04-08.逆転主従
「専属メイドのキナコちゃんにゃ」
実は私の本体にゃ。私は傀儡の王様にゃ。実態は全部スフィアがやってくれてるにゃ。ここだけの話にゃ。
「「「「なっ!? ななな!?」」」」
なな?
「「「「何でお前たちがぁぁぁぁあああ!?!?!」」」」
驚きすぎにゃ。
「おみゃあたちこそ相変わらずにゃ。けど安心しろにゃ私が主になってやるにゃ。いいから黙って付いてくるにゃ」
洞窟暮らしはもう飽きたにゃろ。いい加減、おひさま浴びて生きていくにゃ。
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「何者ですか!? この、ならず者たちは……っ!?」
最近出来たばかりの部下が、わなわなと震えながら、私の後ろにゾロゾロと続く盗賊どもを指差した。
「助っ人にゃ。それより頼んでいた情報は掴めたかにゃ?」
「はっ! ローゼンバーグめは!」
「違うにゃ! そっちの話じゃないにゃ!」
「っ!? と、おっしゃいますと……!?」
……こいつ、全然使えんにゃ。やっぱりあのメガネ君でも勧誘すべきにゃ。
「『銀狼』の目撃情報にゃ。あれほど念を押した筈にゃ。集めていないというなら、おみゃあは今すぐクビにゃ」
「も!! 申し訳ございませんっ!!」
潔いのは良いところにゃ。けど無能は要らんにゃ。あと怯えすぎにゃ。今にもおしっこちびりそうにゃ。
「出てけにゃ! おみゃあは下積みからやり直すにゃ!」
「は! ははぁっ!! 御慈悲に感謝いたします!!」
側近(仮)は、なぜか感涙にむせびながら部屋を去っていった。
……今の、なんであいつ喜んでたにゃ?
さては、このヤバい職場から一抜けしたかったのかにゃ?
もしや、私は利用されたのかにゃ……?
「やり直しの機会を与えたからですよ。彼はこの場で首を落とされるものと覚悟していたのです」
「そんなことするわけないにゃ。人手なんていくらあっても足りないにゃ。でなきゃ盗賊どもなんぞ、わざわざ拾いに行ったりなんてしないにゃ」
「はい♪ そうですね♪ アズキ♪」
何故だかスフィアも嬉しそうにゃ。
「やっぱり私たちで探しに行くにゃ。そもそもあいつがこっち側に渡ってきているとは限らないにゃ」
以前銀狼と出会ったのも、ローゼンバーグ伯爵領にゃ。まだあの村の近くにいるかもしれないにゃ。
「いっそあの村の人たちも攫っちまうにゃ」
それで一つ憂いが無くなるにゃ。
「やめておきましょう。こちらが生き残れると決まったわけではないのです」
それもそうにゃ。救おうとしてかえって地獄に引きずり込むんじゃ意味が無いにゃ。
「それよりもこの者たちはどうするのですか?」
「なんでもいいから仕事を与えるにゃ」
首輪付けて飼いならすにゃ。盗賊共に後ろからチマチマ刺されるのだって致命傷になりかねないにゃ。今のこの国は。
「おみゃあら。これが最後のチャンスにゃ。もし何かやらかしたら即刻首を叩き落とすにゃ。そう心して仕事に取り掛かるにゃ」
「おう! 陛下!」
「「「「「「「「「「おう!!」」」」」」」」」」
「素直な良い子には優しくしてやるにゃ。飯もたらふく……は無理にゃが、飢えん程度には食わせてやるにゃ。今頑張れば他の皆も煙たがったりしないにゃ。これは本当にチャンスなのにゃ。困った人々に漬け込むとでも思えばいいにゃ。平時ならおみゃあらなんて排斥されるに決まってるにゃ。けど今の皆はそんなことしてる余裕が無いにゃ。だから気張るにゃ。過去は全部忘れて必死に汗水流して働くにゃ」
「「「「「「「「「「「はい!!!」」」」」」」」」」」
よし。これで労働力が確保出来たにゃ。本当にちゃんと働くにゃよ? 不器用でもなんでも構わんにゃ。今は仕事が溢れてるにゃ。ここで自信を付けんでいつ付けるにゃ。
あかんにゃ。不安のあまり説教くさくなってしまうにゃ。ヤサグレ者たちには逆効果にゃ。
さっさと預けて次に行くにゃ。私には他にもやることがいっぱいあるにゃ。
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「陛下! 『銀狼』の目撃報告が!」
「でかしたにゃ!」
やっぱ使えるメガネにゃ!
「スフィア! すぐ行くにゃ!」
「キナコですよ。アズキ」
スフィアと共に修復したグライダーで現場に急行した。
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『カッカッカ』
「わ~い♪」
「つぎぼく~♪」
「わたしー!」
「じゅんばんー!」
……なんにゃこれ?
……巨大狼が滑り台になってるにゃ。
近くの村の子たちにゃ? あのポンコツトリオよりずっと度胸があるにゃ。怖いもの知らずにゃ。
『子猫よ。お前もどうだ?』
「頼むにゃ」
「「「「え~! お姉ちゃんずる~い!」」」」
割り込んで悪かったにゃ。そんなつもりはなかったにゃ。
『順番だ。カッカッカ♪』
こいつ楽しそうにゃ。人間好きすぎにゃ。やっぱり向いてるにゃ。
「にゃっふ~~~!」
それはそれとして楽しいにゃ。銀狼滑り台。
「なんかデカくなってにゃいか?」
よく考えたら前見た時と別物にゃ。成長期にゃ?
「アズキ。遊んでいる場合じゃありませんよ」
「そうだったにゃ。けどもう一回」
「「「「お姉ちゃん!」」」」
冗談にゃ。
『何用だ?』
「前回の続きにゃ。私に従うにゃ」
『ふむ。何も変わっておらぬようだが。それでどう我を従えるつもりだ』
「私は王様になったにゃ。だからおみゃあをこの国の守護獣として招きたいにゃ」
永久就職にゃ。王様の仕事は皆に仕事させることにゃ。
「あくまで力が必要だと言うなら私が相手になりましょう」
スフィアが一歩前に出た。
『カッカッカ♪ 王ときたか♪ 結構結構♪ 我が主と定めし者の主からの誘いだ♪ 否はない♪』
めっちゃごきげんにゃ。尻尾ブンブンにゃ。
スフィアはあれ以来メイド服を着たままにゃ。正体を隠しているからにゃ。王と専属メイドなら二人一組で行動しやすいにゃ。立場が逆転しちゃったにゃ。けどそれがこの銀狼にはツボったみたいにゃ。結果オーライにゃ。
「え~!」
「お姉ちゃんたち~!」
「つれてっちゃうの~!」
「わんわん!」
ぶふっ! わんわん♪
「おみゃあらも連れてくにゃ。ここ居たら危ないにゃ。今は皆王都に集めてるにゃ。村にも相談に行きたいから案内してくれにゃ」
「おうとー?」
「おひっこし?」
「え~!」
「わんわん……」
賑やかな子たちにゃ♪
「わんわん! 最初の命令にゃ!」
『それが我の名なのか? 名付けてくれたのか?』
満更でもなさそうにゃ。
「そうにゃ! この子たちを背に乗せてやるにゃ! 村まで運んでやるにゃ! それが最初の命令にゃ!」
『心得た。我が主よ』
「「「「わ~い♪」」」」
メッチャ素直にゃ。わんわんも。子どもたちも。




