!」
なんにゃこいつ!?
「違うんです! 誤解なんです! 聞いてください!」
「なんにゃ!?」
「今朝私は思ったんです!!」
声がでかいにゃ! 耳元で叫ぶにゃ! シャーるにゃ!!
「腕の中に収まったアズキの可愛らしい寝顔を見ていて思ったんです!!」
勝手に見るにゃ! 覗き込むにゃ!
「この愛しさを世界中に伝えねばと!!」
つまりなんにゃ? 愛を伝えるって、スフィアが私を愛する気持ちを自慢したいってことかにゃ? 私の愛らしさを広めたいってことかにゃ? 愛そのものを伝えるんでにゃく?
「共に猫耳族の地位向上を目指しましょう!」
種族全体だったにゃ。何故だかゾッコンにゃ。
「こんなにも愛らしい種族を虐げてはいけないと! そう訴えかけましょう!! 我らの愛を以って!! 世界中の人々に!!」
南国の楽園に逃げ込むんじゃなかったのかにゃ?
「なんて独りよがりの愛にゃ」
「そんな!?」
「いい加減ボリューム下げるにゃ。うるさいにゃ」
「何が悪いと言うのですか!?」
「うるさいにゃ!!」
話聞け! こんにゃろ!
「浮かれすぎにゃ。少し落ち着けにゃ」
「すぅ~はぁ~……はい。落ち着きました」
やっぱり変なやつにゃ。
「いいか、スフィア。愛とは自慢するものではないにゃ。愛とはただそこにあるものにゃ。見せびらかしたりしたら、やっかみしか買わんのにゃ」
「はい……ですが……」
「はしゃぎたくなる気持ちはわかるにゃ。誰かに認められるっていうのは嬉しいものにゃ。信頼され、身を任されるというのは光栄なものにゃ。美少女が腕の中で呑気に寝息を立ててたら愛おしく感じるのも当然にゃ」
私ほどともなれば尚更にゃ。
「そんなの、人間生きてりゃ当たり前に経験するものなのにゃ。誰かに見せびらかされるまでもなく、誰もが既に知っていることなのにゃ。なんの自慢にもなりはしないのにゃ」
普通は小さな頃に経験するものにゃ。親の腕の中で眠るだけでなく、隣で眠る親の顔を見て、この人は私の味方なんだって安心するものなのにゃ。
「スフィアは添い寝をされた経験はにゃいのか?」
「……二度目です」
一度目は? ああ。私か。これで添い寝は二度目にゃもんな。今回は寝る前に愛だのなんだのいっぱい話したせいで寝起きにテンションがオーバーヒートしちゃったにゃ。
「これからは毎日一緒に寝るにゃ。先ずはそれを当たり前にしていくにゃ。約束にゃ」
「……はい。約束です」
下手っぴ笑顔。ちょっとニヤけ風。けど可愛い。美少女はこれだからズルいのにゃ。けど今は私も美少女だったにゃ。やれやれ。まったく。罪な女にゃ。
「焦らずとも、先ずは私がスフィアに愛を教えてやるにゃ。愛の伝道師になるのはそれからでも遅くはないのにゃ」
「……はい」
真っ赤になったのにゃ。思い出して恥ずかしくなったのかにゃ? 冷静になってくれて何よりにゃ。
「スフィアは子が生まれたら間違いなく親バカになるにゃ」
「……産んでくれるのですか?」
「……生えてるのかにゃ?」
「いいえ」
「私もにゃ」
「……残念です」
身の危険を感じるにゃ。この話題はやめるのにゃ。




