04-06.終戦
「かっ!? かはっ!!」
にゃにゃっ!?
スフィアが血を吐いた!?
「スフィア!」
「げほっごほっ、ぐっ……」
「スフィア! スフィア!?」
「だ……大丈夫です。……やりすぎました」
スフィアは収納魔術で空間に穴を開け、瓶を一つ取り出した。そのまま一気に飲み干した。
「……ふぅ。ご心配をお掛けしました」
「まだ顔が真っ青にゃ!?」
「ただの魔力枯渇です。すぐ回復……あ」
なんにゃ!?
「あぁ! なんてこと!?」
「何がにゃ!? いったいどうしたにゃ!? って!?」
グライダーが! バラバラにゃ!?
「そんなぁ!!」
スフィアが凍りついた床に突っ伏してしまった。冷たくないにゃ?
「しまい忘れたばっかりに……」
「仕方ないにゃ。幸い骨組みは無事っぽいにゃ。前のも持ってるにゃろ?」
竜の翼膜のやつ。あれに付け替えれば飛べそうにゃ。
「はい……ぐすん……」
ダメージは大きそうにゃ。にゃんまんだぶ。
もるふぉらいにゃ? のしまく? だったかにゃ? 新しい方のやつは極端な冷気に弱かったみたいにゃ。むしろ気付けてよかったにゃ。飛んでる最中だったらまずかったにゃ。
みゃあ、北国の上空飛んでても問題無かったあたり、スフィアの術の威力の方がおかしかっただけだとは思うにゃが。
「こいつらどうなってるにゃ? 皆死んじゃったにゃ?」
「……いいえ。まだ辛うじて息はありますよ」
凄いにゃ。そんな制御まで出来るんにゃ。暴走してブッパしたわけじゃなかったのにゃ。
「ただ遠からず命を落とすでしょう。このままでは」
「スフィアの魔力は持つんにゃ?」
そもそもこっから出られるんかにゃ? すっごいカチカチにゃよ? さっき開けた穴も凍りついて塞がってるにゃよ?
「正直今の私に解呪の魔力はありません」
えぇ……やっぱ考えなしだったにゃ……なけなしの理性が命だけは守ったにゃ……。
「術を解いたら全部消えるとかにゃいのか?」
「ありません。彼らを救うには人手が必要です」
「人の手で壊せるもんなのかにゃ?」
「ええまあ。方法はありますよ」
「にゃら呼ぶにゃ。放っておいたらきっと母ちゃんが許してくれないにゃ」
そもそも戦争を終わらせるのも面倒なことになるにゃ。城の本部どころか反乱軍の首謀者も一緒に凍っちゃったにゃ。これじゃあ誰も責任取れないにゃ。
「……」
「嫌かにゃ? スフィアが嫌ならべつにいいにゃ。このまま放って一緒に逃げるにゃ。母ちゃんのことは忘れるにゃ」
「……意地悪」
「にゃふふ♪ スフィアはやっぱり運が悪いにゃ♪」
きっと私と出会ったのが運の尽きにゃ♪
「まあ、後は任せるにゃ。全部私の手柄にしてやるにゃ♪」
「待ってください。いったいどうするつもりですか? 私はまだ戦えませんよ? 魔力が完全に尽きてしまったんです。グライダーを直している余裕もありません。アズキも思い知った筈です。この国の人間は猫耳族の……獣人の言葉になんて耳を傾けはしないのです」
「そんな筈無いにゃ。母ちゃんが証明してくれたにゃ」
「それは……実力が備わっていたからで……」
「違うにゃ。必要なのはギブアンドテイクにゃ。力や技術そのものが重要なわけじゃないんにゃ」
「我々に差し出せるものなんて」
「あるにゃ。この国の誰もが欲しがっているものにゃ」
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「おい! 気を付けろ! 絶対に割るんじゃねえぞ!」
「わぁってるっての! んな楽な死に方させてやるわけねえだろ!」
「次はこっちだ! 運び出せ!」
「まだまだあんぞ! ほら動け! ちんたらすんな!」
わいわいがやがや。
凍りついた謁見の間に大勢の兵士たちが乗り込んできた。中には獣人もいる。彼らは協力して後始末を始めた。
次々と凍りついた王侯貴族たちを運び出していく。
彼らが死に物狂いで王都を守っていた間も、呑気にヌクヌクと部屋に立て籠もっていた戦犯たち。掛ける情は無い。
だってそうにゃろ? まともな権力者はこの状況で謁見の間に集まったりしないにゃ。前線に近づいて少しでも勝機を見出そうと奮闘していた筈にゃ。
バカ王子を諌めて降伏を促す目的にゃらともかくにゃ。そんにゃまともな奴は早々に殺されたにゃ。先王と一緒にゃ。
戦争は終わったにゃ。喧嘩両成敗。てわけにもいかんにゃろうが、双方の総大将がリタイアした状況で続ける意味も無い筈にゃ。
どっちの本陣も完全にぶっ壊されたにゃ。反乱軍も壊滅的にゃ。まともな奴から救助を済ませて帰るだろうにゃ。まともじゃにゃい奴らは右倣えで帰っていくにゃ。
まだ暫く母ちゃんには会えそうにないにゃ。きっと今も大忙しにゃ。私もにゃにか手伝えるかにゃ? いやいや。今のこれも必要なことにゃ。再び正体を隠して私の背後で顔を伏せるスフィアを連れ回すのも大切なお役目にゃ。
「にゃぁっはっはっは! しっかり働くにゃ! おみゃあらも凍りつきたくにゃかったらにゃ! にゃっはっはっは!」
「……やっぱあんた。間違いなくあの姐さんの娘だわ」
「おい! ここに一人サボってる奴がいるにゃ!」
「ちょっ!?」
母ちゃんのお守りはどうしたにゃ。さては母ちゃん本人から追い出されたにゃ?
「巻き込まれて凍りつきたくなきゃぁ! さっさと働かせるにゃ!」
「「「「ははっ!」」」」
「なんでだぁ~!?」
黒狼の青年は運び出されていった。
「にゃっふっふ♪ さあ働け働け! こんにゃ奴らに手間取ってる場合じゃないにゃ! 一人でも多くを救うにゃ! さっさと終わらせて前線に急ぐにゃ! 敵も味方も関係なく治療してやるにゃ! 戦争は終わったにゃ! 皆ノルドの国民にゃ! そうでないのもいるかもしれんけどにゃ! んな細かいこと気にすんにゃ! 人も獣人も主も奴隷も平民も貴族も王族も拘っている場合なんかじゃないにゃ! 全部終わったら温かい飯が待ってるにゃ! 少しでも良い気分で飯を食いたいにゃら一人でも多く助けるにゃ! そしたらめっちゃ美味くなるにゃ! 私が保証してやるにゃ! 血生臭い飯なんてすぐに忘れさせてやるにゃ! 絶対にゃ!!」
「「「「「「「「「「ははっ!!」」」」」」」」」」




