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今宵薬局  作者: 蟷螂
35/63

第7話 恋の解熱薬 7−2

2


二週間後。


小和は、また新しい男性に惚れていた。


客として来た三十代の男性、山崎。イケメンで、口が上手い。


「小和ちゃん、可愛いね。俺、本気で好きかも」


山崎の言葉に、小和の心は踊った。


また、恋だ。


小和は、山崎とプライベートで会う約束をした。


待ち合わせの日。小和は鏡の前で化粧をしながら、鞄の中の瓶に気づいた。


「これ……あの薬局でもらった奴だ」


恋の解熱薬。


店主の言葉を思い出した。「惚れた時に飲むと、冷静になれる」


小和は少し迷ったが、飲んでみることにした。


一錠、飲む。


少し苦い。


「こんな薬効果あるのかな」


しばらくすると、今日山崎と会うのにあれだけ浮かれていたのが、嘘のように静まった。


小和は首を傾げた。


でも、約束だから、行くことにした。


カフェで山崎と会った。


「小和ちゃん、店で会う君も良いけど、プライベートのすがたもいいね!誘ってよかったと思っているよ」


山崎は笑顔で言った。


昨日までの小和なら山崎の笑顔にキュンキュンしていただろう。


でも、今の小和の目には、その笑顔が薄っぺらく見えた。


会話をしていると、山崎の胡散臭さがはっきりしてくる。


自慢話ばかり。でも、よく聞くと、全部嘘っぽい。


仕事の話も曖昧。お金の話になると、急に黙る。


小和は、ハッとした。


コイツ、ヒモ野郎だ。


アイツらと同じだ。


小和は、この時点で完全に覚めてしまう。


そして、この男を適当にあしらって距離を置くことにした。

彼女は持ち前のキャバ嬢としてのスキルを活かす。


適当に煽て良い気分にさせるが、相手に隙は見せない。


そうやってしばらく相手にして、そろそろ頃合いだと判断して、


「あ、いけない、そろそろ出勤の準備しないと」


「えっ、出勤って早くない?」


「お店に行く前に服も変える必要あるし、今日は髪のセットあるし、ね?」


「そっか、それじゃ仕方ないね。次はオフの日にゆっくり過ごそうよ」


「そうね、またね」


小和は適当なことを言って、山崎を置いて去った。


家に帰った小和は、鏡の前で今宵薬局からもらった錠剤が入った瓶を見つめた。


この薬を飲んでなかったら、またヒモ男を拾うところだった。


「この薬……本当に冷静になれた」


小和は、薬とあの店主に感謝した。


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