02-04.初めての喧嘩
「しつこいにゃ。もう浄化魔法は要らないにゃ」
スフィアはご機嫌斜めにゃ。私の言葉なんて何のその。ひたすら魔術を掛け続けている。流石にしつこすぎにゃ。これ嫌にゃ。匂いが消えるにゃ。
それよりお風呂に入りたいにゃ。猫なのに。
ああ。そうだ。
「奴隷紋とやらも見てみたいにゃ。自分じゃ魔力流せないにゃ。流してみてくれにゃ」
「脱いでください」
なんか怖いにゃぁ……。自分で頼んでおいてなんだけど。
テントに入って服を脱ぐと、スフィアは全身隈無く触診し始めた。
「傷は……無いようですね……」
一応は本気で心配してくれているだけらしい。大げさだけど。
「好きにするにゃ」
どこでも見ればいいにゃ。それで安心出来るにゃら。
「……やっぱ不公平にゃ」
「何がですか?」
「スフィアも脱げ」
「……」
むっ。今のはわざと無視したにゃ。
「スフィア。そういうのはよくないにゃ」
「……必要ありません」
「私が見たいにゃ。それだけにゃ」
「……見せられません」
「私にはここまでさせたのににゃ?」
「必要なことです」
「なあ。謝るにゃ。仲直りしようにゃ。二度と一人で出歩いたりなんてしないにゃ。だからこっちを見てくれにゃ」
「……どうして離れたんですか」
「朝食をご馳走してやりたかったにゃ。それだけにゃ」
「私がどれだけ心配したと思ってるんですか」
「もう十分わかったにゃ。すまなかったにゃ」
「……意味がわかりません。何故あなたは無事なのですか」
さあにゃ。奴らが異様に涙脆かったにゃ。
「運が良かっただけにゃ」
「あなたには話術の才能があるのかもしれません」
かもしれんにゃ。
「ですが慢心なさらないでください。そもそも猫耳族の言葉に耳を傾ける者の方が稀なのです。本当にただ運が良かっただけなんです。それを忘れないでください」
「肝に銘じるにゃ」
「もう二度と手を離さないでください」
「それはベッタリしすぎにゃ」
「アズキ」
「承知したにゃ」
仕方ないにゃ。今回は私が悪かったにゃ。
「……あれ」
「どうしたにゃ?」
「……ありません」
「……生えてないって前から言ってるにゃ」
「違います! 奴隷紋です!!」
ああ。
「下着も脱いでください」
「にゃ♪ エッチ♪」
「真面目にやってください」
本気モードにゃ。ガクブル。
今度こそマッパにされてしまった。
何気に自分で見るのも始めてにゃ。いつもは浄化魔法で体を清潔にしているし、トイレの時くらいしか脱がんし。
足先まで全部普通の美少女にゃ。ナイススタイルにゃ。少々胸部装甲が心許にゃいが、完璧なスレンダーぼでーにゃ。人間と違うのは耳と尻尾だけみたいにゃ。
もしかしたら筋肉の付き方とかも違うのかもにゃけど。
「……綺麗」
にゃろにゃろ♪ 存分に見惚れるがいいにゃ♪
「!!」
スフィアはフルフルと首を振って再び指を這わせ始めた。
「……」
真剣な目つきだ。私の体に魔力を流しながら一片の変化も見逃すまいと目を凝らしている。
フリフリ。
「ひゃっ!?」
いかん。無意識に。
「くすぐったいです。尻尾を離してください」
「無茶言うにゃ。自分の意思じゃ動かんのにゃ」
「……何故腕に巻き付けるのですか」
「こいつもスフィアが気に入ったにゃ。ベタ惚れにゃ」
「……」
ふふふ。悪くないと思ってるようにゃ。
「流石は私の体の一部にゃ♪ 見る目があるにゃ♪」
「……」
あ、スんってしちゃった。流石にわざとらしすぎたにゃ。
「……本当に離れませんね」
「困ったにゃ。服が着れないにゃ」
「……ふふ」
良かったにゃ。やっぱり満更でもないにゃ。
「探し物はあったかにゃ?」
「……いえ。見つかりませんでした」
マジかにゃ。
やっぱりロースハンバーグ定食は良い奴だったにゃ。
「隠蔽を解くには専門の器具が必要なのかもしれません」
そういうのもあるんかにゃ。
「スフィアは知ってるんにゃろ?」
「何の話ですか?」
「以前の私にゃ」
「クラスメイトの付き人ですから」
「けど普通は獣人に興味は抱かない筈なんにゃろ? もちろんスフィアがそういう奴じゃないってわかってるにゃよ」
「……言いたいことはわかります。ですから私も名前までは知りませんでした」
それもしょうがないにゃ。そもそも調べても出てこないことだってあるにゃ。なんなら名前自体存在しなかったのかもしれないにゃ。
「所有者を把握している程度には見知っていたか、調べていたんにゃろ? 当時の性格はどんなだったにゃ? 前主人との関係性もわかる範囲で教えてくれにゃ」
「……すみません。私も大したことは知りません」
「そんな顔するにゃ。別に責めて無いにゃ」
ナイーブにゃ。この話題はまたにするべきだったにゃ。
「ただ……いえ……」
言いづらい感じにゃ。大体察したにゃ。
「気にすんにゃ。思いつきにゃ。大して興味は無いにゃ」
「……すみません」
「謝ったら承知しないと言った筈にゃ」
一回見逃しちゃったけど。今度は見逃さんにゃ。
「脱げ。罰にゃ」
「意味がわかりません。私の裸を見て何の意味があるんですか」
「お前は何言ってるにゃ。美少女の裸が見れるのに見ない理由がどこにあるのにゃ」
「見れませんし見せません!」
「罰だと言ってるにゃ。拒否権なんかあるわけないにゃ」
「ならば私も罰を与えましょう!」
「今受けてるにゃ」
「どこがですか!? 全く動じてないじゃないですかぁ!」
「そんなことないにゃ。恥ずかしくて噴火しそうにゃ」
「なら少しは隠すとかしたらどうですか!?」
「遠慮するにゃ。スフィアももっと見たいんにゃろ」
「いいから服を着てください!」
真っ赤になっちゃったにゃ。今更にゃ。
「うんにゃ? これどうやって着るにゃ?」
「もう! あなた赤ちゃんなんですかぁ!?」
遂に本音が出たにゃ。
「似たようなもんにゃ。大切にお世話してほしいにゃ」
「開き直りましたね!?」
「別に恩は忘れないにゃ」
錯綜してるにゃ。スフィアにとっては都合が良い筈にゃ。
「それとも心が離れてしまったのかにゃ? だから裸を見せたくにゃいと?」
「なんて意地の悪い!? そんな筈ないとわかっているでしょう!」
あかんにゃ。増々ヒートアップしてるにゃ。
ぐぅ~~~~。
「アズキ!!!」
「にゃっ!? 不可抗力にゃ! 違うんにゃ! 今朝から何も食べて無かったにゃ! 悪気は無かったんにゃ!!」
決して真面目に聞いてなかったとかじゃないんにゃ!
「ご飯にしますよ!!」
結局テキパキと服を着せ直してくれた。ご飯も美味しかった。優しい御主人様にゃ。




