05-07.勢揃い
「大収穫ね♪」
国に戻った私は、真っ先にビルフの下へ向かった。
彼女は丁度良く執務室で仕事中だった。まさか大量の空飛ぶ魔物たちが近づいてきても気にせず仕事を続けているとは。堂々としたやつにゃ。
スフィアたちは魔物たちを新たに建築しておいた専用の厩舎に案内している。スタッフへの引き継ぎが終わったらそのまま母さんの下へ向かってもらう予定だ。
私は先にビルフと話を付けておこう。
早速人払いを済ませ、旅の成果を報告した。
「ふっふ~ん♪ 伊達に一週間も掛けてないにゃ♪」
あれから更にいっぱい捕まえてきたにゃ♪
「三日の予定だったのに。まあこの成果を見せつけられては文句も言えないわね」
そうにゃろ♪ そうにゃろ♪
「そういうおみゃあはどうなのにゃ? 一週間もあったら王位の簒奪は済んだのかにゃ?」
「ええ。ばっちりよ」
「……マジかにゃ?」
「冗談よ♪」
こんにゃろ♪
「まだまだアズキたちには働いてもらわないとだもの♪ 追い出すわけにはいかないわ♪」
そうにゃ。飛行船を完成させるのはこれからにゃ。
「これだけワイバーンを確保出来たのなら部隊の設立も夢じゃないわね」
「残念にゃ。ワイバーンは冷気に弱いにゃ」
暖房ぬくぬくの専用竜舎にご案内にゃ。
「良いのよ。途中までは飛行船で運べば」
「母船と高機動戦闘機にゃ♪」
「そゆこと♪」
そもそもワイバーンたち自体は、言う程大した魔力も持たんにゃ。あくまで狙いはストームロードとセレスティアルにゃ。ワイバーン部隊のお陰でセレスティアルの捕獲にも成功したにゃ♪ 私の愛機にするにゃ♪ そう言ったらスフィアにつねられたにゃ♪ にゃふふ♪
「あなたも随分魔力量が増えたわね」
「わかるのにゃ?」
しもべが増えた影響にゃ♪
「ええ♪ 私って多才なの♪ 魔力視もバッチリよ♪」
自分で言うだけのことはあるにゃ。
「スフィアたちはお母様の方を優先したのね」
「私だけはおみゃあを優先してやったにゃ♪ ありがたく思うにゃ♪」
「どうせ変な気を遣っただけでしょ。グラシアの代わりに顔を出してあげればいいじゃない。親子の感動の再会よ。それにお母様だって待ちかねていたわ」
バレバレにゃ。
「おみゃあこそ、ポルカに会う心の準備は出来てるにゃ?」
「楽しみだわ♪」
こいつ何も気にしてないにゃ。……もちろんそんなわけないにゃ。
「先に言っとくにゃ。ポルカはおみゃあのこと嫌いにゃ」
「ちゃんと聞いてるわよ。ポルカのお母様は妾の……それも奴隷階級の方だったって。私は、ビビアンはそんなポルカを軽んじていた。けが……酷いことを言って蔑んだ。何より、彼女の大切なグラシアを奪い去った。だから私は謝らなければならない。必要な情報は全て調べたわ。出来る限りのことはするつもりよ。ビビアンの代わりにね」
「ちゃんと説明してやるにゃ。ポルカなら大丈夫にゃ」
「ダメよ。それではやり返せなくなってしまうじゃない」
「おみゃあにやり返したって意味ないにゃ」
「そんなことないわ。復讐って大切よ」
「だとしてもにゃ。ポルカ自身が後で傷付くにゃ」
「ならなんでまだ話していないのよ。それこそアズキも必要だと思った証拠でしょう?」
「違うにゃ。出しゃばらなかっただけにゃ。それにもっと話すことはいっぱいあったにゃ。おみゃあはまだまだスフィアハーレムとして認められていないにゃ」
「ひどっ!? うぅ……それはあんまりよぉ……」
「頑張るにゃ♪ ポルカと良い関係を築けばすぐにゃ♪」
「……なるほどね。だから秘密を持つなと言うのね」
「期待してるにゃ♪」
そろそろ皆も……噂をすればにゃ♪
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「ビビアン!? 何故ここに!?」
「……ほう。これは意なことを」
わざわざ仮面を被り直し、ビルフモードで応えた。
「惚けても無駄ですわ! わたくしにはわかりましてよ!」
凄いにゃ。まさか一目で気が付くとは思わなかったにゃ。
「クックック……」
「何がおかしいんですの!? 何故あなたがお姉様と一緒におりますの!? さてはその仮面で!? いえ! あのビビアンがそんなに賢い筈はありませんわ!!」
ありゃま。
「ポルカ。あの人は」
「キナコちゃん。少し待ってくださるかしら」
仮面を外し、口調を戻したビルフが遮った。
「久しぶりね。ポルカ。あなたに会えて嬉しいわ」
「っ!? 誰ですの!? あなたビビアンじゃありませんわね!?」
早っ!?
「私はビビアンよ。アズキとキナコちゃんに救われて心を入れ替えたの」
「そんな筈ありませんわ!? はっ!? さてはあなたも記憶喪失に!?」
「まあそんなところよ。けどだからって、あなたにしてきたことから逃げるつもりはないわ」
「それは……!?」
ポルカは複雑そうだ。
「っ!! わたくしはあなたを許しますわ!!」
「え……?」
ポルカの突然の宣言に驚きで固まるビビアン。
「どんな理由があるにせよお姉様たちが側に置いているんですもの! ならわたくしも許しますわ! 当然ですのよ!」
「……あはは~……どうしよう、これ」
ビルフは助けでも求めるかのように、こちらへ視線を向けてきた。完全に想定外の状況らしい。
「父ちゃん母ちゃん。アリシア。それにポルカ。皆に伝えなきゃならないことがあるにゃ」
仕方ないにゃ。こうなったら私から話を切り出すにゃ。
「わかってるさ。お前はグラシアじゃないんだろ」
父ちゃん……。
「けどお姉ちゃん……お姉ちゃんもお姉ちゃん。私のお姉ちゃん……」
アリシアが抱き締めてくれた。
「あなたも私の娘よ。アズキ」
母ちゃんが私とアリシアを纏めて抱き締めた。
「……ビビアン……お姉様もそうなんですの?」
「……ええ。私とアズキは別の世界から来たの。元の人格が死亡した肉体に乗り移ったの。私がグラシアを殺したのよ。だからアズキはこの世界にやってきた。そして私もまた罰を受けて生まれ変わったわ。本当に償うべき相手はまだ残っていたから」
「違いますわ!!」
「違わないわ」
「それじゃあグラシアはどうなりますの!? あの子は何も悪いことなんてしていませんわ!!」
「グラシアも私を裁くべき人だから」
「グラシアはもうどこにもいませんわ!!」
「……そうね」
「お姉様の理論は破綻していますわ! 憎むべきはビビアンですわ! グラシアを愛していたわたくしが! アズキお姉様を愛するようになったわたくしが! お姉様を責められる筈がありませんわ!!」
……ポルカは裏切ったりなんてしてないにゃ。だからそんな風に泣いちゃダメにゃ。
「……ごめんなさい」
「……気の利かないお姉様ですわね。眼の前で妹が泣いているんですのよ。謝罪なんかより抱き締めてくださいまし」
「……」
ポルカは凄いにゃ……。
私も頑張るにゃ……。
「すまんにゃ。父ちゃん母ちゃん。アリシア。もうグラシアは返してやれないにゃ」
「空気読んでお姉ちゃん」
「そうよ。アズキ」
「もうわかっていると言ったろうが」
……ありがとにゃ。




