第10話 休息の湿布薬 10-3
8
翌朝。
美樹は目を覚ました。
泣き疲れて眠ってしまっていた。
美樹は窓の外を見た。
朝日が昇っている。
美樹は深く息を吐いた。
(……もう、いいか)
美樹は起き上がった。
(魔法の湿布に頼って推薦をもらうなんて、そんなの私がやりたかった陸上じゃない)
美樹は鏡の前に立った。
(元の遅い自分に戻ってもいい)
(最後は、ズルなしの自分の脚だけで走ろう)
美樹は自分に言い聞かせた。
「私は、私の脚で走る」
9
大会当日。
スタジアムには、たくさんの選手と観客が集まっていた。
美樹は緊張していた。
でも、覚悟は決まっていた。
(脚が重くても、最後まで走り抜く)
美樹はスタートラインに並んだ。
周囲の選手たちは、みんな強そうに見える。
美樹は深く息を吐いた。
(大丈夫。私は、私の脚で走る)
スターターが笛を吹いた。
「位置について」
美樹は構えた。
「用意」
美樹は息を止めた。
――パン!
スタート。
走り出した瞬間、美樹は驚いた。
脚が、軽い。
いや、軽いどころではない。
これまでにないほど力強く、前へ前へと自然に進んでいく。
(え……?)
美樹は混乱した。
(湿布がないのに……)
(なんで、こんなに軽いの?)
でも、考えている暇はない。
美樹は前だけを見て、走り続けた。
風が、心地よい。
呼吸が、楽。
脚が、羽ばたくように前へ進む。
ゴールが、見える。
美樹は全力で駆け抜けた。
ゴール!
タイムボードに、美樹の記録が表示された。
自己ベストを、さらに更新している。
顧問の先生が駆け寄ってきた。
「田中! すごいぞ! 自己ベスト更新だ!」
美樹は息を切らしながら、タイムボードを見つめた。
(なんで……)
(湿布がないのに……)
(なんで、こんなに速く走れたんだろう)
作品・続きにご興味をお持ちいただけたのでしたら下の★をクリックしていただけると嬉しいです。




