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今宵薬局  作者: 蟷螂
58/63

第11話 根拠なきプロテイン 11-3

5


2ヶ月後、作弥はプロテインが切れたことに気づいた。


その夜、作弥は今宵薬局を訪れた。


「いらっしゃいませ」


店主は穏やかに迎えた。


「あの、プロテイン、もう一つください」


作弥は当然のように言った。


店主は少し間を置いて言った。


「お客さま。そのプロテインは、もう使わないほうが良いと思いますよ」


「え?」


「あなたは十分に変わりました。これ以上は……」


「いや、まだまだです!もっと強くなりたいんです!」


作弥は店主の言葉を遮った。


店主は静かに作弥を見つめた。


「……そうですか」


「はい!だからもう一つください!」


店主は少し悲しそうな目をして、棚からプロテインを取り出した。


「分かりました。でも、覚えておいてください」


「何をですか?」


「成功はあなたに自信も齎しますが、盲目にもします」


作弥は適当に頷いた。


(何言ってんだ、この人)


「ありがとうございます!」


作弥はプロテインを貰って嬉しそうに店を出ていった。


店主は作弥の後ろ姿を見送り、静かに呟いた。


「……警告はしました。後はお客さま次第」


店主は水晶球を覗く。


「この先起こることは、彼自身の選択です」


新しいプロテインを飲み始めた作弥は、さらに変化した。


筋肉はさらに増え、自信はさらに膨れ上がった。


「部長、この新規案件、俺に任せてください!絶対に成功させます!」


山口部長は少し心配そうに言う。


「作弥、お前の積極性は買うが、この案件は大きいぞ。チームでやったほうが……」


「大丈夫です!俺一人で十分です!」


作弥は聞かない。


木村が心配して声をかけた。


「作弥、最近ちょっと突っ走りすぎじゃないか?」


「何言ってるんですか。俺は結果を出してるじゃないですか」


「いや、でもな……」


「心配しなくていいですよ」


作弥は冷たく返した。


6


ある日、作弥は大きな商談に臨んだ。


相手は業界大手の会社。取引先の社長も同席する重要な場だった。


作弥は準備もそこそこに、自信満々で臨んだ。


「我が社のこの製品なら、御社の問題を全て解決できます!」


取引先の担当者が質問する。


「具体的なデータはありますか?」


「もちろんです!」


作弥は即答したが、実際にはデータが不十分だった。


「納期はどれくらいで?」


「1ヶ月で可能です!」


実際には3ヶ月かかる案件。でも作弥は根拠なく答えた。


「コストは?」


「この価格で問題ありません!」


実際には赤字になる価格。でも作弥は気にしない。


取引先の社長が少し間を置いて言った。


「……分かりました。その条件で契約しましょう」


作弥は大喜びで会社に戻った。


会社に戻った作弥を、木村が心配そうに呼び止めた。


「作弥、さっきの契約内容を見たんだが……大丈夫か?」


「何がですか?」


「納期が1ヶ月って、無理だろ。しかもこの価格……」


「大丈夫です!俺がやります!」


木村は頭を抱えた。


山口部長も確認した。


「作弥、本当にこの条件で大丈夫なのか?」


「はい!問題ありません!」


部長は不安そうだったが、作弥の自信に押された。


「……分かった。でも、何かあったらすぐに報告しろよ」


「はい!」


作弥は全く心配していなかった。


(俺なら大丈夫。俺は強いんだから)


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