05-01.計画の練り直し
「おさらいにゃ」
今この国は、孤立無援の状態だ。
なんなら名前も無い。既にノルド王国の主権はローゼンバーグ元伯爵家に移してある。
「それはダメよ! 名前はすぐに決めるべきだわ!」
「まだ話の途中にゃ! 後にするにゃ!」
ふしゃぁーーーー!!
「ご、ごめんなさい」
わかればいいにゃ。
「話を続けるにゃ」
今のノルド王国の王は元伯爵、つまりはビビアンの父だ。
「まあ♪ 私お姫様なのね♪」
「ふしゅ」
「ごめんなさい!」
いかんにゃ。何故か怒りが抑えきれんにゃ。やっぱこの身体はビビアンを嫌っているのにゃ。それも当然にゃ。自分を殺した相手にゃ。そうそう許せる筈がないのにゃ。たとえ中身が自分と同じように、異世界から転生した何者かに入れ替わっていようともだ。
こいつは「ヨモギ」と口にしたにゃ。アズキとキナコから連想してみせたにゃ。間違いにゃくこの世界の者じゃないにゃ。この国の貴族であったビビアンである筈がないにゃ。
だからその言葉は信じるにゃ。
なんにゃら今いる誰かがビビアンに転生した経緯と、私がグラシアに転生した経緯もそっくりにゃ。たぶん転生時に肉体の損傷も僅かに回復するにゃ。私は餓死したグラシアの肉体で走ることが出来たにゃ。
ビビアンも転生したのは少し前の筈にゃ。それでどうにか命を繋ぎ止めたにゃ。ビビアン本人は獄中で死を迎えていたにゃ。因果応報にゃ。可哀想とは言うまいよ。
けど今のこやつは何にも悪いことなんてしてないにゃ。生まれた時から牢獄に繋がれていたにゃ。少しは優しくしてやるにゃ。ヨモギは嫌だけど、ビビアン以外の名前もあげたいくらいにゃ。
そう頭ではわかっているにゃ。けど身体が勝手に威嚇しようとするにゃ。久々にゃ。スフィアとも最初はこうだったにゃ。そうにゃ。スフィアとやったことをなぞってみるにゃ。それで問題解決にゃ。
「ちょっと休憩にゃ。おみゃあは病み上がりにゃ。だから特別にゃ。私を撫でてみるにゃ」
「いいの!?」
「しゃぁー!」
「なんで!?」
この流れも懐かしいにゃ。
「がっとくるにゃ! そんなことしたら驚いて出るにゃ!」
「なにそれ可愛い!?」
「うるさいにゃ! 落ち着くにゃ! しゃぁーーー!!!」
「ひぃっ!?」
もしかしておみゃあも同じかにゃ? グラシアへの恐怖を身体が覚えているのにゃ?
「す、すまんにゃ。本意じゃ無いにゃ。この身体が勝手に反応しちまうにゃ」
「そ、そう。私はよっぽど酷いことをしてきたのね。謝罪するわ」
「違うにゃ。それはおみゃあじゃないにゃ。だから私も頑張るにゃ。おみゃあも協力するにゃ」
「え、ええ。ありがとう。私はどうしたらいいのかしら?」
「ゆっくりにゃ。丁寧に。そうにゃ。スフィアが手を貸してやるにゃ。私の顎を撫でさせるにゃ。いんや。この身体の扱い方を一番理解しているのはスフィアにゃ。細かいことは任せるにゃ」
「はい♪ アズキ♪」
テンション高めのスフィアは、それでも丁寧な手つきでヨモギ(仮)の手を導いた。
「(ゴロゴロ)」
「ちょっろ♪」
「あぁん?」
「ふふふ♪」
おい待て! 調子に乗るにゃ!?
「シャァーーーーーーーー!!!」
「きゃっ!?」
これ前にもやった流れにゃ!!
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「ゴロゴロにゃぁ~ん♪」
……あれ?
「はぁ~い♪ トントントン♪」
「ふにゃ~……」
くっ! そこはマズいにゃ! そこ触っていいのはスフィアだけにゃ! こりゃスフィア! 何を微笑ましげに見守っているにゃ! 止めるにゃ! これはシャレにならんにゃ!
「ふしゅ」
「おっと♪」
くっ! やめ時も完璧にゃ!
「……ご苦労。気持ちよかったにゃ。免許皆伝にゃ」
「やったわ♪」
ちくせう……なんか悔しいにゃ。
「おみゃあの新しい名前を考えるにゃ」
「あら。やっぱりヨモギじゃだめかしら」
「ビビアンだって偽名くらい名乗るにゃ。でなきゃおかしいにゃ」
「なるほど。お姫様のロールプレイの一環としてなのね」
「そうにゃ。おみゃあには火種になってもらいたいにゃ」
「折角終わらせた戦争をもう一度起こすつもりなの?」
「そこまではしないにゃ。ただ煽るだけにゃ。ローゼンバーグの正統後継者の存在を内外に知らしめるにゃ。それでまた一つ奴らがこの地に攻め込めない理由が産まれるにゃ」
「攻め込む理由じゃなくて?」
「攻め込んだりしないにゃ。むしろ全力で守らせるにゃ。そのためのおみゃあにゃ。これはローゼンバーグにとっても都合が良い事なのにゃ」
「正統後継者ってそういうことなのね」
「そうにゃ。だから早く次の王を立てるにゃ。おみゃあはその王に嫁ぐにゃ。これでローゼンバーグは更に調子に乗る筈にゃ。わざわざ攻め落とすまでもなく、この国は自分たちのものであると喧伝するにゃ。にゃから私たちはまだ新しい国名を名乗らんのにゃ。それもこれもローゼンバーグの勘違いを助長させるためなのにゃ」
「私どうせなら、あなたのお嫁さんになりたいわ」
「ふざけんにゃ。調子に乗るにゃ。私の伴侶は生涯スフィアただ一人にゃ」
スフィアがハーレムを作る分には止めはしにゃいがにゃ。
「まだ撫で足りないみたいね」
「やめるにゃ! 言ったはずにゃ! おみゃあは自分の運命を呪うと! 私は元々こうするつもりだったにゃ! 今更計画は変えられないにゃ! おみゃあには悪いとは思ってるにゃ! けど必要なことなんにゃ! この国には時間が必要にゃ! おみゃあの存在が必要不可欠なのにゃ! だから生かしたにゃ! 憎き仇を救おうとしたのにゃ! 勘違いするにゃ! 私はお前を許してなんていないにゃ! おみゃあに罪がないとわかった上でどうしても許せないにゃ! だから間違えるにゃ! 私に必要以上に近づくにゃ!」
……すまんにゃ。本当は許してやりたいにゃ。見逃してやりたいのにゃ。けどどうしても。それだけはできないにゃ。
「話はわかったわ。いいわよ。やってやろうじゃない♪」
「……助かるにゃ」
「私が王位を簒奪してあげるわ♪ その方が説得力も産まれるでしょう♪」
「何をするつもりにゃ?」
「先ずはあなたに近づくわ。それでメロメロにするの♪ 元主としての立場も役立つわ♪」
「ふざけんにゃ」
「あなたこそふざけたこと言ってるじゃない。それって要するに、自分たちがこの国を見捨てて逃げることを前提とした策なんでしょ。そんな中途半端が許される筈ないじゃない」
……痛いところを突かれたにゃ。まだその件は何も話していないのに。こいつはやっぱりビビアンとは別人にゃ。頭の回転半端ないにゃ。
「まあ私に任せておきなさいって♪ きっと私はあなたたちを幸せにするために遣わされたのだから♪」
……そうか。スフィアはあの話もしてたのか。
「私を誰かに押し付けようったってそうはいかないわよ♪」
完全に見透かされているにゃ。余計なこと喋りすぎにゃ。
「もっと色々教えて頂戴♪ 一緒により良い作戦を考えてあげるわ♪」
「……スフィア。今からでももっかいボロボロにできないかにゃ?」
「そんな酷いこと言わないであげてください」
「正直物言わぬ傀儡の方が楽だったにゃ」
「ぶっちゃけすぎよ!? 普通に最低よ!?」
「おみゃあは一度私を殺しているにゃ。雑にもなるにゃ」
「くっ! 私じゃないって言ってくれたくせに!」
すまんにゃ。それはそれにゃ。そもそも計画時点でおみゃあのことは勘定に入れて無かったにゃ。誰が思うにゃ。また転生者が現れるにゃんて。
「アズキ。どうかその辺で。話を進めましょう。彼女も協力してくれると言っているのですから」
「しゃあないにゃ。状況が変わったにゃ。計画も練り直すにゃ。臨機応変にゃ」
「素晴らしいわ♪ 私が役立つところを見せてあげるわ♪」
精々期待してやるにゃ。本当におみゃあが私かスフィアに幸せを届ける転生者だって言うなら、この状況を覆してみせるにゃ。でなきゃ私の計画に従ってもらうだけにゃ。




