02-09.似た者同士
「本当にいたにゃ」
森に現れたのは見上げる程巨大な狼にゃ。
所謂フェンリルとかいうやつにゃろか。白銀の毛並みがかっくぅいいにゃ♪
「なんだ。あなたでしたか」
え? 知り合いにゃ?
『久しいな。主よ』
にゃっ!? にゃにぃっ!?
「主はやめてください。以前断った筈です」
『カッカッカ。相変わらずだのう』
「あなたこそ相変わらずですね。村人が怖がっているので他所に移ってください」
『これは如何なことを』
「何か問題が?」
『そうではない。我は約定を果たしたまでのこと』
「またですか?」
『人間とは斯くも忘れる生き物か』
「とっくにわかっている筈でしょう?」
『カッカッカ』
「もはやこの国にあなたの居場所はありません。悪いことは言いませんから、あなたも南下されては如何ですか?」
『難しいものだ』
「誰も感謝なんてしませんよ」
『ふむ。お主少し変わったか』
「ええ。色々ありましたから」
『カッカッカ』
……なんにゃこれ?
「スフィア……」
「……何故そのような顔をされているのですか?」
どんな顔にゃ。
「腐れ縁のようなものです。決してアズキの立場を脅かすような存在ではありませんよ」
全部察してくれたにゃ。流石スフィアにゃ。
「行きましょう。用は済みました」
「待つにゃ!!」
「……何ですか?」
「おい! モフモフ!」
『それは我のことか? 子猫よ』
「スフィアは私んにゃ! 絶対譲らんにゃ!!」
『カッカッカ♪ 威勢のよい子猫だ♪』
「その上でにゃ!! おみゃあも付いて来い! 私が主になってやるにゃ!!」
「アズキ!? 何言ってるんですかぁ!?」
「だって可哀想にゃ!」
よくわかんないけど! けど! なんとなくにゃ! こいつは主を求めて彷徨っているにゃ! かつての主の痕跡を巡って国中を回っているにゃ! けど主はもうどこにも居ないにゃ! 約束通り人々を守ったって誰も理解なんてしてくれないにゃ! スフィアと一緒にゃ! こいつも愛を求めているんだにゃ! こいつも孤独なのにゃ!
「付いて来るにゃ!!」
『カッカッカ。断る』
「にゃにっ!?」
『我を欲するならば力尽くで従えてみせよ』
「やってやるにゃ!!」
「待って!!」
「「げぶっ!?」」
銀狼に斬りかかろうとしたところで強烈な圧力が頭上から降り注いできた。くっ! 強すぎるにゃ! 一方的にゃ!
……うん? にゃんでおみゃあも突っ伏してるにゃ?
……これスフィアかにゃ?
「アズキ! 無事ですか!?」
無理にゃ。きっと全身の骨が砕けてるにゃ。めっちゃ痛いにゃ。乱暴すぎにゃ。早く術を解くにゃ。
『やはり我が主はお前をおいて他にいない』
伏せの体勢で偉そうな口ぶりにゃ。
「すみません。私にそのつもりはありません」
なんでにゃ? というかマジ術解いてくれませんにゃ? このままじゃ喋れないにゃ。
「行きましょう」
スフィアが私に触れると術が解けた。圧力どころか痛みも綺麗さっぱり消え去った。どうやら怪我一つ無いようだ。
そのまま私を抱き上げるスフィア。
「待つにゃ!」
「待ちません」
「っ! モフモフ! 私に従うにゃ! それなら側においてやるにゃ! にゃから!」
「アズキ」
なんでにゃぁ……。
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「すげぇ!? 本当に追い払ってくれたのかぁ!!」
こいつ……。はぁ。言っても無駄なんにゃろうな。
「ええ。もう心配は要りません」
「「「おぉぉおお!!」」」
こいつら見てなかったんかにゃ? 近くまで案内してくれたにゃろうが。あの後一目散に村まで逃げたにゃ? 半端な奴らにゃ。
「スフィア」
何も言わないのかにゃ?
「後で説明します。余計なことは言わないでください」
そうかぁ……。何か事情があるんだにゃぁ……。
「ねこねーちゃん!! だいじょうぶ!? なんでだっこされてるの!? どっかケガしたの!?」
セル坊まで来たにゃ。
「心配要らんにゃ。居心地良いから降りたくないだけにゃ」
「降ろしますよ」
「いやにゃ。抱っこ好きにゃ」
がしっ! ひしっ!
「ねこねーちゃん、あかちゃんみたい」
「困ったものですね」
「ひーねぇ、おかーさん?」
「違います。アズキの恋人です」
うん? いつの間に?
「まあいいにゃ。恋人なら抱っこくらいするもんにゃ」
「あっさり受け入れますね」
自分でも無茶言ってる自覚はあったんにゃ。
「放したら嫌にゃよ?」
「ぐふっ!?」
ふふ♪ チョロチョロにゃ♪ ちょっと上目遣いで頼めばこの通りにゃ♪
「へんなの~」
お子ちゃまにゃぁはわからんにゃ♪
「おい、あんたら。頼むからセル坊の前で妙なことはしないでくれよ」
しゃあないにゃ。そろそろ降りるにゃ。
「ダメです!」
あらま。




