02-08.怪しげな誘い
「話ってなんにゃ。一目惚れかにゃ?」
「……一人で来やがったのか?」
「悪ぃにゃ。私には既に心に決めた人がいるにゃ。おみゃぁの気持ちには応えられないにゃ」
「なんだお前。本当に獣人か?」
会話が噛み合ってないにゃ。少しくらい付き合えにゃ。
「見てのとおりにゃ。隠したりなんてしてないにゃ」
フードは外しちゃったにゃ。子供だって顔も見せないようなやつを信用したりしないのにゃ。
「脱げ」
「なにゃっ!?」
やべえ奴にゃ!! マジの一目惚れだったにゃ!?
「待て! 逃げるな!!」
後ろを振り返って一目散に逃げ出そうとしたものの、背後から現れた二人の男たちによって阻まれてしまう。
「見下げ果てたにゃ! デンにぃ!」
いくら私が美少女過ぎるからって! 絶対に手に入れたいからって! これは卑劣が過ぎるにゃ!
「話を聞け」
「近づくにゃ!!」
シャキーン! と仕込みナイフを出して威嚇する。
「武器まで……。用心しろよ。動きは素人だが獣人の身体能力は高いからな」
三人の男たちは私を囲ってにじり寄ってくる。
油断したにゃ。相手は油断してくれないにゃ。
これはマズいにゃ……。
「アズキ!!」
「「「ぎゃぁ!!」」」
スフィア!? 助かったにゃ!?
「スフィア♪ ありがとにゃ♪」
駆け寄ろうとしたところでスフィアの表情に気が付いた。
……泣いてる?
「約束した筈です。二度と手を放さな」
「ごめんにゃ!!」
スフィアに抱きついた。
「ごめんなさい! スフィアにそんな顔させたくなくて! 元気出してほしくて! さっきは笑ってたから! けど!」
さっきまでスフィアは、セル坊ママと楽しそうに料理をしていたのだ。少しは気分転換になったかと安心していた。だから私は声を掛けなかった。けれどそれは間違いだった。
私はスフィアを泣かせたくない。笑っていてほしい。心の底からそう思っている。だから一時的にであっても、この村の人々に歓迎してもらいたかった。孤独な彼女の心が少しでも豊かになってくれれば嬉しかった。
思い上がりだ。私にそんな力は無い。私に出来るのはこの子の隣に寄り添う事だけだ。スフィアもずっとそれを求めていた。他にも友達を作ってあげたいだなんて……ましてや、今私たちはこの国を捨てようとしているというのに。
「貴方がたの目的はなんでしょう」
スフィアは私の頭を撫でてから男たちに問いかけた。
「話を聞いてくれ! 誤解なんだ!」
「誤解とは?」
「俺たちの目的はあんただ! そこの獣人にはひぃっ!?」
スフィアの指先から光線が放たれた。光線は男の足下の地面を貫いた。
「待て待て待て!! 待ってくれ!!」
「次はありません」
「魔物だ!! 近くに魔物が現れたんだ!!」
「……討伐を依頼したいと?」
「依頼!? そんなのとっくに! いや違う! 伝言を頼もうとしただけなんだ!!」
男たちがコクコクと全力で首を縦に振っている。
「本当ですか?」
今度は私に問いかけてきた。
「……脱ぐよう言われたにゃ」
「違っ!? それは!!」
「「ひぃっ!?」」
んべぇ~~!!
----------------------
「ひがうんでふぅ……」
ボコボコにされた男たちが平身低頭しながら訴えかけてきた。
どうやらデンにぃは私にマントを脱げと言いたかったらしい。どこのメイドか確認したかったのだと言う。彼はこのメイド服に見覚えがあったらしいのだ。
それもその筈。これは元々、この地の領主一家に仕えるメイドたちの正装だ。多少手を加えられてはいるけれど、見る人が見ればわかってしまうのだろう。
以前から魔物の件では報告を上げていた。しかし今は軍を動かせないからと放置されていたそうだ。
そんな自分たちを助けるためにわざわざお貴族様が来てくれたのだと思い、案内役を買って出ようとしたそうな。
そしたらなんかよくわからない猫獣人が一人で来て、わけの分からないことを言い出したと。
「嘘にゃ。待ち伏せしてたにゃ」
他の二人の男たちは最初隠れていたのだ。
本当は魔物なんて嘘で、偶然訪れた私たちから金目のものでも巻き上げようとしたんじゃにゃいのか?
「ひがうんでふぅ……」
話しづらそうにゃ。
要約すると、もしもの時のための連絡要員だったらしい。私たちが領主と関係のないヤバい奴だった時の為の備えだ。
「案内してください」
スフィアは先に魔物退治を済ませることにしたようだ。
それで彼らの言い分が本当かどうかはわかるだろう。
セル坊やセル坊ママは知らない様子だった。でなきゃ子供一人で水汲みになんて行かせまい。いくら近場だからって。
彼らも妊婦さんと幼子に要らぬ恐怖を与えたくなかったのだろう。言い分が全て本当ならだけど。
何にせよ、さっさと済ませるにゃ。セル坊たちと美味しいご飯が待ってるにゃ。




