第11話 根拠なきプロテイン 11-3
5
2ヶ月後、作弥はプロテインが切れたことに気づいた。
その夜、作弥は今宵薬局を訪れた。
「いらっしゃいませ」
店主は穏やかに迎えた。
「あの、プロテイン、もう一つください」
作弥は当然のように言った。
店主は少し間を置いて言った。
「お客さま。そのプロテインは、もう使わないほうが良いと思いますよ」
「え?」
「あなたは十分に変わりました。これ以上は……」
「いや、まだまだです!もっと強くなりたいんです!」
作弥は店主の言葉を遮った。
店主は静かに作弥を見つめた。
「……そうですか」
「はい!だからもう一つください!」
店主は少し悲しそうな目をして、棚からプロテインを取り出した。
「分かりました。でも、覚えておいてください」
「何をですか?」
「成功はあなたに自信も齎しますが、盲目にもします」
作弥は適当に頷いた。
(何言ってんだ、この人)
「ありがとうございます!」
作弥はプロテインを貰って嬉しそうに店を出ていった。
店主は作弥の後ろ姿を見送り、静かに呟いた。
「……警告はしました。後はお客さま次第」
店主は水晶球を覗く。
「この先起こることは、彼自身の選択です」
新しいプロテインを飲み始めた作弥は、さらに変化した。
筋肉はさらに増え、自信はさらに膨れ上がった。
「部長、この新規案件、俺に任せてください!絶対に成功させます!」
山口部長は少し心配そうに言う。
「作弥、お前の積極性は買うが、この案件は大きいぞ。チームでやったほうが……」
「大丈夫です!俺一人で十分です!」
作弥は聞かない。
木村が心配して声をかけた。
「作弥、最近ちょっと突っ走りすぎじゃないか?」
「何言ってるんですか。俺は結果を出してるじゃないですか」
「いや、でもな……」
「心配しなくていいですよ」
作弥は冷たく返した。
6
ある日、作弥は大きな商談に臨んだ。
相手は業界大手の会社。取引先の社長も同席する重要な場だった。
作弥は準備もそこそこに、自信満々で臨んだ。
「我が社のこの製品なら、御社の問題を全て解決できます!」
取引先の担当者が質問する。
「具体的なデータはありますか?」
「もちろんです!」
作弥は即答したが、実際にはデータが不十分だった。
「納期はどれくらいで?」
「1ヶ月で可能です!」
実際には3ヶ月かかる案件。でも作弥は根拠なく答えた。
「コストは?」
「この価格で問題ありません!」
実際には赤字になる価格。でも作弥は気にしない。
取引先の社長が少し間を置いて言った。
「……分かりました。その条件で契約しましょう」
作弥は大喜びで会社に戻った。
会社に戻った作弥を、木村が心配そうに呼び止めた。
「作弥、さっきの契約内容を見たんだが……大丈夫か?」
「何がですか?」
「納期が1ヶ月って、無理だろ。しかもこの価格……」
「大丈夫です!俺がやります!」
木村は頭を抱えた。
山口部長も確認した。
「作弥、本当にこの条件で大丈夫なのか?」
「はい!問題ありません!」
部長は不安そうだったが、作弥の自信に押された。
「……分かった。でも、何かあったらすぐに報告しろよ」
「はい!」
作弥は全く心配していなかった。
(俺なら大丈夫。俺は強いんだから)
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