第7話 恋の解熱薬 7−2
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二週間後。
小和は、また新しい男性に惚れていた。
客として来た三十代の男性、山崎。イケメンで、口が上手い。
「小和ちゃん、可愛いね。俺、本気で好きかも」
山崎の言葉に、小和の心は踊った。
また、恋だ。
小和は、山崎とプライベートで会う約束をした。
待ち合わせの日。小和は鏡の前で化粧をしながら、鞄の中の瓶に気づいた。
「これ……あの薬局でもらった奴だ」
恋の解熱薬。
店主の言葉を思い出した。「惚れた時に飲むと、冷静になれる」
小和は少し迷ったが、飲んでみることにした。
一錠、飲む。
少し苦い。
「こんな薬効果あるのかな」
しばらくすると、今日山崎と会うのにあれだけ浮かれていたのが、嘘のように静まった。
小和は首を傾げた。
でも、約束だから、行くことにした。
カフェで山崎と会った。
「小和ちゃん、店で会う君も良いけど、プライベートのすがたもいいね!誘ってよかったと思っているよ」
山崎は笑顔で言った。
昨日までの小和なら山崎の笑顔にキュンキュンしていただろう。
でも、今の小和の目には、その笑顔が薄っぺらく見えた。
会話をしていると、山崎の胡散臭さがはっきりしてくる。
自慢話ばかり。でも、よく聞くと、全部嘘っぽい。
仕事の話も曖昧。お金の話になると、急に黙る。
小和は、ハッとした。
コイツ、ヒモ野郎だ。
アイツらと同じだ。
小和は、この時点で完全に覚めてしまう。
そして、この男を適当にあしらって距離を置くことにした。
彼女は持ち前のキャバ嬢としてのスキルを活かす。
適当に煽て良い気分にさせるが、相手に隙は見せない。
そうやってしばらく相手にして、そろそろ頃合いだと判断して、
「あ、いけない、そろそろ出勤の準備しないと」
「えっ、出勤って早くない?」
「お店に行く前に服も変える必要あるし、今日は髪のセットあるし、ね?」
「そっか、それじゃ仕方ないね。次はオフの日にゆっくり過ごそうよ」
「そうね、またね」
小和は適当なことを言って、山崎を置いて去った。
家に帰った小和は、鏡の前で今宵薬局からもらった錠剤が入った瓶を見つめた。
この薬を飲んでなかったら、またヒモ男を拾うところだった。
「この薬……本当に冷静になれた」
小和は、薬とあの店主に感謝した。




