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今宵薬局  作者: 蟷螂
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第9話 ココロの絆創膏 9−6

12


数週間後、拓也は新しい取引先との交渉を任された。


会議室で、相手の担当者が厳しい条件を出してくる。


「この納期は厳しいですね」


以前なら、絆創膏で痛みを消して、強く出ていた。


でも今は違う。


拓也は、胸の痛みを感じながら答えた。


「確かに厳しいですね」


拓也は深く息を吐いた。


「でも、御社の事情も分かります。一緒に、双方にとって良い方法を探しませんか?」


相手は少し驚いた顔をして、それから笑った。


「分かりました。それなら、こちらも譲歩します」


交渉は、以前よりも時間がかかった。


でも、最終的には双方が納得できる形で終わった。


オフィスに戻ると、山田が笑顔で言った。


「お疲れ様です、佐々木さん!」


拓也は笑顔で答えた。


「ありがとう。山田さんのアドバイスのおかげです」


一人じゃない。


チームがいる。



ある日、田村が職場に顔を出した。


「お久しぶりです」


まだ完全復帰ではないが、様子を見に来たという。


拓也は駆け寄った。


「田村君!」


「佐々木さん」


田村は少し照れくさそうに笑った。


「僕も、もうすぐ戻れそうです」


「本当に? 良かった…」


「佐々木さん、変わりましたね」


拓也は微笑んだ。


「うん…痛みを、ちゃんと感じられるようになった」


田村も微笑んだ。


「その方が、佐々木さんらしいです」


二人は笑い合った。


13


仕事帰り、拓也は商店街を通った。


あの薬局を探したが、見つからなかった。


シャッター街の中に、明かりはない。


拓也は少し寂しく、でも少しホッとした。


(…もう、見えなくなったのかな)


拓也は立ち止まった。


(もう、必要ないってことかな)


拓也は空を見上げた。


星が綺麗だった。


拓也は静かに呟いた。


「ありがとうございました」


風が、優しく吹いた。


14


今宵薬局の奥で、「 」は水晶球を見つめていた。


球の中には、星空を見上げる拓也の姿が映っている。


「 」は静かに微笑んだ。


「客は戻ってきた。痛みを抱えて、でも彼は前を向いています」


水晶球の中で、拓也は歩き出す。


「傷つくことは弱さではありません。傷ついても立ち上がることが、強さなのです」


水晶球の中で、拓也は笑顔で同僚と話している。


店主は深く息を吐いた。


「ほんとうに人というのは面白いですね」


店主は水晶球から目を離し、静かに呟いた。


第9話 ココロの絆創膏 -了-

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