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【完結済】転生したら猫耳美少女メイドだった。悪役令嬢に攫われた。 ー 愛知らぬ光の悪役令嬢と気まぐれポンコツ猫娘。南国の楽園を目指す ー  作者: こみやし
03.回り道

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03-10.因果応報


「スフィア。相談があるにゃ」



 ポルカが眠ったタイミングを見計らって声を掛けた。スフィアはすぐに察して防音結界を張ってくれた。


 私はグラシアの最期の記憶をスフィアに伝えた。



「……そんな」


 スフィアはふらりと力が抜けたようにしゃがみこんでしまった。



「泣きたくなる気持ちはわかるにゃ」


「……違うんです」


 ……またやらかしたにゃ。



「そうか。おみゃあだったのか」


 飢えるグラシアに差し入れてくれていたのは。



「気付いていたのに……救えた筈だったのに……」


「仕方ないにゃ。あの女がそこまで愚かだなんて気付ける筈が無いにゃ」


 ビビアン・フォン・ローゼンバーグ。妹から奪ったグラシアを鎖で縛り、監禁し、飢餓の果に亡き者とした憎き仇。生粋のノルド王国貴族らしい愚か者。



「……私は諦めたんです。猫耳族の扱いが変わる筈なんてないと。深く踏み込むこともせず。ただ自己満足で僅かな食事を届けたのです。私のせいです。私のせいで勘違いしたのでしょう。猫耳族の頑強さを誤認したのです。だから」


「おみゃあのせいじゃないにゃ」


 そんなバカな話は無いにゃ。人間サイズの生き物がパン一つで何週間も生きられると思う方があり得ないことにゃ。あの女がバカ過ぎただけなのにゃ。



「……きっと今頃、私たちが手を下すまでもなく、あの女は地獄を見ているにゃ」


「……そうですね」


 あのタイミングでの戦争にゃ。休み明けに娘を送り出した直後にゃ。伯爵が娘を呼び戻していたとは思えないにゃ。きっと切り捨てられたにゃ。あまりの愚かしさに親にすら見限られていたのにゃ。


 それでも人質として、スフィアを逃がした協力者として、槍玉に上げられた筈にゃ。捕まって尋問でも受けた筈にゃ。


 もう今頃は生きてすらいないかもしれないにゃ。私たちは図らずも復讐を成し遂げていたのにゃ。


 因果応報にゃ。グラシアの命を奪ったから私が転生したにゃ。私が転生してきたからスフィアは攫われたにゃ。


 スフィアが私に攫われた直後に父の反乱にゃ。間違いなくノルド王家はビビアンの関与を疑うにゃ。自明の理にゃ。


 タイミングが完璧過ぎるにゃ。或いはあいつの運が悪すぎるにゃ。きっと何も知らないままだったにゃ。わけもわからず捕縛されて、伯爵の真意を問われたにゃ。人質として使えないとわかれば嬲りものにされたにゃ。反逆者として幽閉されたにゃ。なんて皮肉な運命にゃ。今度は自分が牢獄に縛られることになったのにゃ。愚かな女にゃ。



「……調べますか? 知って溜飲を下げたいですか?」


「私は怒っているにゃ。本当はこの手でケジメをつけたいくらいにゃ」


「……そうですね。けれど彼女は」


「そう。ポルカの姉なのにゃ。碌でもない奴にゃが、それでもポルカと血の繋がった姉妹なのにゃ。救うつもりはサラサラないにゃ。けどわざわざトドメを刺しに行くべきなのかは迷っているにゃ。きっとグラシアは今でもポルカの幸せだけを望んでいるのにゃ」


「……」


「スフィアは納得いかんかにゃ?」


「……わかりません」


「やっぱり戻るのは嫌かにゃ?」


「……それは」


「きっとスフィアの名前も使われているにゃ」


 伯爵家の旗頭、或いは伯爵家が匿っていると王家が難癖を付けて。どんな形にせよ、スフィアの実家であるアルビオン公爵家も巻き込まれたのは間違いないにゃ。ビビアンとグラシアの存在がダメ押しになった筈なのにゃ。


 今戻ったら間違いなく命を狙われるにゃ。今度は王子一人のイチャモンじゃ済まないにゃ。ノルド王国そのものがスフィアの敵になったのにゃ。



「何をするにしても割に合わんにゃ」


 復讐相手はもういないかもしれないにゃ。スフィアの名を利用するなと言ったところで、もはや意味なんて無いのかもしれないにゃ。


 ノルド王国は遠からず滅びる国にゃ。国を傾けた悪女としてスフィアの名が使われようと、後世に影響を及ぼす可能性はそう高くないのにゃ。海を越えた先にまでその話が届くことも無いのにゃ。あったとしても誰も気付かんのにゃ。



「にゃにより、私たちが戻ると決めたなら、ポルカが全てを知ることになるのにゃ。そんにゃのグラシアは望まんにゃ」


「……そうですね。これは私たちの都合でしかないのです」


 そうにゃ。ポルカには何の関係も無いことにゃ。


 きっとローゼンバーグ伯爵もそう思って見逃したのにゃ。いいや。それだけじゃないにゃ。きっとポルカが無事に逃げられるように手を回してくれた筈なのにゃ。でなきゃ、あの子一人で私たちを見つけられた筈が無いのにゃ。



「……伯爵は良い奴かもしれんにゃ」


 ポルカのために救うべきなのだろうか。


 ポルカとグラシアを引き離したのはビビアンだとしても、その勝手を見過ごしたのは伯爵にゃ。何よりあの女の父親にゃ。獣人に対する認識はきっと大差無いのにゃ。


 それを悪人とまで呼ぶのは酷なのかもしれんがにゃ。それがノルド王国の常識にゃんだから。強いて言うなら生まれが悪かったにゃ。誰も彼も。運が悪かったのにゃ。



「……似ていますね」


「何がにゃ?」


「ギル様です。アズキとよく似た目をしているのです」


 あれは相手を見失った復讐者の目だったにゃ。私もそんな目をしているのかにゃ? してるかもしれないにゃ。



「ノルドには復讐したい相手がいたのかもしれないにゃ」


 けど。きっともう。



「……」


 スフィア?



「今日のところは休みましょう」


 考える時間が欲しいんにゃな。


 それもいいにゃ。私たちを害する者なんてここにはいないんにゃから。



「スフィア。今日は私が抱きしめてやるにゃ」


「……」


 一人になりたそうにゃ。けどしてやらないにゃ。泣くなら私の胸の中で泣けばいいにゃ。スフィアとポルカ専用にゃ。

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