03-02.魔術開発
「転移はともかく飛行魔術は簡単じゃにゃいか?」
「ダメですね。アズキ。全然わかっていません」
そのメガネどっから出したにゃ。似合ってるにゃ。
「いいですか。そもそも魔術とは」
「待つにゃ。どっから話す気にゃ」
「ですから基礎から」
「いらんにゃ。私まで完璧な理論を身に着けてしまっては、かえって新しい角度から見れないにゃ」
「そんな心配必要ありませんよ。アズキは自信家ですね」
おみゃあも大概にゃ。別に悪いことじゃにゃいけど。
「忘れてるのかにゃ? 私は異世界人にゃ。そういうのは詳しいにゃ」
「聞きましょう」
「風を操るにゃ。先ずは自分の身体の回りを風の繭で包んでみるにゃ」
「ふむ」
ベッドから出て立ち上がったスフィアは、言われた通りに風の球体を産み出した。
「ここからどうするのですか?」
「知らんにゃ」
「……」
そんな顔するにゃ。
「重要なのは揚力と推進力にゃ。先ずは身体を浮かせることに集中するにゃ」
「簡単に言ってくれますね」
「なんにゃ。スフィアにも出来ないことはあるんにゃね」
スフィアって名乗ってるんだから、球体の扱いなんてお手の物かと思ったにゃ。
「……」
この子は意外と単純にゃ。結構簡単にムスッとなるにゃ。
「最初はリンゴかにゃにかで試してみるにゃ」
よく考えたらこんなところで人間を浮かせられる風なんか出したら大惨事にゃ。流石私にゃ。賢いにゃ。よく気付いたにゃ。えっへん。
「……アズキの尻尾を貸してください」
「にゃにする気にゃ!?」
「浮かせてみます」
禿げちゃったらどうするにゃ!?
「そういうんじゃないにゃ! シーツで試すにゃ! きっと細かい制御の練習にもなるにゃ!」
「なるほど。アズキはたまに賢いですね」
「たまには余計にゃ! 意地悪にゃ!」
ぷんぷんにゃ!
「ふふ♪ すみません♪」
ぐぬにゅ……やり返したような顔しおってからに……。
「先ずは枕カバーくらいで」
カバーを剥ぎ取ったスフィアは、手の平に作り出した風の球体に被せて練習を始めた。
にゃんかちょっと違う。
にゃんで球体の上に乗っけるんにゃ? やっぱり球体はイメージしやすいんかにゃ? スフィアだし。
「上手にゃ」
スフィアはものの数分もかけずに、あっさり手の平の上で枕カバーを操り始めた。
「それが出来るにゃら魔法の絨毯もいけそうにゃ」
「なんですかそれは」
にゃに? 知らんのかにゃ?
「空飛ぶ絨毯にゃ」
「なるほど。布を利用して制御難易度を下げるのですね。ですがそれなら、板にしてしまった方が効率は良さそうです」
それもそうにゃ。布だと不規則に動いてしまうにゃ。板の剛性がその問題を解決してくれるにゃ。スフィアなら問題でもにゃさそうにゃが。
「けど重くて動かんにゃろ」
「絨毯の方が重いでしょうに」
そうだったにゃ。布だからって軽くはないのにゃ。
「骨組みを作るにゃ。そこに布を張って足場にするにゃ」
「相当な強度が必要ですね」
「なんかドラゴンの骨でも使えばいいにゃ。翼膜を布代わりにすれば完璧にゃ」
「いえ。ドラゴンの骨はすっごく重いんです」
なんでにゃ? あいつら空飛ぶんにゃろ?
「もっと適した素材に心当たりがあります」
なにやらごそごそやり始めた。
「え~……ああ。これですね」
なんにゃ? 木の枝?
「エルダートレントの枝です。これも丈夫ですよ。あとこれも」
普通に翼膜っぽいのも出てきたにゃ。話が早いにゃ。
「後は腕の良い職人がいれば完璧にゃ」
「無茶言わないでください♪」
誰もそっから出せとは言ってないにゃ。というかどっから出してるにゃ。いつもいつも。
「その収納魔術と転移って、親戚みたいなもんじゃにゃいのか?」
空間魔術系なあれにゃ。
「実はよくわからないのです。これは特別でして」
「禁書でも読んだのかにゃ?」
「ええ。これです」
そんなのまで持ち歩いているにゃ。どこでチョロマカシてきたにゃ。
「これは写本です。泥棒はしてません」
それも泥棒では? 感覚が違うにゃろうか。
「ちゃんと許可も貰って写したんです。失礼しちゃいます」
口に出してないにゃ。ふぁんたじー。
「読まないんですか?」
「読めないから読んでほしいにゃ」
ぽんぽん。ここに座るにゃ。
「ふふ♪ いいですよ♪ 全て読み終えるまで逃がしませんからね♪」
早まったにゃ!?
「こらこらどこ行くんですか」
「放すにゃ! 餓死しちゃうにゃ!」
「ちゃんと休憩も挟みますから。ほら座ってください」
「待てにゃ! 謝るにゃ! 私が悪かったにゃ!」
「何も悪いことなんてしてませんよ。観念してください」
「勘弁してくれにゃぁ~!」




