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【完結済】転生したら猫耳美少女メイドだった。悪役令嬢に攫われた。 ー 愛知らぬ光の悪役令嬢と気まぐれポンコツ猫娘。南国の楽園を目指す ー  作者: こみやし
03.回り道

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03-07.遭難


 うん? あれ? ……にゃにゃっ!?



 なっにゃ!? なんにゃここ!? どこにゃここ!?


 気付いたら見知らぬ天井を見上げていた。どう見ても船の天井じゃない。岩の天井だ。どこか洞窟の中だ。鉄格子のおまけ付き。どう見ても牢屋……。


 まさか拉致られた!? いつ!? どうやって!?



「~♪」


 誰にゃ!?



「お♪ 目ぇ覚めてんじゃねえか♪」


 ガチャガチャと音を立てて鍵を開けた男が牢の中に入ってきた。



「ふ~む♪ はは♪」


 男が覗き込んできた。薄気味悪い笑みだ。目つきがおかしい。あとめっちゃ臭い。どう見ても話術でどうにかなるタイプじゃない。


 けど身体が動かない。逃げ出せない。いったいどうなっているにゃ……。



「……お前は誰にゃ」


「なんだ。その口の聞き方は」


 男が真顔になった。



「俺は命の恩人様だぞ」


 今度はまたニカっと笑みを浮かべた。



「……それは悪かったにゃ。助かったにゃ。感謝するにゃ」


「そうかそうか♪ そりゃいい♪ 素直な奴は好きだぜ♪」


「私も優しい奴は好きにゃ」


「よかったな♪ 俺より優しい奴なんてそうはいねえよ♪」


 なんにゃこいつ……。



「ほれ。口を開けろ」


 っ!?


 乱暴に何かを飲まされた。



「けほっこほっ!」


「おいこぼすんじゃねえよ。もったいねえなぁ」


 喉が焼けそうにゃ!? なんにゃこれ!?



「なんだおめえ。酒飲めねえのか? けどしゃあねえだろ。飲めるもんなんてこれしかねえんだから」


 そう言って今度は自分でグビグビと飲み始めた。



「ぷはぁ~~! まっずい酒だぜ~♪」


 そうか。これは酒の匂いか。にしても臭すぎるにゃ。



「おい動くな」


 痛っ!?



「にゃっ!?」


「あ~あ。見ちまったか。絶対触るなよ。お前、それ抜いたら死ぬからな」


 太ももに木材の破片が突き刺さっている。



「よかったな。普通なら失血死してるとこだったぜ」


 太い血管は避けて刺さっているようだ。それとも獣人の身体は何か違うのだろうか。



「冷静だな」


「……運には自信があるにゃ」


「そうかい。だが残念だな。ここには碌な道具がねえ。あるのはどこぞの海賊が隠した酒だけだ」


 ……いや。そうでもないにゃ。



「酒をありったけ持ってこれないかにゃ?」


「抜くのか? 死んでも知らねえぞ?」


「手を貸してほしいにゃ。道具ならあるにゃ」


 このおっさん、見た目に反してめっちゃ紳士にゃ。それともヘタレかにゃ。私の服は脱がしてなかったにゃ。どころか袖を調べてすらいなかったにゃ。



「ここに刃物があるにゃ。脱がして袖を切り取ってほしいにゃ」


「……マジか」


 おっさんはボソリと呟いてからすぐに動き出した。大量の酒を持ち込み、私のメイド服を脱がして加工し、包帯用の布と猿ぐつわを作って準備を整えた。



「おい。これ咥えろ。そのまんまじゃ舌噛むからな。頼むから死ぬなよ。俺はもう人殺しなんてしたくねえんだ」


 私に猿ぐつわをつけさせ、酒を破片の上から傷口にぶちまけた。



「ぐっ!!」


「耐えろ」


 酒で自分の手も洗い、傷周りの破けたタイツを取り去りながら手際よく準備を整えていく。まるで何度も繰り返して染み付いた作業をなぞるように。傷の様子を確認し、一思いに木片を抜き取った。



「んぐっ!!!!」


 傷口にじゃぶじゃぶと酒を流し込み、メイド服で作った包帯を巻き付けた。



「ぐぅぅぅううううう!!!!」




----------------------




「よう。調子はどうだ?」


「……助かったにゃ」


「おめえさん、根性あんな」


「私はまだ死ぬわけにはいかないにゃ」


「そうかい。誰か待ってんのかい?」


「……そうにゃ。ここに居るのは私一人かにゃ?」


「おう。他には誰も流れ着いてなんていねえよ」


「……ここはどこにゃ? いやその前に。私はアズキにゃ。恩人。おみゃあの名前を教えてくれるかにゃ?」


「……ギルだ」


「ありがとう。ギル。本当に助かったにゃ」


「……いいってことよ」


「ギルはなんでこんなところにいるにゃ?」


「さあね。忘れちまったよ」


 話したくないんにゃ。



「ここはどこにゃ?」


「どこぞの入江だ。元々は海賊のアジトじゃねえか」


 船がなきゃ脱出は難しそうにゃ。それが出来るならギルだって出ていっていた筈にゃ。



「なんで鍵掛けてたにゃ?」


「おめえが出歩いたら困るからだろうが」


 この足で歩き回ってたら血管傷つけて死んでたにゃ。感謝にゃ。



「おみゃあは優しいにゃ」


「よせやい」


 やっぱり私は運が良いにゃ。


 ぐぅ~~。



「飯はねえぞ」


「にゃに!?」


「言ったろ。あるのは酒だけだ」


「おみゃあはどうやって生きてきたにゃ!?」


「もう三日は何も食ってねえ。俺ももう直かもしんねえな」


「酒飲んでる場合じゃないにゃ! 魚取るしかないにゃ!」


「おい待て。その足で潜れるわけねえだろ」


「恩は返すにゃ!」


「おい!」


 ぐっ!!



「だから言ってんだろ。大人しくしてろ。食料はなんとかしてやっから」


「……きっと探してるにゃ。スフィアなら絶対見つけ出してくれるにゃ。信じて待つにゃ」


「そうかい。迎えに来てくれっといいな。そのスフィアとやらが」


「おみゃあのことも絶対に生きて連れ出してやるにゃ。だから諦めるにゃ」


「そうかいそうかい。ありがたくて涙が出るねぇ」


 絶対にゃ。スフィアとポルカが必ず迎えに来るにゃ。それまでの辛抱にゃ。

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