05-04.捜索隊
「それじゃあ任せるにゃ。精々上手くやるにゃ」
「ええ♪ 帰ってきたらあなたたちの居場所は無いと思いなさい♪」
そうなったら最高にゃ。けど無理にゃ。流石に調子に乗りすぎにゃ。
「油断して足下掬われるんじゃにゃいぞ」
ちょっと心配にゃ。けど信じてやるにゃ。ビルフとしてこれまでいっぱい頑張ってくれたにゃ。お陰で国を預けて出かけられるにゃ。この調子ならいつかヨモギと呼んでやるのも吝かじゃないにゃ。
私はスフィアと銀狼をお供に旅立った。
とはいえ二、三日で帰って来る予定だ。目的は意思の疎通が可能な魔物たちの勧誘だ。わんわんと同程度以上の魔力と知性を持つ魔物たちと契約を結び、飛行船のバッテリー代わりになってもらいたいのだ。
欲を言えば、風魔術の扱いに長けた種族が望ましい。グリフォンなんかが見つかれば言う事無しにゃ。
「どうにゃ? 見つかりそうかにゃ?」
「今のところはなんとも」
『我もだ。それらしい気配は感じられん』
ありゃま。
「にゃんかないのか? 魔物たちのコミュニティ的なやつ」
『少なくとも我は知らん』
ボッチめ。
「ギルドの目撃情報はどうにゃ? そろそろ一回降りて聞きに行くにゃ?」
「もう少し飛んでからにしましょう。離陸には最も魔力を使いますから」
出来るだけ遠くに行くにゃ。いっそ南国まで飛んで行きたいところにゃ。流石に遠すぎて無理にゃけど。
やっぱりさっさと王位を譲って、私たちはもっとフットワーク軽くする必要があるにゃ。
「多少遠くても我々の目的に沿う魔物であれば気付ける筈です」
重要なのは魔力量にゃ。竜の上位種が見つかれば言う事無しにゃ。他にも「ミスリル・タートル」「カーバンクル」みたいな蓄積系でもいいにゃ。ついでに「エルダートレント」もいたら狩っていくにゃ。飛行船の素材にうってつけにゃ。
後は「風精」や「ウィンド・ワイバーン」みたいな直接風を操る奴らも重要にゃ。
特にウィンド・ワイバーンの上位種である「ストーム・ロード・ワイバーン」や、希少種の「セレスティアル・ワイバーン」なんかが見つかれば最高にゃ。
前者には通常のウィンド・ワイバーンを率いる性質があるにゃ。後者は通常種より遥かに高い知性と魔力を持っていると言われているにゃ。
こればかりはスフィアも見たことが無いにゃ。そもそもノルド周辺の北国には生息していないにゃ。たぶん下降気流のせいにゃ。飛行効率が良い南国に生息している筈にゃ。
やっぱ南には行かなきゃならんにゃ。今回はダメ元と割り切って、次回はもっと期間を設けて探しに出るべきかもしれんにゃ。
「ゴーレムはどうにゃ? なんなら船に直接繋いでみるのも手じゃないのかにゃ?」
「ゴーレムはそれ程魔力を持ちません。地脈から直接供給を受けるものなので。飛行船の動力としては不適切です」
そうか。それは知らんかったにゃ。
「似たような理屈でトレント系も不向きですね。たとえ船上栽培に成功しても大した魔力は生み出さないでしょう」
なるへそ。
「他に魔力をたっぷり持ってそうな魔物はおらんのかにゃ。わんわんの同族でもいいにゃよ?」
『我も会ったことが無い』
残念にゃ。
「わんわんにも恋人の一匹くらい作ってやりたいものにゃ」
『……』
痛いにゃ。なんで爪立てるにゃ。
「この辺りで探すならば、『シルバー・レイス・オウル』か『クリスタル・ホーン・ディア』辺りでしょうか。どちらも希少種ですが」
どっちも生息地は森の中にゃ。魔力探知が出来るなら見つけること自体はそう難しくない筈にゃ。けどそもそもの個体数が少なすぎるにゃ。って前にスフィアが言ってたにゃ。
「あれはどうなんにゃ? モルファライナ?」
だったかにゃ?
「見つけたら狩りますよ。素材としては優秀ですから」
あいつも珍しいらしいにゃ。見っけたら儲けもんにゃ。ビルフにもインナー作ってやるにゃ。暗殺は危険にゃ。
『我は地上に降りよう』
「はい。下降は?」
『必要無い』
「頑張るにゃ。見つけたらいっぱい撫でてやるにゃ」
「ワォォォォォォオオオン!!!」
わんわんが私の腕から飛び出した。着地の寸前で元の巨体を取り戻し、あっという間に走り去って行った。
もう見えんにゃ。そんなに離れて大丈夫かにゃ? 契約した私の位置はどこに居てもわかるそうにゃけど。
「私たちも飛ばしますよ。アズキ」
「おうにゃ♪ スリル満点の空の旅を期待するにゃ♪」
「はい♪ 全速前進です♪」
スフィアは空中でグライダーを収納し、私たちを包む風の繭を鋭く尖らせ、まるでミサイルのように飛び出した。
これも飛行船研究の賜物にゃ。スフィアの飛行魔術も格段の進歩を遂げた。案外南の国に行くのも難しくないかもしれんにゃ。魔力さえ保てばの話にゃが。
今のスフィアは紋様の力で魔術を増幅させているにゃ。この状態はあまり長くは保たんのにゃ。そもそもスフィア以外には使いこなせない技術にゃ。ある程度の保有魔力量がなければ枯渇してしまうにゃ。危険な技術にゃ。
スフィアはその後も飛び続けた。私を抱えて。




