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今宵薬局  作者: 蟷螂
45/63

第8話 リピート錠 8−4

8


春子は六回目のループを迎えた。


だが、今回は違った。


春子は誠一と映画を観て、喫茶店でコーヒーを飲み、夕暮れの公園を散歩した。


そして、誠一が春子の手を握ったとき、春子は言った。


「誠一さん……ありがとう」


「ん? 何が?」


「私……あなたに会えて、本当に幸せでした」


誠一は優しく微笑んだ。


「俺もだよ」


春子は涙を拭った。


「でも、私……もう行かなきゃ」


誠一は頷いた。


「ああ。お前、明日からも頑張れよ」


春子は深く頷いた。


「……はい」


そして、夜が訪れた。


春子は目を閉じた。


9


春子は目を覚ました。


自宅のベッドの上。


手の中には、空になった小瓶があった。


春子は静かに起き上がり、病院へ向かった。



病室に入ると、誠一はベッドに横たわっていた。


春子は誠一の手を握った。


「誠一さん……ただいま」


誠一は春子を見たが、やはり何も言わなかった。


だが、春子は微笑んだ。


「私……ちゃんとここにいるから」


春子は誠一の手を握りしめた。



10


今宵薬局の奥で、「 」は水晶球を見つめていた。


球の中には、誠一の手を握る春子の姿が映っている。


「 」は静かに微笑んだ。


「春子さん。あなたは、正しい選択をされましたね」


水晶球の中で、春子は誠一の手を握りながら、穏やかな表情を浮かべている。


「 」は静かに呟いた。


「過去は、逃げ込む場所ではありません。思い出す場所です」


そして、「 」は水晶球から目を離し、静かに店の灯りを落とした。


「また、次のお客様が来られるまで……」


今宵薬局は、静かに時の狭間に佇み続ける。


困りごとを抱えた人が、再びこの店を見つける日まで。


第8話 リピート錠 了

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