03-06.三倍の愛
「お姉様方。とても大切なお話がありますの」
顔を赤くしたポルカが改まった様子で話を始めた。
大丈夫かにゃ? 風邪かにゃ? 最近忙しすぎたにゃ?
「……昨晩。結界を張り忘れておられましたの」
「「……」」
あうち。
「どうか。お姉様方。船旅の間だけでも……。その……漏れますので……ご遠慮頂けないかと……」
「「はい……すみません……」」
「どうかお気をつけを……アズキお姉様は特に……その……お声が大きいのですわ……」
「「……すみません」」
……恥ずいにゃ。
「……もしかして……これまでも?」
「……はい。気付いておりましたわ」
マジめんご。
「……ポルカは……羨ましいですか?」
「おいこら!」
ポカッ!
「痛っ!?」
「何聞いてるにゃ!? ばっかにゃろ!?」
「……酷いですわ……あんまりですわ」
「……すみません」
スフィアぇ……。
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「……あれからポルカが余所余所しいんです」
「……当たり前にゃ」
「……はぁ」
さてはスフィア。おバカにゃろ?
「なんだなんだ? 嬢ちゃんらどした? 痴話喧嘩か?」
「シッシ。誂うならあっち行くにゃ」
「ははっ♪ まあ頑張んな♪」
わりいにゃ。これは人様に話せないやつなんにゃ。
「……はぁ」
どうしたもんかにゃぁ。
「なんにゃ。ポルカのことも好きににゃったんか」
「……そりゃあ大好きですし愛していますよ。恋人とは違いますが。家族としては」
「そう言い聞かせているにゃ。本当はブレブレにゃ。だから咄嗟に誘いそうになったにゃ」
「そんなんじゃ……ありません……」
「人に散々浮気するなと言っておいてにゃ」
「違います……」
「違わないにゃ。スフィアにとって初めての愛が恋だったにゃ。だからごっちゃになってるにゃ。スフィアに区別をつけることなんて出来ないんにゃ」
「ひどい……」
「浮気してるのはスフィアの方にゃ」
「……違うって言ってるじゃないですかぁ」
「別にいいにゃ。スフィアが浮気しても」
「ひどい……どうしてそんなこと……怒ってるんですか?」
「怒りたくもなるにゃ。私の可愛い妹が気に入らないってんにゃらな」
「そんなこと……言ってませんよぉ……」
「この世界は重婚くらい出来るんにゃろ?」
「なんで乗り気になってるんですかぁ?」
「何度も言ってるにゃ。私の幸せはスフィアの幸せにゃ」
「……アズキ」
「それに私一人じゃ手に負えないにゃ。どんだけ泣き叫んでもやめてくれないにゃ。とんだ性豪にゃ」
「ちょっ!? こんなところで何言ってるんですかぁ!?」
「もう一年もすればポルカも成人にゃ。少しの辛抱にゃ」
「話を進めないでください!!」
「これもいつも言ってることにゃ。おみゃあは気を遣いすぎにゃ。もっと好き勝手生きればいいにゃ。私が許すにゃ」
「アズキ……」
「私はスフィアを信じているにゃ。おみゃあならもう一人くらい抱え込めるにゃ。私の愛だけで足りないならもっと求めたっていいのにゃ」
「……やっぱり怒ってるんですか?」
「にゃんで私が怒るにゃ。そんにゃ必要無いにゃ」
「アズキ……私は……」
「そんにゃ顔するにゃ。そんにゃ声出すにゃ。笑顔にゃ。笑顔を忘れるにゃ」
「……はい。アズキ」
「ポルカのことはおみゃあの好きにするにゃ。おみゃあが大黒柱にゃ。おみゃあには我儘言う権利くらいあるにゃ。ちゃんと責任取ってくれるにゃら私の可愛い妹を託すにゃ」
「……ポルカは私の妹でもあるんです。私だってあの子の幸せを願っているんです」
「にゃらまだ私とは違うんだにゃ」
「え?」
「私のことは自分の手で幸せにすると思っているにゃ。にゃから私の幸せを誰かに願ったりなんてしないのにゃ」
「……そうですね」
「私は果報者にゃ♪ ポルカにも分けてやりたいにゃ♪」
「……むぅ」
「ふふ♪ 悩め悩め♪ そういう顔なら見ててやってもいいにゃ♪」
「……意地悪です」
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「最近スフィアお姉様が優しいんですの」
今度はポルカが憂い顔だ。何やら相談があるようにゃ。
「いいことにゃ。そんな顔する必要無いにゃ」
「はい……その通りなのですが……」
腑に落ちてないにゃ。
「わたくしは……お姉様方の邪魔をしたくないのですわ」
「邪魔だにゃんて思ってないにゃ。可愛がってるにゃ」
「ですが……」
「スフィアも悩んでるにゃ」
「……お姉様が?」
「それだけおみゃあが大切なのにゃ」
「……嬉しいですわ」
「ポルカはスフィアが好きかにゃ?」
「当然ですわ!」
「それは家族としてかにゃ?」
「と、当然ですわ」
「なら私は負けないにゃ♪」
「……」
「今のポルカじゃ勝負になんてならんにゃ♪」
「……勝負って……何を言ってるんですの? わたくしはあなたが……グラシアを愛しているのですわ」
「わりぃにゃ。グラシアはもういないにゃ」
「……」
「ここに居るのは妹を愛する一匹の猫にゃ。妹の幸せを誰より願っているにゃ」
おみゃあを幸せにするのは私じゃないにゃ。残念にゃが。
「……ぐす」
あらま。チミっ子には厳しすぎたにゃ。
と思ったらすぐに涙を乱暴に拭ってしまったにゃ。とっても強い子にゃ。
「……グラシアは……いえ。アズキお姉様は。スフィアお姉様に背負わせるおつもりなのですか?」
この子は賢いにゃ。どこで聞いたにゃ。
「また逃げ出しちゃうかもしれないにゃ。二人でしっかり捕まえておくにゃ♪」
「……はい。アズキお姉様。わたくしはわたくしの成すべきことを理解致しましたわ」
表情が変わったにゃ。結局自分で答えを出したようにゃ。
「わたくしは何一つ諦めませんわ。スフィアお姉様もアズキお姉様もグラシアも。……全員わたくしがこの手で幸せにしてみせますわ!」
「ふふ♪ 気合十分にゃ♪ その調子にゃ♪」
「はい! ですわ♪」
私を二倍幸せにしてくれるらしいにゃ♪ スフィアと合わせれば三倍にゃ♪ 幸せいっぱいにゃ♪ なんて素晴らしき猫生にゃ♪ にゃふふ♪




