04-05.本陣強襲
「にゃっはっはっはっは! にゃぁっはっはっはっは!!」
「「「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」」」
正門前で争っていた兵士たちが、一斉に上空を見上げた。
残念ながら笑い声にではない。その直前に発生した爆音が理由だ。いつも通りスフィアがやってくれましたにゃ。
「聞け!! みにゃの者!!」
「「「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」」」
兵士たちはあっさりと静かになった。全員が空を舞う私たちに視線を向けている。
「争いを即刻止めるにゃ! 今から爆撃を開始するにゃ!」
「「「「「「「「「「「「???」」」」」」」」」」」」
ダメだ。戸惑ってるだけだ。通じてないにゃ。
「撤退せよ!! 散開せよ!! これより無差別攻撃を始めるにゃ! 命が惜しくば全力で逃げ出すにゃ!!!」
スフィアは容赦なく魔術を放った。
放たれたのは巨大な水の塊だ。
家数軒ほどもあるその水塊は、着弾と同時に炸裂し、周囲一体の全てを押し流した。
「「「「「「「「「「「「!?!」」」」」」」」」」」」
地上は瞬時に混乱に陥った。何故ならその一発だけではなかったからだ。本当に無作為に、次から次へと魔術が放たれていく。まるで初級魔法を連射するかのように、超巨大な水塊が何発、何十発と撃ち放たれていく。
背中が熱い。私を後ろから抱きしめるスフィアの身体が熱を放っている。スフィアの袖から覗く手首には、あの紋様が浮かんでいる。きっと全身が光を放っている。魔術を全力で扱うために、紋様の力を最大限まで引き出しているのだ。
魔力残量なんて気にしない豪快な使い方だ。流石のスフィアだってそう長くは続くまい。
けど問題ない。少し脅せば十分にゃ。
「スフィア! もういいにゃ! 次にゃ!」
「……」
「スフィア!!」
「っ!? はい!!」
「どうした!? 大丈夫かにゃ!?」
「い、いえ! 少しスッキリしました!」
……本当か? にゃらいいけど。でも仕返しする相手が微妙に間違ってるにゃ。本当の敵と会うのはこれからにゃ。
「行きます!」
「おうにゃ!」
スフィアは下降姿勢に入り、高台にある連合軍の本拠地に向かって高速で飛び込んだ。
「「「がぁっ!?」」」
何人か吹き飛ばしながら、敵本陣に乗り込んでいく。
「なっ!? なんだ貴様ら!?」
突然飛び込んできた私たちに驚いて、偉そうな奴らが腰を抜かしている。
「ご同行を!」
スフィアは有無を言わさず一人の男を捕まえた。
「っ!? まさか!?」
風の魔術でかろうじて残っていたテントを吹き飛ばし、そのまま私とローゼンバーグ伯爵を抱えて空高く急上昇した。
「ひぃっ!?」
あ~あ。下見ちゃったにゃ。
今度は城に狙いを定め、再び上空から急降下を始めた。
ぐんぐんと城に近づいていく。
「にゃは♪ にゃはははははは♪」
にゃんて素晴らしいスリル♪ これこれ♪ これにゃ♪ 病みつきにゃ♪ スフィア愛してるにゃ♪
「うわぁぁぁぁあああ!?」
おみゃあもちょっとは楽しめにゃ♪
そのままガラスを突き破って直接謁見の間に飛び込んだ。
「「「「「「「!?!?」」」」」」」
「にゃぁっはっはっはっは! にゃぁっはっはっはっは!」
「きゅ~~……」
なんにゃ。このおっさん気絶しちゃったにゃ。
「なっ!? なんだ貴様ら!?」
さっきも聞いたにゃ。一字一句同じにゃ。芸がないにゃ。
「ローゼンバーグだとぉ!? まさかお前たち!」
「援軍……ということですかな?」
「いったいどうやって!?」
「貴様は先程の!!」
外野が騒がしいにゃ。
「……うん? 王が随分と若いにゃ。代替わりしたにゃ?」
「……何故あなたがそこに座っているのですか」
ひぃっ!?
なっ!? 何にゃ今の声!? ス、スフィア!?
「その声は!? オ、オルフェスフィア!! オルフェスフィア・アルビオン!! 貴様が何故ここに!?」
「先王はどうされたのですか」
「なんだその格好は!? 何故生きている!? 報告では始末したと! ええい! 何故戻ってきた!? 今更王妃の地位が惜しくなったか!?」
「答えなさい」
「はっ! さてはまた俺の邪魔をしに!? 貴様も国を盗りに来たか! 皆の者! 惑わされるな! 奴は伯爵と手を組んだ大罪人だ! 我が軍の精強さに恐れをなして自ら特攻を仕掛けてきただけだ! 始末せよ! 即刻始末せよ!」
「……」
ひぃぃ!? なんにゃ!? なんにゃこれ!? スフィアが!? スフィアがおかしいにゃ!? ぶわって! 何で誰も気付かんにゃ!? こんな禍々しい力がわからんにゃ!?
「《熱よ、去れ……》」
え? 痛っ……冷た……い?
「《鼓動を止め、因果を縛り、白銀の枷となれ。万象に沈黙を。我が心に美しき静寂を》」
世界が凍りついていく。
「《グラキエー……タキトゥス》」
白い息と共に吐き出された
完全な静寂が訪れた。
今この場には息をする者すら存在しない。
時ですら歩みを止めてしまったかのように。
この世の全てが静止した。




